2025年01月12日

70歳からの手ぶら暮らし

70歳からの手ぶら暮らし [ 松原惇子 ] - 楽天ブックス
70歳からの手ぶら暮らし [ 松原惇子 ] - 楽天ブックス

Youtubeで本の紹介をしている動画を観て、面白そうだと感じて買った本になります。
著者は松原惇子(まつばら・じゅんこ)さん。私はよく存じ上げなかったのですが、おひとりさまの終活を応援する団体、NPO法人「SSS(スリーエス)ネットワーク」を立ち上げた方のようです。


ではさっそく、一部を引用しながら本の内容を紹介しましょう。

65歳で持ち家を手放し、75歳で愛猫を亡くし、母を亡くし、ひとり身で身寄りもなく、国民年金で年金額も少ない、ないない尽くしのわたし(わたしの「手ぶら暮らし」の詳細は1章で)。傍から見たら不幸の条件が重なって見えるかもしれないが、強がりでもなんでもなく、実際は違う。毎日を機嫌よく暮らしている。」(p.3)

一方、日本人は、総じて不安症と言ってもいいほど、不安な人が多いように思う。
 日本人はお金があっても不安、住む家があっても不安、体力が落ちても不安、血圧が上がればもっと不安、そして、家族のある人もない人も、ひとりで迎えるだろう老後の不安を抱えている。
 わたしも日本人なので気持ちはわからないではないが、果たして、それでいいのだろうか。不安を抱えたまま人生を終わっていいのだろうか。
」(p.4)

身寄りもなく賃貸住宅暮らしだったり、90歳過ぎても一人暮らしだったり、貯金が0円だったり、条件だけをあげると不幸の掛け合わせのように感じるだろうが、実際は……。あとは読むときのお楽しみとしておこう。」(p.5)

「はじめに」の中で、松原さんはこのように書かれています。たしかに条件だけ数え上げてみれば、不安に感じても仕方がないと思えるかもしれません。けれども、同じ条件でも不幸な人がいれば幸せな人もいる。たとえ老後であっても、幸せは条件じゃないってことですね。


これは幸運で片づけられる出来事ではないだろう。わたしが彼女に魅かれるように、社長も彼女の率直で正直な人柄に心を動かされたからこその親切だったのではないだろうか。
 そう、幸運を引き寄せる種は、天から降って来るのではなく、自分の中にあるのかもしれない。
」(p.46)

これは90歳で賃貸アパートで一人暮らしをしている千葉さんという女性の実例だ。貧しい家庭環境で育ち、18歳で仙台でひとり暮らしを始めた千葉さん。ところが、そこで出会ったお菓子会社の社長から、学費を出すから手に職をつけろと言われて経理を学んだ。そのことが、自立して独りで生きる力を与えてくれたようです。
千葉さんのように賃貸アパートだと、建て替え時に追い出されたりもします。更新で値上げされたりすることもあります。そして、老後の所得は年金以上に増えるあてもないし、高齢者一人暮らしで新たに部屋を借りるのは大変です。しかし千葉さんの大家さんは、千葉さんの人柄が気に入って、建て替え後も同じ賃料で最期まで暮らしていいと言われているのだとか。

千葉さんは貯金はないと言います。でも健康だから何の不安もないと。詳細には語られていませんが、年金は12〜13万円くらいはありそうですね。それで家賃が5万円で、死ぬまでこの固定費が変わらないと保証されているのであれば、まぁ、今が大丈夫だから将来も大丈夫と思えるかもしれないなぁと思いました。
ただ、何ごとにもネガティブに考えず、ありがたいことだと考える方のようなので、そういう幸運を引き寄せているのかもしれません。


お金がないのは、決して悪いことではない。選択肢がないので、迷わなくて済む。これは高級有料老人ホームに入所された方たちの取材をして痛感していることだからだ。なぜなら、高級有料老人ホームに自分の身を預けるというのは、相手の管理下に自分を置くということ。それを安心という人にとっては、良い所かもしれないが、自由な老後を過ごせるわけではないからだ。」(p.84-85)

これは、両親が亡くなった後の実家で暮らす70歳の女性の実例。独り立ちすることなく親と同居を続けて、結果として今の状況になった。家はあるがお金はない。だから老人ホームに入るという選択肢がない。実家で一人暮らしを続ける以外に方法がなかった。そしてそれを受け入れて覚悟を決めたからこそ、平安な気持ちで暮らしていられるのだと言うのです。
私は高級老人ホームとも言えるところで老人介護職をしていました。だからこそわかるのです。介護されるようになると、本当に自由がありません。


わたしなりに分析すると、彼女には「ひとりの覚悟」ができている。ひとりで高齢になることから逃げようとしない。どんと、ひとりを受け止めて生活している。そして、今の生活を楽しんでいる。それに尽きるような気がする。」(p.95)

