2025年06月19日

ビール職人、美味いビールを語る

ビール職人、美味いビールを語る【電子書籍】[ 山田一巳 ] - 楽天Kobo電子書籍ストア
ビール職人、美味いビールを語る【電子書籍】[ 山田一巳 ] - 楽天Kobo電子書籍ストア

何で知ったのかは忘れましたが、ビール好きの私としてはぜひ読んでみたいと思って買った本です。
著者は、キリンビールで長年醸造に携わり、「一番搾り」の開発にも貢献された山田一巳(やまだ・かずみ)さんと、ノンフィクションライターの古瀬和谷(ふるせ・かずや)さんです。山田さんはキリンを退職後、「萌木の村・八ヶ岳ブルーワリー」の醸造長としてビール造りをされてるようです。


ではさっそく、一部を引用しながら本の紹介をしましょう。

ものづくりは、お客さん本位とか時代の流行とか、そういうことも大事ですけれど、つくり手がしっかりと理想を持っていないといけない。どういうビールをうまいと思うか。自分なりに理想をつきつめていく。その意志がなかったら、お客さんを本当に喜ばすようなビールはできないと思います。まずは理想があって、そこに近づけていくための技術や知識がある。経験から来るカンが頼りになることもあります。でも、それ以前に理想に近づけていこうとする気持ちが大事です。それがなくなったらビール職人はおしまいでしょうね。
 完璧なビールがどんなビールかって、結局そんなものはないんです。でも、それがいつかできるだろうな、と。そんな風に思いながらやっていくのがいいんでしょう。
 かといって、あんまり根を詰めすぎてもいけない。職人が鬱々とつくってるビールなんて、何だかうまそうじゃないじゃないですか。先は長いんだから、のんびりと、遊びながらつくっていくのがいいんです。楽しみながらね。
」(p.20)

山田さんのビール造りに対する考え方です。どこかに絶対的に素晴らしいビールというものがあるのかもしれない。最初から「ない」と決めつけず、理想のビールが「ある」と思いながら、自分なりの「素晴らしいビール」を追い求める。上手く行かなくても、上手く行かないことを楽しみながら、一歩一歩進めていけばいい。そんな考え方なのかなぁと思いました。


ビールというのは本当に微妙な酒でして。毎回まったく同じようにつくっていればいいというわけにはいかないんです。
 モルトも同じものを使っていると言っても、年によって微妙に状態が違いますし、ホップも同じ種類でもまったく同じではない。
」(p.32)

考えてみれば当然なのですが、生き物(大麦やホップという植物と酵母)を扱う限り、まったく同じものはありません。それ以外でも気候や水も違いあるでしょう。そういう中で、毎年同じようなビールを造るということは、並大抵のことではないんですよね。


一度、休憩室に戻ったら、吉川さんが一人で掃除をしていて、私にこう言ったのを覚えています。
『こういうことはみんなが嫌がるだろ。でもな、こういう掃除みたいなことでも誰かがやらなきゃいけないんだからな。気がついた人がやれば、みんなが気持ちよく仕事ができるだろ』
」(p.57)

山田さんの大先輩の吉川さんのエピソードです。山田さんもまた、吉川さんのように生きられたようです。
私も自宅では、妻との間に家事の分担がありません。家族(夫婦)の中の誰かがやらなければならないのだから、気がついた人がやればいいと考えています。汚れていて気になるなら、気になる人が掃除をすればいい。そして掃除をすれば、他の人が助かる。それだけのことだと思うのです。


でも、キリンはドライ戦争に負けてよかったんじゃないかと思うこともあるんです。当時、キリンは本当に追い詰められていた。そこで初めて、もう後追いではダメだ、キリン独自のことをやろうという機運が高まってきたんです。消費者のイメージが悪くなって、もうキリンビールという看板には頼れない、本当にいいものをつくって巻き返すしかない。そういう発想に誰もがなった。
 もし、キリンがドライ戦争で負けていなかったら、『一番搾り』という画期的な商品は生まれなかったかも知れません
」(p.129)

ラガーでシェア60%以上を誇っていたキリンですが、いつしか殿様商売と評されるようになりました。まぁこれは、独禁法違反にされないための方策でもあったようですがね。その時、アサヒのスーパードライが出てきたことで、トップの座を奪われることになりました。けれども、窮地に追い込まれたからこそ、重要なことに向き合うことができたと山田さんは言うのです。
アサヒも窮地に追い込まれてスーパードライを生み出したわけで、私は、窮地に追い込まれることは悪いことじゃないと思っています。窮鼠猫を噛むと言いますか、陰極まれば陽に転ずということがあるのです。
逆にぬるま湯で窮地に追い込まれない環境の方が悪い。ゆでガエルになるだけ。だから民間こそが社会(経済)を活性化させる力があるのであって、公務員(政府、税金)が何かやっても絶対にうまく行かないと思っています。


今、遠く離れたところからキリンを見ていて思うことは、もっと元気にやりなさいよということですね。辛気くさい顔してつくっていたら、人を喜ばすようなビールは出来ません。もっと楽しんでやらなくちゃ。こんなご時世だから、よその会社のビールは飲むな、なんて言われているのかも知れないけれど、本当はいろんなところに遊びに行ってね。遊びの中でいろんなビールを飲むべきなんです。」(p.169-170)

「かくあるべし」とか「かくあるべからず」のように規制して自由を奪っていたら、楽しむこともできません。もっと自由に、結果を恐れずに楽しんだらいい。楽しんでやっている中でこそ、いいものを生み出せる。そういう山田さんの考え方に共感します。

ビールのことを本当に生き物だと思ってつき合ったら、こうしてほしいだろうな、こうしてやったらいいだろうな、というのが自然と分かってくるでしょう。あとは遊び心。ああしなきゃいけない、こうしちゃいけないって、あんまり自分をがんじがらめにしてつくったら面白くなくなります。理想を追求しながら何かをつくっていくというのは面白いんだから。楽しんでやりなさい、遊びながらやりなさい。醸造スタッフたちにはそんな風に言ってますけどね。」(p.188)

ビール造りは子育てと同じだなぁと感じました。観察して、直観に従う。そして「かくあるべし」ではなく、面白いかどうかを追求する。

いいものをつくろうとする「ものづくり」の精神と、いい人間関係をつくろうとする「人づきあい」の精神は、山田さんの場合、おそらく同じ人間性に基づいている。そして、それを育て、熟成させてきたのは、やはり職人としての人生経験そのものなのだろう。
 山田さんがいつかアンケートに答えてこんな言葉を書いていた。
「ビールは生き物、つくり手の姿勢が正直に表れる酒です」
」(p.190)

ビールも人も同じ「生き物」だから、ビール造りは子育てでもあるし、人育て、人間関係そのものだとも言えるのですね。


ただビールが好きだから、ビール造りのうんちくが知りたくて読んだ本なのですが、やはり一芸を極める人はものごとの本質に通じるのですね。そんなことを感じさせてくれた本でした。

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posted by 幸せ実践塾・塾長の赤木 at 13:36 | Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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