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あなたが独りで倒れて困ること30 (一般書 439) [ 太田垣 章子 ] - 楽天ブックス
これもYoutube動画の本の紹介で知った本になります。たしかにお一人様の老後がふつうになってきた現代、どういう困ったことがあるのかわかってないことがあるかと思います。そういう興味から、この本を買って読んでみました。
著者は太田垣章子(おおたがき・あやこ)さん。司法書士さんですが、お一人様の高齢者が困難に直面する状況に出くわすことで、この問題を切実に考えておられるようです。
ではさっそく、一部を引用しながら本の紹介をしたいと思います。
「この問題の要因は、急速に高齢化が進む日本で、制度だけはまだ「呼べばすぐに駆けつけてくれる家族がいる」前提だからです。日本の制度では『サザエさん』のような「家族が支え合う」時代のままで、時が止まっています。ところが家族関係が希薄化してきたことに少子化も加わり、家族だけでは到底太刀打ちできなくなってしまったのが現実です。」(p.3-4)
「今の状況は本来の仕事ではない、彼らのシャドーワークで成り立っています。国は我慢強い、親切な善意ある人たちに頼りすぎています。でもそれでは、この先ダメなのです。」(p.4-5)
「だからこそ何が問題で、何を決断する必要があるのか、そこに気が付いて欲しくて、この本に対策のポイントを詰め込みました。」(p.5)
「はじめに」で太田垣さんは、このように現代のお一人様老後の問題点を指摘されています。ただ、本を読めばわかりますが、この「はじめに」では国の問題を指摘しているにもかかわらず、本文では本人がどう対処するかに終止しています。しかも、「考えておきましょうね」くらいで、具体的にどう対処すれば解決するのかについては、踏み込みが浅いと感じました。
「二人でいても、結局のところ「おひとりさま」なんだ……。そんな当たり前のことに、今さらながらに気が付きました。自分は結婚さえすれば奥さんに看取られると思っていましたが、そんな保証はどこにもないのです。」(p.27)
結婚して配偶者がいるから、お一人様を避けられるわけではありません。当たり前なのですがね。だって、どちらかが先に亡くなり、残された方がお一人様になるわけですから。また、一方が認知症になったら、それだけでも双方がお一人様なのです。
「分からないから不安なんです。
でも不安だからとお金を使わないことにばかり注力していると、「亡くなった時がいちばんお金持ち」になってしまう可能性もあります。」(p.52)
老後が心配だからと貯金に励む高齢者が多いようですが、それで幸せなのでしょうかね?
「ところが、その空室が目立つ狭い部屋ですら、70歳になるとなかなか借りられません。」(p.90)
高齢者と言うだけで、賃貸住宅を借りられないという現実があります。こういうところこそ、行政が保証人になって、大家さんが安心して貸せる仕組みを作ってほしいと思います。
「あとは生活保護を受給するしかなくなります。でも生活保護を受給するためには、その受給ラインの家賃帯、つまり5万3000円以下(金額はエリアによって変わります)の物件に住んでいないといけません。」(p.157)
「ミズエさんは、もっと早く今より家賃の安い物件に、引っ越しておかなければいけなかったのです。そうすれば家賃補助が受けられたはずです。」(p.157)
「たまたまミズエさんの住んでいるエリアは、低所得の方々への居住支援を手厚く行っている地域でした。そういうエリアは、明け渡しの判決書を持って行政の窓口へ相談に行くと、緊急性があるということで担当者も頑張ってくれることが多いのです。」(p.159)
ミズエさんのケースが、生活保護受給要件よりも高い賃貸住宅で暮らしていたために、生活保護が受けられないということのようです。でも、これはおかしいですよね? だって、生活保護を受けなくても大丈夫だったからこそ、そういう高い賃貸住宅で暮らしていたんです。でも、その状況で働けなくなって、生活保護を受けたくなることはあり得ますよ。けれども、その状況ですぐに引っ越そうと思っても、高齢を理由に借りられないという現実があるのです。八方塞がりじゃありませんか。
「たまたま今回は畠山さんが最初に亡くなったけど、この先、誰がどうなるかは分からない。だからこの付かず離れずの関係性が、ひとり住まいには心強いともみなさん話してくださいました。」(p.173)
偏屈者と言われて親族から見放されていた畠山さんが、一人住まいのアパートで亡くなられた時、すぐに発見されました。これは、公営住宅に住む仲間がいて、毎日の習慣をなんとなくわかりあっている関係があり、それによって異常をすぐに発見できたということでした。
都会の孤独と言われ、アパートの隣の人がどんな人か知らないなんてことはよくあります。でも、それでは部屋で亡くなっていても発見されず、事故物件にしてしまいます。ひとり暮らしであっても緩やかなコミュニティを作ることが重要なのだと思います。
