2024年12月08日
あっという間に人は死ぬから
あっという間に人は死ぬから 「時間を食べつくすモンスター」の正体と倒し方 [ 佐藤 舞(サトマイ) ] - 楽天ブックス
Youtubeの動画で、統計のお姉さんとして非常に論理的な分析をされてたサトマイこと佐藤舞(さとう・まい)さんが本を出版されたと知って買ってみました。
本のタイトルがどういう意味かはわからなかったのですが、読んでみると納得でした。不安や恐れから無駄に人生の時間を使わないようにするための考え方や方法を紹介する内容なのですね。
ではさっそく、一部を引用しながら本の内容を紹介したいと思います。
「「時間がない」と嘆く一方で、平気でスマホをだらだらといじり、時間だけを浪費する。
そんなチグハグな時間感覚から抜け出し、生きていることそのものを楽しむような瞬間を取り戻す。
時間の僕(しもべ)になるのではなく、主(あるじ)になる。
流されるままの人生から、自分で方向を決める人生にする。
これが本書の目的です。」(p.9)
「はじめに」において、このように本書の目的を開示されています。
「そして問題は、当の本人も、「自分にとっての有意義な時間ややるべきことが一体なんなのか分かっていない」、ということと、「人生において本当に大切なことに向き合おうとする時に現れる邪魔者の正体が分かっていない」、ということです。」(p.53)
「人間は考える葦(あし)である」と言ったパスカルの言葉を引用しつつ、自分が何を求めているのかわからずに、他のことばかり欲して行動することが問題だと指摘します。
「17世紀のフランスの文学者、フランソワ・ド・ラ・ロシュフコーは「死と太陽は直視できない」といいました。これほどまでに人間の本質を的確に表している言葉はないでしょう。この一文が、本書においての最重要キーワードです。」(p.56)
「人生の3つの理
@死
A孤独
B責任
この3つの理を避けるために無意識に自分にウソをついて行っている行動が、間違った時間の使い方を生み出しているのです。」(p.57)
つまり、人は100%死ぬとわかっていながら、自分は死にたくないと無意識に思うことにより、自分の死に直面することを避けることで、人生の時間の浪費をしているという指摘ですね。
「フランスの哲学者、ジャン=ポール・サルトルは「人間は自由の刑に処せられている」と言いました。私たちは、自由に人生や運命を切り開いていけますが、それには責任が伴います。自由に生きられるにもかかわらず、自分で選択した人生の責任を負いたくないので、自由と責任から逃れようとします。」(p.60)
「人は、日頃からこのようなコーピングを繰り返すことで漠然とした心理的苦痛を回避しています。人生をやりすごすための合理的コーピングといえるでしょう。」(p.62)
自由というのは、自分で決められる、自分で決めるしかない、自分の責任である、ということになります。その責任を負うことを避けようとして、不安から逃れる思考をすると言うのです。
たとえば、死の不安から逃れるために、死ぬことを考えないようにするとか。孤独の不安から逃れるために、他人に依存して寂しさを紛らわせようとするというのもそうですね。
「このように、自分の偏見や信じていることを肯定するような証拠を見つけて、自分の行動を正当化したり、自分で自分にウソをつく行為を、「自己欺瞞(じこぎまん)」といいます。
人は、自分にも他人にもウソやいいわけをすることに多大な時間を使っています。しかし、ウソなのか本当なのか、自分にも他人にも分からないことも多いのです。」(p.65-66)
たとえば、ワーカホリックになることにも「仕事をしないと家族を養えないから仕方がない」みたいな言い訳を考えるってことですよね。本当にそうですか? 本当に他に方法はないのですか? というような、見方を変えてみるってことが、なかなかできないのです。
「人はなぜ、本命の行動ではなく代替の行動に逃げ、それを自己正当化しようとするのかというと、簡単に言えば「傷つきたくない」からです。
人は、何らかの葛藤や痛みが発生することを予感したり、自分にとって困難が現れた時に、本能的に自分を守ろうとする「心の防衛反応」が働きます。」(p.67)
