2023年02月03日
マンガでわかる 拘縮を予防・改善する介護技術
老人介護の仕事をしていて、拘縮という現実に向き合う日々です。そんな中で、拘縮に関するオンライン講座があると知りました。
残念ながら日程の関係もあって受けられなかったのですが、講師のお名前で検索したら、何冊か本があったので、まずはとっつきやすいこのマンガの本を買うことにしました。
著者は田中義行(たなか・よしゆき)さん。理学療法士(PT)として活躍しておられる方のようです。
拘縮の利用者様に対して、どのようにケアしたらいいのか。たしかにわからないことが多いです。
なので、私のための備忘録として、この記事をまとめておこうと思います。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「介護の世界では、「その人らしい生活を実現する」「幸せと感じてもらえるように支援する」などという言葉がその目標としてよく聞かれます。
確かにそれは大切ですが、私はその前に、高齢化によって身体の機能が低下しても、何らかの身体の障害を有してしまっても、「生活を継続できること」が大切だと考えています。」(p.@)
「つまり「生活支援」とは「その人の生活が継続できるようにすること」です。その土台があってこそ、その人らしさや幸せが深めていけるのです。
私が「拘縮の予防・改善」をテーマに本書を書いたのは、まさにこの「生活支援」の根本にある「生活の継続」を実現する技術を提供したいと考えたからです。」(p.@)
冒頭で田中さんはこう言います。つまり、その人が今あるがままで、方法や器具を駆使して、これまでの生活を継続できるよう支援することが、何よりも重要だと言うことですね。
たとえば半身麻痺になった人に、健常者のようにスタスタ歩くよう支援することが、半身麻痺という現状を否定することにもなるのです。そのため無理をさせて、かえって状態を悪化させ、現状の継続が不可能になることもある。ただ頑張らせて、より良い状態に向かわせることだけが正しいわけではないのです。
「筋肉は収縮している方向と逆(例えばきつく閉まっている脇を開く)へ伸ばされると、ゴムを引っ張るのと同じ理屈で、緊張が高まっている筋肉の収縮力がさらに高まり、拘縮もさらに進行してしまいます。」(p.22)
「北風と太陽」の北風のやり方ではダメだということですね。
「動かしたい方向とは逆に関節を動かし、筋肉を緩ませることです。」(p.23)
「決して無理に大きく動かそうとせず、軽い力で動く範囲から行ってください。ケアの立場として大切なのは「生活支援に必要な範囲で動くこと」です。
どこに触れるかも重要です。骨の硬い部分が触れられるところを、掌と指の腹の部分で把持(はじ)(しっかり握って持つ)して動かします。そうしないと、気が付かないうちに指先に力が入ってしまい、利用者の皮膚にくい込んで、けがをさせてしまうリスクが高くなります。」(p.23)
他の人のYoutube動画では、開かせたい方向へ動かすのではなく、あちこちぐるぐるぐにゃぐにゃと動かしていると、自然と開くようになるという内容がありました。重要なのは、無意識に力が入り続けている(拘縮)筋肉を緩ませてあげることなのですね。
そして、無理に力を入れると指が食い込むことがあります。痛いと言えない利用者様もいます。気をつけなければいけませんね。
拘縮には5種類があるそうです。
「@皮膚性拘縮 火傷や手術痕など、皮膚の真皮が傷ついたことによって動きに制限が起こること。改善するには、形成外科等で治療が必要。
A結合組織性拘縮 皮膚ではなく、その下にある靭帯、腱、腱膜等が原因で動きに制限が起こること。改善するには、整形外科等で治療が必要。
B筋性拘縮 筋肉の硬さが原因で動きに制限が起こること。介護のケア次第で和らげることができる。
C神経性拘縮 脳卒中に代表される脳神経系の病気や損傷によって動きに制限が起こること。トレーニングや福祉用具の活用など、介護で支援することができる。
D関節性拘縮 関節組織の炎症や損傷が原因で動きに制限が起こること。改善するには整形外科等で治療が必要。」(p.28)
