2023年05月28日

専門医が教えるがんにならない食事法



以前に紹介した「筋肉ががんを防ぐ。」の著者、石黒成治(いしぐろ・せいじ)さんですが、Youtubeの動画でも情報発信されています。その中で新刊の紹介があったので、さっそく買ってみました。

動画でもすでに語られている内容なので、情報として目新しいものはありません。しかし、癌の専門医が、これまで得た情報をまとめてがんにならない食事法というがん予防の本にされているので、今、勤めている老人介護施設の食事に役立つのではないかと思いました。
この本も施設に残していくつもりですが、役立ててくれるかどうかはわかりません。でも、私が関与できるのはここまで。あとは、その情報を受け取った人が、役立てるかどうかを考えてくれればいいと思っています。


ではさっそく、一部を引用しながら本の内容を紹介しましょう。

たくさん見た光景は、抗がん剤を使用しながらも決して治らないという現実でした。あくまでも延命が中心で、がん患者は1〜3週間に1回病院に通い続けます。抗がん剤をたくさん投与することが最もいい結果を生み出すという前提で治療が行われていたため、多くの副作用が出ました。」(p.3)

がん専門医の石黒さんは、どれだけの抗がん剤を人体に投与できるかということを腐心していた治療現場に入って、何をやっているんだろうかと疑問に感じたようです。

ヒトの細胞ががん化して固形がんになるには10年以上の長い年月がかかります。そのため自分の免疫細胞ががん細胞を死滅させる時間はたっぷりあるはずなんです。がんになるということは長期にわたって自分の免疫がしっかりと働かずに生活していたというサインです。免疫がうまく働かなくなる原因として重要なのは腸内環境です。腸の中には体内の免疫細胞の70%が存在していますから、腸の環境を乱すような食事、運動不足、睡眠不足、ストレスなどが長期にわたると免疫力は低下します。」(p.4)

腸内環境を改善するためには、腸の中に「何を入れるか」が一番重要です。そのためには毎日どんな食事を摂ったらいいのか? 現在僕のYoutubeチャンネル(Dr Ishiguroの健康スクール)でもいろいろなメッセージを発信しています。」(p.5)

がん予防には腸内環境を整えること。そのための食事を紹介するのが本書の目的です。

「がんを予防する」効果をうたった食材、サプリメントがあふれていますが、あなたはがんにならない食材があると思っていますか? それだけを食べていればがんにならないなどというものが本当に存在するならば、現実にがんになる人はいないはずです。実際には、がんになる確率をほんの少し下げてくれる食材が存在しているだけです。ウコン、にんにく、くるみ、ブロッコリーは確かにがんになるリスクを下げる研究結果が発表されています。」(p.5-6)

がん予防にはがんになる確率を少し下げてくれる食材を摂取することはもちろんですが、同時にがんを引き起こす可能性を上げる食材を少なくしていかなければならないのです。がん予防に「プラスとなる食材」と「マイナスとなる食材」を合計した結果がプラスになるように食事を考えていくことが重要であると考えます。」(p.6)

癌にならないという薬のような食べ物は存在しません。ですから、「これだけ食べていれば大丈夫」ではないのです。
で、がんのリスクを高める食材として何があるかと言うと、添加物やブドウ糖果糖液糖や人工甘味料があると、最初にあげられています。これらを含む食品は、健康に良さそうに見えるサラダや納豆(たれ)、ヨーグルト、野菜ジュースにも含まれていることがあるので注意が必要とのことです。


僕たちの体には多数の微生物が存在しています。以前は無菌と考えられていた血液や脳や心臓などの臓器にも常在の細菌、ウイルス、真菌が生存していることがわかっています。」(p.12)

しかしその細菌類の遺伝子の総数は、ヒトの細胞の遺伝子の100倍存在しており、代謝機能、免疫機能などに多大な影響を与えています。これらの微生物のほとんどは僕たちの胃腸の中に存在しており、腸内細菌叢(そう)と呼ばれています。」(p.12)

同様にヒト単独では十分な免疫機能を維持できないため、腸内細菌の協力が前提で免疫力が維持されています。腸内細菌は腸内の免疫だけでなく、全身の免疫系を適切な形で維持するためにも重要です。」(p.12)