これは、実家で親の介護と看取りをして、今はUR住宅で一人暮らしの71歳の女性の実例だ。母親の介護では、余命3ヶ月と宣告されたこともあり、同意のもとに施設に預けたそうだ。私も家族介護の現場を見ていますが、家族じゃないからやりやすいということはあるのです。
毎月20万円ほど料金がかかったそうですが、余命3ヶ月だから思い切って預けられたのだと言います。実際は半年かかってしまい、ちょっと焦ったと笑って言われます。

UR住宅に引っ越したのは、実家の面倒をみるのが大変だったから。私もマンションを買っていましたが、管理が面倒くさいと感じていました。
ただこの女性は、特に収入もないようなので、賃料の高いUR住宅でいつまで暮らせるのか気になります。その部分は明確に語られてはいませんが、おそらく残りの人生が何年かを計算し、そこまでは金銭的に大丈夫という算段をされておられるようです。そしてその後のことは……。まぁ何を決めておられるのかはわかりませんが、覚悟をされておられるようです。


いいんですよ。自分が幸せなら。人がなんと思おうといいんですよ。
 自分の幸せは自分で決める。人と比較する必要もないし、ましてや後ろめたく思う必要などまったくなしだ。だって、あなたのしもの世話をしてくれるわけじゃないでしょ。
」(p.105)

75歳で団地暮らしの女性の実例。使えるお金は少ないが、団地猫の世話をして、時には自腹で動物病院で治療を受けさせたりしているという。他人からすれば、そんなもったいないことに使わなくても……と思うかもしれませんが、この女性がこれで幸せだと感じているのですからね。


わたしは思った。母はすべてを受け入れたのだと。そして、過去と比較することをやめ、目の前の現実と向き合い、明るく楽しくお世話になろうと決めたのだ。
 わたしは仕事柄「いい所があったら教えてください」とよく聞かれるが、今度から、「いい所はないけど、いい所にすることはできる」と答えることにする。
」(p.111)

松原さんのお母さんは、ずっと自宅で暮らしたいと思っておられたそうです。しかし96歳の時に転倒して3ヶ月入院し、身体機能が衰えたことで、松原さんは施設に入るよう説得したのだとか。最初は抵抗していたお母さんですが、最後はそれを受け入れ、受け入れたからにはその状況で明るく暮らそうとされたのですね。
どうするのが正解かなどはわかりません。ただ、松原さんはそうするのが良いと考え、お母さんもそれで良いと受け入れた。受け入れたからには、その状況で幸せであろうとした。そういうことだろうと思います。


「74歳ということは……、あと、14年をどう生きるかってことですよ。薬を飲んで長生きしたいのか、体のことを忘れて、残りの人生を生きたいのか……。松原さん次第です」と言うではないか。
 お見事! そういうことですよ。わたしは嬉しくて、小学生のように元気な声で、お礼を言うと、診察料260円を支払い、外に出た。ああ、なんて空気がおいしいのだろう。
「余命14年か」。そのつもりで、毎日を一生懸命生きないといけないな。些細な人間関係のことで悩んでいる暇なんかないわ。コロナ禍のどんよりした空気の中に久しぶりに光を見た気がした。
」(p.131)

コロナ時代に、駆け込めるかかりつけ医が必要だと思った松原さんが診療を受けて検査をすると、コレステロール値が異常など、いくつか良くないデータがあったそうです。それで薬を飲むべきか医師に相談すると、その医師から平均寿命まで14年なのだから、その生き方は自分で考えるべきだと諭されたのですね。
本当に、こういう医師ばかりだったらいいなぁと思います。そうすれば無駄に医療費が増大することはないし、無駄な医療によって、ただただ延命させられるような人生を過ごさなくて済むと思うからです。


いまだに身内がいるのが当たり前という前提で社会が動いている証拠だ。今の政治を見ていても、家族がいるのが当たり前、いない人は変人扱いだ。この国は人権のない国だとつくづく思う。でも、そのことについて戦わないわたしたちも悪いのだが。」(p.137)

一人暮らしの女性が救急搬送される時、救急隊員から当たり前のように身元保証人を尋ねられたという事例です。これだけ「おひとり様」が増えているのに、いまだに家族に任せることを当然とした社会から変わっていないのです。
私も、この問題についてよく考えます。高齢者の一人暮らしだと、住居を借りるにも、仕事を探すにも、苦労することが多いのです。それは、身元保証を求められるから。もっと合理的に考えて、最終的な保証は国がするように変えていく必要があるんじゃないかと思っています。