このように、身体の機能的な拘縮は治療によって改善されますが、筋肉の緊張や神経性のものは、介護の方法次第で改善緩和されるということです。
「膝が曲がってくるのは抗重力筋の影響ですが、股がきつく閉まってくるのは、不適切な対応から起こる「誤用症候群」が原因です。」(p.51)
拘縮の原因は抗重力筋の緊張だと言います。つまり背中の筋肉が縮んで、そのために腰が反り返ります。すると寝ていると接地面が少なく不安定になって緊張がさらに高まるので、膝を立てて腰が反り返らないようにするのです。
膝が曲がってしまう人が多いのですが、こういう理由があったのですね。だから無理に膝を伸ばそうとするのではなく、膝の下に硬めのクッションを入れて、立膝の状態で安定させてやることがいいのだとか。それをやらないと、膝を立てる状態を維持するのに筋肉が緊張し、股をきつく閉じるようになるのですね。
「要介護認定を受けることになった原因として、@高齢化による機能低下、A慢性疾患・進行性疾患による機能低下、B後遺症が残るような障害による機能低下があります。
こうした状態の人は、「人間本来の自然な動き」や「生理的な動き」を行うことが現実的に難しいはず。にもかかわらず、無理してその介助をすると「誤用症候群」という二次障害が起こります。」(p.82)
間違った方法で介護することで、かえって悪い状態にしていまう「誤用症候群」。時には無理をして歩かせるのではなく、無理せず楽に移動できるように車椅子を利用することも、これまでの生活を継続するという意味では大切なのです。
「リラックスしている時はある程度動く麻痺側(患側)が、非麻痺側(健側)で力を入れることで緊張が高まり、固まってしまう反応のことです。繰り返していると、今は動いている腕もどんどん固まって強い拘縮に進んでしまいます。連合反応は脳血管障害の一部の人に見られる病的な反応です。
この反応が出ない場合は、頑張って動いても問題ありません。問題は非麻痺側に力を入れると、腕がグッと固まる利用者です。」(p.86)
患側をかばって健側だけで頑張りすぎると、連動して患側に力が入ってしまう。この「連合反応」があると、拘縮に進む可能性があるので、無理をさせてはいけないということです。
「拘縮のポジショニングで大切なのは、まず緊張を緩める姿勢を作ること。そしてその良い姿勢を自分では保持できないので、保持するためにクッションやタオルを適切に使用することです。」(p.88)
隙間を埋めて圧力を分散させたり、足の裏が接地するように高さを変えるなど、利用者の楽な姿勢をキープして、筋肉の緊張をとってやることが重要ですね。
「首の下の支えがない状態で臥床するのがどれだけつらいことなのか、やってみるとよくわかります。2〜3分間も試してみると、首の後方や肩周りの緊張が高まるのを体感できるはずです。
しかし、私たちは枕の当て方が不適切でつらくなってきたら、自分ですぐに直すことができます。また、動けなくても声を出して、当て方を直してもらうようSOSを出すこともできるでしょう。では、全身に拘縮のある人にはそれが可能でしょうか。自分で枕を当て直すことができず、そのつらさを訴えることもできない人がほとんどではないでしょうか。」(p.115)
健常者なら、何度でも寝返りしたり、位置を変えることで、身体の辛さを緩和することができます。しかし、拘縮が進んだ人は声を上げることさえできず、ただ辛さに耐えている。そういう視点を、私はすっかり忘れていました。
「そして一番のポイントは「脱健着患(だっけんちゃっかん)」。つまり脱ぐ時は拘縮の弱いほうの手から、着る時は拘縮の強い手からです。」(p.146)
「脱健着患」は、勤務し始めた頃に教わりました。実際にやってみると、介助のやりやすさがまったく違うので、すぐに覚えられますね。
技術的なことでは、まだまだ学ばなければならないことがあるなぁと思いました。ただその前に、利用者様は苦しみに耐えているという視点を、忘れてはならないなと強く思いました。
今後も、この仕事をしている限りは、もっと学んでいこうと思いました。入門書としては、最適なのではないかと思います。
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