これらの有益な機能が十分発揮されるためには、特定の善玉菌との共生の状態が保たれる必要があります。このバランスが崩れて、いわゆる悪玉菌が増加すると、有害な代謝物を生み出し、免疫系が過剰に反応して炎症を起こします。この炎症が持続的に起こる状態が、がんを生み出します(Lancet Oncol.2018)。」(p.13)

体内の微生物、特に腸内細菌のバランスを整えることが、免疫力を適切に維持するために重要で、そのバランスが崩れて慢性炎症になることで癌が発生するということですね。


腸の中に酪酸菌がしっかりと存在すれば、食物繊維を摂取することによってがんを予防する物質を作り出してくれます。」(p.14-15)

単に食物繊維を摂取すればいいのではなく、酪酸菌がいることが前提のようです。つまり、食物繊維を摂取するのは、酪酸菌を育てることが目的であり、酪酸菌を働かせることががん予防になるのです。

2020年から始まった新型コロナウイルス肺炎で重症化した人の腸内細菌を調べてみると、健常者と比べて酪酸の1つ、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイやビフィズス菌などの免疫調節機能を持つ腸内環境の割合が少ないということも報告されています(Gut.2021)。」(p.16)

酪酸を始め、腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸が、私たちの健康に役立つということが知られています。それを産生する善玉菌が重要だということです。

腸内細菌が乱れて炎症が起こると、腸の表面の細胞に隙間を作ります。この隙間から未消化の食べ物、細菌、寄生虫、毒素などが体内に流入します。この状態をリーキーガット(漏れた腸)と呼びます。慢性的に乱れた腸内細菌は、慢性的な全身の炎症を持続させ、さまざまな臓器でがんを発生させる母地を作り続けます。」(p.18)

ここでもリーキーガットによる弊害が指摘されていますね。


ここで、最近の研究結果によるがん予防の食事というものが提言されていますので、それを引用しましょう。

1、前立腺がんのリスクを低減するために乳製品を避けること
2、口腔、咽頭、食道、結腸、直腸および乳房のがんのリスクを低減するためにアルコールを避けること
3、結腸および直腸のがんのリスクを低減するために赤肉および加工肉を避ける
4、結腸、直腸、乳房、前立腺、腎臓、膵臓のがんのリスクを減らすために、焼肉、揚げた肉を避ける
5、成人後の乳がんのリスクを減らすために、思春期に大豆製品を消費する
6、あらゆるがんの予防のために野菜・果物の消費を重視する
」(p.19)

この食事提言の中で最も重視しているのが、野菜・果物を積極的に摂取することです。善玉菌のえさとなる食物繊維の摂取量も必然的に増加します。」(p.20)

私も今は、毎日野菜を食べています。無限キャベツというレシピをアレンジして、けっこうな量の野菜やきのこ、海藻を食べるようにしています。
ただ、アルコールも毎日摂取しているので、その点はマイナスですね。(笑)


1990年代以降、世界の多くの地域で50歳未満の人の間でがんの発生率が上昇していることが研究で示されています(Nat Rev Clin Oncol.2022)。この現象は年齢ががんの主要な原因であることをはっきりと否定しています。」(p.22)

その結果、動物性たんぱく質、砂糖、加工肉、加工食品などを食べる食生活、睡眠不足や夜間勤務や座りがちな生活様式、抗生物質の使用の増加などと相関していることが指摘されています。」(p.23)

癌は、長期にわたる不摂生な生活習慣によって発生すると言われますが、単に年齢が高いことが発症リスクを高めているのではなく、生活習慣、特に食事の習慣が原因となっているようです。
また、昼夜逆転のような自然な睡眠を妨げる生活や、腸内細菌叢を破壊する抗生物質の多様も、原因としてあげられるようです。


果糖が腸内に大量に入ってくることによって起こる腸内細菌の変化の1つはルミノコッカス属の低下です。ルミノコッカス属は酪酸産生菌で、理想的な腸内細菌のバランスにとってルミノコッカス属が豊富に存在することが重要です(FEMS Microbiol Rev.2014)。果糖を大量に摂取することは、ルミノコッカス属を低下させ、確実に腸内環境を悪化していくということになります。」(p.35)

