おそらくX(旧Twitter)で何かのポスト(旧ツイート)を見て、面白そうだと思って買った本だと思います。タイトルもよくわからず、「女子大生」が何かをしたのか、そういう設定での話なのか、それすらよくわからずに買ったのです。(以前、女子マネージャーがドラッカーを読んだら・・・みたいな設定の本もありましたよね。)
そんなよくわからない状態で読み始めたのですが、内容はいたって真面目なマーケティング手法に関する本でした。ただ、著者の神山理子(かみやま・りこ)さん(通称:リコピン)が、かなり面白い人だということはよくわかりました。
ちなみに「オナホ」と言うのはオナニーホールの略で、男性用のオナニー補助器具のことを言うのだそうです。そういう方面にはあまり興味がなかったので、まったく知りませんでした。(存在は知ってましたけどね。)
リコピンさんは、そもそも下ネタが苦手。それなのに、自分でオナホを作って売るというD2C(Direct to Consumer:企業が自ら企画・製造した商品を、小売店などを通さず自社ECサイトで直接、顧客に販売する方法)をやって成功させたことが注目されているのです。それだけでなく、いくつかの事業を立ち上げては起動に乗せて売却するということをされているようです。
どうしたらそんなことができたのか、どういう思考回路だとそんなことが可能になるのか。とても興味深く感じました。
リコピンさんは、マグロ漁船に乗ってみたり、ひよこの仕分けをするなど、一般的な人があまりやらないようなことを積極的にされています。また高校生の時は、学校に七輪を持ち込んで魚を焼いたことで火災警報を鳴らし、スプリンクラーを起動させてしまい、停学処分も受けたことがあるようです。
こうしたことからも、一般的な人とは、そもそもの思考回路が違うのではないかと感じました。
ではさっそく、一部を引用しながら本の内容を紹介しましょう。
「事業を成功させるには、良いコンセプトが必須です。
これはtoBだろうがtoCだろうが、有形商材だろうが無形商材だろうが、例外はありません。
良いコンセプトとは、「良いインサイトに突き刺している」ということです。
そして「良いインサイトの発掘」とは、簡単にいえば「顧客の気持ちを、顧客以上に理解して、彼らすらも気づいていない悩みを代わりに見つけてあげること」です。
そして、彼らすら気づいていない悩みに対して、「先回りして解決策を提供する」のがコンセプトであり、事業です。」(p.48)
まぁ、これがビジネスの王道だと言えますね。簡単に言えば、顧客満足度に訴求するということですから。
ただ、リコピンさんも言われるように、顧客が不満を感じていても、何にどう不満なのか理解していないこともあるのです。そういう顧客に対して、「これが不満に感じるポイントですよね。そうでしたらこれによって解決できませんか?」というアプローチをする。単に顧客の声を聞くというレベルではないのです。
この点に関してリコピンさんは、徹底的にインタビューなどをしてリサーチしています。それも様々な観点から。具体的な手法に関しては、ぜひ本書をお読みください。
「人が「面白い」と言ったものを、全力で楽しみ、相手の世界観に没入してみましょう。
なぜなら、「面白い」と思われるものには、必ず理由があるからです。
その理由を集め続けると、人が面白いと思うものを作るための手札となります。
私はよく、出会った人に「最近、面白かったものは?」「今、ハマってるものは?」と聞きます。
映画、アニメ、趣味、様々なことを聞いて、自分も見たりやったりするようにします。
そのときの心構えとして重要なのは、試してみるという感覚ではなく、「心の底からそれを ”面白いもの” と捉えて全力で楽しむことで、相手の世界観に没入する」こと。
すると不思議と、それの何が面白いのかがじわじわと理解できるようになり、新たなニーズが見えます。」
(p.134-135)
自分の興味の範囲には限界があります。それでは新たなビジネスを生み出すことは難しいでしょう。自分がまったく興味がなくても、他の誰かが興味があると言っているなら、そこに飛び込んで、同じように感じるまで味わってみる。そういう姿勢が重要だとリコピンさんは言います。
でも、それはリコピンさんの才能だなぁと思いました。リコピンさんは、ビジネスを成功させるためにイヤイヤそれをやったとは思えないからです。そもそも、そうやって他人のことを詳しく知ることが好きなのだと思います。
そしてこのことは、人間関係において非常に重要な視点だと思いました。つまり、人はそれぞれ違うのですから、相手のことを理解できないことが前提なのです。そうであれば、同質を求めたり、同質を押し付けたりするより、異質を面白がる視点が重要ではないかと思うのです。
「自分が買うもの一つひとつに対して、「なぜこの商品を買ったのか」と自問自答を繰り返します。
「どこでその商品を知ったのか」「なぜ他の商品を買わなかったのか」「今、持っているものではなぜ満足できないのか」「それを購入することでどうなりたいのか」など、”「どうして?」責め” を繰り返していきます。
「欲しい理由」をきちんと言語化できるようになると、思わぬインサイトに気づけるようになったり、キャッチコピー力が上がったり、PR戦略を思いつけるようになったりするなど、全般的なマーケティングスキルが上がります。」(p.138-139)
リコピンさんは、単に興味を持つとか関心を寄せるだけでなく、それを言語化することを勧めています。
これは私も同感です。レイキの練習において、感じたことを言語化することで感性を育むことができると思っていたからです。言語化するとは、無意識を意識するということです。意識してこそ、自分の無意識を変えることも可能です。
ぱっと見た目はセンセーショナルな感じがする本書ですが、内容はいたってまじめなマーケティング手法に関する指南書でした。
そういう意味では、私としては少し残念であり、読んでいる途中で興味を失ったりもしました。けれども最後まで読んでみると、著者のリコピンさんそのものが、実に興味深い対象だなぁという気がしました。
なので、この本の紹介記事は書くまいと思っていたのですが、読み終えた後で急遽、紹介記事を書くことにした次第です。
マーケティングに興味がある人にも役立つと思いますが、私のような感性の人も、リコピンさんに興味を持たれるのではないでしょうか。
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