「一昔前は民生委員が地域を巡回し、高齢者含め要支援の人たちをサポートしていましたが、今の時代、民生委員も高齢になり、新たになろうという人も少なく、結局のところ「私を助けてください」と声を上げた人しか気づいてもらえない世の中になっていることを実感しました。」(p.183)
昔のような地域のコミュニティがなくなっているのですね。そうであれば、そこに行政が関与する必要があるのかもしれません。
「50代から、自分が介護になった時のことをイメージして、その手続きを誰に依頼するか決めて託しておく。その方が保険に入るより大切なことです。そして、これこそがほんとうの意味での「終活」というものです。」(p.192)
死亡保険とか認知症保険というのは、それを受け取って後のことをしっかりやってくれる人がいてこそ役立つもの。だから、まずはそういう人を決めておかないといけない。家族関係が希薄になり、お一人様が増えてきた現代、後のことを誰に託すのかという問題があるのです。
「すると病院は頭を抱えるわけです。
そりゃそうですよね。ここで万が一のことがあれば、病院だって困ります。入院する際には、やはりすぐに対応してくれる「身元保証人」が必要なんです。」(p.198)
「昔はもう少し緩い扱いを病院側もしていたのでしょうが、万が一の時に家族が対応してくれないとか、入院費を払ってももらえないということが増え、結果どんどん厳しくなっているようです。」(p.199)
病院に入院するにも保証人が必要です。家族と縁がなくなったお一人様にとっては、まだ意識がはっきりしている状態であっても、入院させてもらえないという現実があるのです。
「それでも自分の人生は自分で決めたくないですか? 大切な家族に判断させて、その人の先の人生に十字架を背負わせたいですか?」(p.212)
「日本には、尊厳死協会というものがあり、この団体では、病気が治る見込みがなく死期が迫ってきた時、自分自身がどうしたいかを選ぶ権利を認めてもらう活動を行っています。協会では、「リビング・ウイル」といって、自身の意思を書面に残しておくことをすすめていますからぜひHPを見てください。」(p.212)
終末医療をどうするのかという問題は、自分で決めておくべきなのだと思います。公益財団法人「日本尊厳死協会」は、加入費は年会費2,000円(この記事を書いた時点)で、リビング・ウィルの管理などをやっているようです。
「そこで初めて、後見人や身元保証会社がある、ということも教えてもらいました。もし自分が身元保証人と契約しないまま、突然入所することになった場合には、戸籍上の親族に打診がいくということも知りました。」(p.219)
老人介護施設に入所するにも保証人が必要なのです。そういう親族がいなければ、法的な後見人か身元保証会社に依頼しておくしかありません。しかし、そこまで考えて、お金を出して依頼しておく人がどれほどいるでしょうか?
「身元保証人は、対象となる人物(ここでは入院する人や入所する人のこと)に何かあった際の緊急連絡先となったり、本人の意思が確認できなくなった時には、治療をどうするかの判断をすることもあります。
そのため気軽に引き受けられるものではもちろんありませんし、背負う精神的責任も決して軽いものではありません。」(p.234)
保証人は、安易に友人に依頼できるようなことではないってことですね。
「もはや自分で自分の「死」の前後を備えておかないと、どうしようもない時代ということです。それこそが「少子高齢化社会」なのです。」(p.257)
「日本の場合、亡くなるなど、その人に何かあった時に対応できるのは家族・親族か、正式に権限を与えられた者だけです。」(p.262)
「繰り返しになりますが、日本では(今後、法制度が変わらざるを得ないかもしれませんが)、家族・親族以外には、何の権限もありません。だから当然、事実婚のパートナーには、何の権限もないことになります。たかが戸籍、されど戸籍なのです。」(p.267)
法律上の家族や親族にしか、その人が意思決定できなくなった時に、その人をどうするかを決める権限がありません。あとは、きちんと法的な手続きをした第三者です。
このことが、家族関係が希薄なお一人様の老後が増えてきた現代の状況とアンマッチなのです。
本書では、問題点を指摘してはいるものの具体的な解決策が示されていません。お一人様はどうすればいいのか、簡単には言えないのでしょう。
たしかに、保証会社はあるので、そこと契約しておけばいいとは言えます。しかし、相手が会社である以上、自分に何かが起こって必要になるまで存続しているかどうかはわかりません。なので、絶対的に安心な解決策とは言えないのです。
本書を読んで思ったのは、これはもう社会のバグだなということです。法律を変えて、お一人様でも安心して暮らせるようにしていかなければならない。そう思いました。