果糖の摂り過ぎは、悪影響が大きいようです。丸ごとの果物として食べる分には、それほど大量には摂れませんが、ブドウ糖果糖液糖などが入った飲料だと、容易に大量に摂取できてしまうようです。


がんを予防するためのプラスの効果を示す食べ物は、一言でいうなら「野菜・果物」です。野菜・果物を食べる最大の理由は、食物繊維を摂ることができるということです。」(p.44)

善玉菌の餌として食物繊維の摂取が重要ですが、特に水溶性食物繊維が良いようです。本書では、押し麦、らっきょう、アボカド、アーモンド、わかめなどが挙げられています。
私も普段から、押し麦、もち麦、オートミール、アーモンド、ワカメなどを食べています。お陰で便秘にならず、便量もかなり増えました。


どの成分をどれだけ摂取するということではなくて、いろいろな野菜・果物をホールフードの形で摂取することが重要です。そのようなアプローチの1つとして、色とりどりの食品を食べることで、果物や野菜の健康特性との関連付けがしやすくなる可能性があります。」(p.53)

つまり、特定の野菜や果物を薬のように考えて食べていてはダメなのです。多種多様な野菜や果物を、なるべく丸ごと食べることが重要なのですね。


βグルカンはさまざまな薬効作用を持ち、免疫力を活性化してがんや感染症から体を守る能力を向上させる働きがあることで知られています。」(p.54)

野菜や果物以外では、きのこが重要だと言います。それはβグルカンが豊富だからだそうです。


日本人が安心して摂取できる発酵食品は植物乳酸菌の作る麹、味噌、納豆、ぬか漬けなどです。これらの日本の伝統食品については毎日積極的に摂取すべきなので、その質には十分に注意する必要があります。商品ラベルをよく見てアルコール(酒精)や着色料(カラメル)・保存料などの添加物が入っていないかをしっかり確認して、入っていない本物を摂取するようにしてください。」(p.59)

私も味噌は無添加のものを買っていますし、納豆は付属のタレを使わないようにしています。


1975年の日本食を継続していれば、慢性炎症は防ぐことができ、がんを予防する上では理想的な食事といえます。」(p.72)

1960年代の単純な和食より、少し西洋化されて贅沢になった1975年代の食事の方が健康的で寿命も伸びるという研究結果があるそうです。
それは、ご飯と味噌汁に、魚や煮物のおかずが付くという基本パターンに、時々サンドイッチやスパゲティ、ハンバーグという洋食が入る感じなのだそうです。


脂質は細胞膜の構成成分ですので、体の中に良い脂肪がなければ良い細胞はできません。体内では、糖質やアミノ酸から飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸を合成することができます。そのため大量の脂質を摂取しなくても脂質不足になることはありません。しかしオメガ6脂肪酸であるリノール酸とオメガ3脂肪酸であるアルファリノレン酸は合成することができないため食事から摂取する必要があります。」(p.78)

オメガ6はサラダ油などで、現代食では多く摂取しているものです。オメガ6とオメガ3の摂取比率は2:1が理想と言われますが、そのバランスが崩れていて、10:1くらいになっているとも言われます。なので意識してオメガ6を減らし、オメガ3を摂取することが重要になってくるのです。
ただしオメガ3もオメガ6も不飽和脂肪酸であり、酸化しやすいという性質があります。酸化した脂質は悪影響があるので、精製した油は厳重に保管して酸化を避け、開封後は速やかに摂取する必要があるのですね。

あくまでもオメガ3脂肪酸は新鮮な魚やくるみ、亜麻仁、ヘンプシードなどから摂るようにしてください。
 脂肪も同様に何g摂取したらいいのかと考えるかもしれませんんが、大事なことは悪い油を摂らないことです。体に悪さをしない油であれば、どれだけ摂取しても問題ありません。
」(p.81)

脂質に関しては量よりも質が重要だということですね。
私も、一時的にエゴマ油を無限キャベツに使っていましたが、やはりオリーブオイルにして、オメガ3はミックスナッツの中のクルミから摂取しようと思いました。そして揚げ物や炒め物を減らすことで、オメガ6の摂取を減らすことも考えています。


間欠的ファスティングは、血糖値を上げない時間を長時間取ることができ、その結果、炎症および酸化ストレスを減らすことができるため、がん予防に直結します(Rejuvenation Res.2015)。」(p.86)