SSSの会員から「今はいいけど年を取ってからがひとりは不安」という声をよく聞くが、誰かに幸せにしてもらおうという気持ちがあるから出る言葉で、「自分を幸せにするのは自分」と知れば、不安は消えるはずだ。
 正直言って、誰かがいつもそばにいるのは煩わしい方が大きい。
」(p.148)

不安な人は、他人から幸せにしてもらうしか方法がないと信じているのでしょうね。だから他人を頼り、他人に依存し、自分自身を蔑ろにするのだと思います。

「こんなに明るいひとり暮らしなら、長生きしてもいいかな」と思わせる人の共通点は、強い孤独力を持っていることだ。彼らは、むやみに寂しがらない。それどころか、心の中は知らないが、いつ会ってもにこにこしている。ひとり暮らしで話し相手も子どももいないのに、である。
 彼女らが口々に言うのは、「ひとり暮らしは煩わしい人間関係がないからいい。夫や子どもがいないのは寂しいどころか自由でいい」と。
」(p.152-153)

そうなのです。一人でいることに不安や恐れがなければ、むしろ自由でいいと感じます。

ひとりを満喫している90歳の方は、毎晩寝る前に、自分の体の部位に手をあてて、「ありがとう、心臓さん」「ありがとう、膝さん」と感謝を捧げるそうだ。そうすると、体が喜ぶのがわかり、明日も楽しく生きようと思うのだそうだ。
 皆さん、努力しているのだ。孤独を味方に付ける自分なりの言葉のマジックを持っているのだ。
」(p.154-155)

これはレイキの自己ヒーリングと通じるものがありますね。独りと言っても、いたわるべき自分の身体もあるのです。そうやって身体との会話を楽しむこともできます。


そういえば、うちの父が生前によく言っていた言葉がある。父は子どもに価値観を押しつけたり、心配だからこうしろと言うことが一切ない人だった。だから、わたしはいつものびのびしていた。
 その父の言葉、それは「自由に生きなさい。自由ほど素晴らしいものはない」であった。当時は、よく理解できなかったが、この年になると納得できる。人生で一番大事なものは、お金でも家族でも仕事でもなく自由であること。
」(p.161)

私も同感です。もっとも大事な価値観は「自由」です。それなのに、不安や恐れから安心を求めて自由を手放す。けれども、動機が不安や恐れですから、安心という現実は引き寄せられず、相変わらず不安や恐れのまま。ただ自由がなくなるだけ。そのことに多くの人に気づいてほしいなぁと思います。


なんかの広告で、ゴッホの言葉を引用したらしいが、あまりにも、今のわたしの心境にぴったりな言葉だったので響いた。その言葉とは−−。
「美しい景色を探すな。景色の中に美しいものを見つけるんだ」である。幸せの目で見れば、名もない日も輝いてみえる、という意味らしい。
」(p.207-208)

すべては見方次第なのです。だから、今あるがままで誰もが簡単に幸せになれる。そう、私も言っているのです。


「手ぶら暮らし」というタイトルから、モノを持たない生活の話だと思った方もいると思うが、この本は、終活や断捨離を勧める本ではない。はっきり言って、それはたいしたことではない。木で言えば、枝葉だ。大事なのは根だ。そして根となるのが、生き方だ。老いをどうとらえているのか。どういう姿勢で生きているのかだ。」(p.212-213)

そして、いきいきと暮らしている皆さんにはある共通点があることに気づいた。それは次の3点だ。」(p.213)

「おわりに」で、このようにまとめておられます。重要なのは生き方なのです。そしてその生き方のポイントは3つあり、それを次のように言われています。「足るを知る」「感謝の心」「好きなことがある」 つまり、今あるがままで十分だと見ること、十分どころか恵まれている見る視点を持つことですね。そして、今の現状に満足しているから、その安心感の中で自分らしい生き方、自分が好きなことをする生き方ができるのです。


本書でいろいろな方の実例がありますが、どれも将来は絶対に安泰だと言えるものではありません。著者の松原さんも、今は仕事があって収入があるからUR住宅で暮らしていけるのであり、もしそれがなくなれば、UR住宅から出ていかなければならない。そうなったらどうやって暮らしていくのか? 絶対的に安心できる状況ではないのです。
しかし、そうであっても安心して生きることはできる。すべては自分の気持ち次第、見方次第だと言われているように思います。

私も、何とか就職ができてアパートを借りることができたので、今は妻と一緒に暮らせています。それもこれも、健康な身体があったからだとも言えます。ありがたいことです。しかし、将来どうなるかは未知数です。生涯現役の覚悟を持って生きていますが、どうなるかはわかりません。ただ、どうなったとしても「大丈夫だ、何とかなる!」という思いを持って生きています。

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タグ:松原惇子
posted by 幸せ実践塾・塾長の赤木 at 11:13 | Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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