人は、「今の自分」を否定したくないのです。守りたいのです。だから、「今の自分」を正当化する理由を考え出すんですよね。でもそれによって、「本当の自分」に到達することが遅くなってしまいます。「今の自分」を捨てて変化していかなければ、「本当の自分」には到達できないからです。
「向き合わなければいけない本質から目をそらし、それでいいんだといいわけをすることに時間を使っている。
これが、人生の浪費の正体なのです。」(p.70)
「今の自分」にとって多少の痛みがあっても、それに正面から向き合う勇気が問われているのだと思います。
「本書が目指す「有意義な時間の使い方」とは、自分の人生の舵(かじ)を自分で握ることとその覚悟、そして智慧を手に入れ、人生の3つの理(死・孤独・責任)を受け入れながら、自分の人生をコントロールしていくこと、と定義します。
そのためのガイドを行っていきます。」(p.76)
「「もっとお金を儲ければよかった」という人は1人もいないのです。
5つの後悔の共通点は、「人生の理と向き合わず、自分の本心を無視して、自分にウソをつき続け、なんとなく周りに流されて生きてしまった結果」で、死を覚悟した時に自分の本心に気づくのです。」(p.79)
有名な話ですが、緩和ケアの介護人、ブロニー・ウェアさんの著書で「死ぬ瞬間の5つの後悔」で言われていることですが、他人の価値観で生きて自分の本心に従わなかったことが、最期の瞬間に後悔することになるのです。
「以上の実験結果から、幸せな状態の時は、笑顔によって幸福が増幅されるけれども、幸せでない状態の時に、無理やり笑顔を作ったり、ポジティブな自己洗脳をしようとしたりすると、自分の本心と行動に自己矛盾が生じてしまい、苦しくなる、という解釈ができます。
やはり、自分にウソをつくのは精神的に良くないのです。」(p.90)
楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなる、という話がありますよね。私は、これはこれで真実だと思っています。ただ、自分が感じてしまった感情を否定すると、感情は抑圧されるだけなので、本当の意味で幸せにはなれないと思います。
この辺がなかなか説明しづらいのですが、まずは自分の感情を素直に受け入れて、その上で、そこから脱出する手段として、あえてポジティブに振る舞ってみる、ということは有効だと、私の経験からして思うのです。
「このように、認知、行動、感情、身体反応は、それぞれ相互に影響し合い、受け取った情報の整合性を取ろうとします。
人はありのままの世界を見ているわけではなく、受け取った情報を自分の中で整合性が取れるように瞬時に ”変換” してから、解釈したり評価しています。出来事そのものには評価は存在しませんが、私たちの心のフィルターを通して、出来事に「良い悪い」というジャッジを下しているのです。」(p.124)
出来事はニュートラルってことですね。それをどう解釈するかは、その人が自由に選択した見方次第なのです。
「魔王を討伐した後の物語を描いた『葬送のフリーレン』という漫画の中に、「旅をするには話し相手がいた方がいい」というセリフが出てきます。
人生に迷った時や行き詰まった時に、この本が、良き話し相手になることを祈って書きました。ぜひ何度も本書と対話してみてください。」(p.302)
本書はワークブックのように、ただ理論の説明だけでなく、どう実践するかを具体的に示しています。そういう意味では、実際に死の恐れと向き合う水先案内になると思います。
今の私にとっては、それほど役立つ本とは思えません。もうこのレベルは通過しているってことだと思うのですけどね。ただ、まだ死ぬことが怖くて正面から向き合えない人にとっては、人生を有意義に過ごすために有効な方法が書かれていて、手取り足取りワークを通じて実感できるような体裁になっていることからも、効果的な本ではないかと思いました。
役立つと思う方は、ぜひ読んでみてくださいね。
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