間欠的ファスティングとは、16時間断食のように1日の中で長時間の食べない時間、空腹の時間を作る方法ですね。
私も1日2食を基本にすることで、必然的に12〜16時間の間欠的断食を実践しています。


体の中には毎日5000個程度のがん細胞が生み出されています。運動は腫瘍細胞周りにがん細胞を攻撃するリンパ球を増加させます(Cancer Cell.2022)。がん細胞が目に見える大きさまで増殖しないようにするためにも、座っている時間を短くして、しっかりと運動してがん細胞の顕在化を防いでおく必要があります。」(p.88)

運動することはがん予防に効果があるようです。


夜間に働く職業の人は、がんのリスクが高いことがわかっています(Lancet Oncol.2019)。これは概日リズム(サーカディアンリズム)という体内時計が狂ってしまうことがその原因と考えられています。国際がん研究機関は、人の概日リズムを乱す夜勤労働には、発がん性があることが強く疑われると判断しています。」(p.88)

私も老人介護施設で働いていて、最初はシフトで夜勤がありました。しかし、夜勤明けの日ばかりかその翌日のお休みの日も体調がおかしくなるので、夜勤のシフトから外してもらいました。
現代社会においては夜勤というものがどうしても必要なのだろうと思いますが、そういう仕事をされる方には、本当に頭が下がります。


この後は、がん予防を考えたレシピが紹介されています。味噌や塩麹などの発酵調味料を使ったものや、常温で乳酸発酵させたものなどが紹介されています。

最後に、「おわりに」から一部を引用しましょう。

老化細胞は量が少ないうちは、がん化を抑えるように働きますが、その量が過剰に増えると周囲に慢性炎症を起こし、免疫機能の低下と相まって、がん化を促進するように働きます。がんが年令を重ねて増加するのは、老化細胞の蓄積が一つの要因だと考えられます。

 がんを予防するためには、体の老化細胞を極力増やさないようにすることです。
」(p.138)

現時点で確認されている抗老化薬には、本書でも紹介したウコン(ターメリック)の成分であるクルクミンの他、玉ねぎやブロッコリー、りんごなどに含まれるケルセチンなどもあり、抗酸化・抗炎症効果のある成分を含む食材が安全で確実な老化予防薬です(Annu Rev Pharmacol Toxicol.2021)。夢のような薬の出現を待つことなく、現実的ながん予防の対応を開始してほしいと思います。」(p.139)

細胞分裂は50回くらいが限度とされ、そこまでいくと細胞は自死するようになっているそうです。しかし老化によって、その自死の機能が働かない細胞が出てきて、それを老化細胞と呼んでいるそうです。
この老化細胞の量が増えないようにするために、抗老化作用のある食材を食べようという提案ですね。私も、無限キャベツにウコン、ブロッコリー、玉ねぎを入れて食べています。


むしろしっかりと守られているのは、何を食べるかではなく、いかに食べないかです。加工食品を食べないこと、普段食べているものだけを食べて、人から体に良いとすすめられる知らないものをは食べないこと、そして腹一杯食べないことです。沖縄の高齢者はがんの発生も少ないことから考えると、実はがんを予防する食生活はとてもシンプルなのだと思います。」(p.140)

以前に読んだ「THE BLUE ZONES 2ND EDITION」でも書かれていましたが、沖縄も長寿者が多い特異地域、つまりブルーゾーンであり、その食生活は、野菜や果物をメインに腹八分目食べるということでした。豚肉を食べるというイメージがありましたが、豚肉など肉類はめったに食べず、魚も毎日のようには食べないとのこと。
何を食べるかというより、いかに食べないか。私も健康的な食事の基本は少食だと思っているので、このことは腑に落ちました。


がんを予防するということも重要ですが、要は健康的に生きるということが重要なのだと思います。そのためには、特に腸内細菌を整えることを考えた食事をすること。これが大事だと思っています。
こういう情報は、ネットでも無料で集められますが、こういうまとめてある本も有益だと思います。特に、薬に頼るなと明言される医師の言葉は、非常に説得力があると思います。

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タグ:石黒成治
posted by 幸せ実践塾・塾長の赤木 at 08:18 | Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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