これもYoutube動画でお勧めされていて、面白そうなので買ってみた本です。
著者は立命館大学スポーツ健康科学部教授の藤田聡(ふじた・さとし)氏です。130ページ足らずの薄い本で、サクサクと読めてしまいました。
内容はタイトルから想像できるように、たんぱく質の摂取を勧めるものになっています。
この前、脂質の摂取を勧める本を読んだばかりですが、それと比較すると、全体的にはカロリー栄養学に立脚していて、脂質の摂取に関する深い洞察がないように思いました。
しかし、たんぱく質の摂取そのものに関しては、いろいろと気づきも得られたので、読んで良かったなと思っています。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「たんぱく質の主な働きは、私たちの体の組織をつくる材料になること。筋肉をはじめ、血管や内臓、皮膚や髪、爪など、体の大部分がたんぱく質でできており、その総重量は体重の約30〜40%にものぼります。特に筋肉においては、水分以外の約80%がたんぱく質によってつくられています。」(p.10)
このように、人体を構成する主要な要素がタンパク質であり、タンパク質はそれだけ重要な栄養分であることを示しています。
「食事から取り込まれたたんぱく質は、体内で一旦アミノ酸へと分解されます。そして、全身の各部位で機能するたんぱく質として再合成されます。そのようにしてつくられるたんぱく質の数はなんと10万種類! さらに驚くことに、それらをつくっているのが、わずか20種類のアミノ酸です。」(p.10)
アミノ酸に分解されて消化吸収され、タンパク質に再合成されることは知っていましたが、その種類がいくつあるかは知りませんでした。
わずか20種類のアミノ酸を合成して、身体に必要な10万種類ものタンパク質を合成している。人体って、本当に素晴らしいなぁと思います。
「きれいに痩せるためには「単に食べる量を減らせばいい」というわけではありません。なぜなら、これまで説明してきたとおり極端な食事制限では、筋肉が大幅に減ることで基礎代謝も減少し、リバウンドの危険性が高まるためです。理想はできるだけ筋肉量を落とさずに体脂肪を減らすこと。そのためには、朝・昼・夜に毎食十分なたんぱく質を摂ることが絶対条件です。」(p.18)
「脂質や糖質は体内で消化吸収された後、余剰分は脂肪として溜められ、飢餓や病気、けがなど、いざというときのためのエネルギー源として蓄えられます。たんぱく質は一部脂肪にも変換されるものの、ほとんどがエネルギー消費されるか、余った分は尿中に排出されます。」(p.20)
吸収されたアミノ酸は、タンパク質の合成に使われます。身体の中では常に、筋肉の分解と合成が行われており、分解が優位になると筋肉量が減少するのです。
そこでタンパク質を食べることが必要なのですが、合成に使われない余分なアミノ酸の多くは排泄されるそうです。だから、血中アミノ酸濃度を保つためには、1食だけタンパク質量を増やすのではなく、均等に食べるのが良いと言われています。
しかし疑問なのですが、筋肉合成と分解の釣り合いが取れているとすれば、タンパク質を摂取しなくても、血中アミノ酸濃度は変化しないのではないでしょうか?
必要なものを尿として棄てるとも思えません。他でエネルギーが足りているなら、わざわざタンパク質(アミノ酸)をエネルギーに変える必要もありません。
もちろん実際には、空腹になればタンパク質(アミノ酸)から糖新生などでエネルギーになるでしょうし、バランスを取るために状態は刻々変化し、身体はそれに対応しているものと思います。でもそうであれば、3食同じくらいのタンパク質を摂取しなければならないという結論は、身体の恒常性能力を過小評価しているようにも思います。
「たんぱく質は食欲を抑えるホルモンの分泌に関わっており、食後の満腹感を高めてくれるのです。」(p.20)
つまり「腹持ちがいい」ということですね。ダイエットには空腹感を抑えることが重要なのだということは、前に紹介した本にも書かれていました。
25ページには20種類のアミノ酸をすべて紹介した表があります。なかなか知る機会がなかったので、その一覧を抜粋したいと思います。
・必須アミノ酸:イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン
・非必須アミノ酸:チロシン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、アルギニン
それぞれのアミノ酸には、それぞれの機能があります。前の本にも、グルタミン酸やグルタミンを摂取するのが良いとありましたが、グルタミン酸は脳や神経の働きを助け、疲労回復効果があるそうです。またグルタミン酸の1つだとされるグルタミンは、腸管のエネルギーとして利用されたり、アルコールの代謝を高めるとありますね。
アスパラギンやアスパラギン酸は、新陳代謝を高めたり疲労回復に効果があるそうです。アルギニンは血管を広げて血液の流れを良くするとか。
必須アミノ酸のロイシンやイソロイシンは、筋肉を強化して肝臓の働きを高める効果があるそうです。フェニルアラニンはドーパミンの、トリプトファンはセロトニンの、それぞれ材料になるとか。
いずれにせよ、アミノ酸単体で摂取するものではないので、タンパク質を食べるようにすれば、アミノ酸に分解されて、このように身体に役立っているということですね。
「つまりスコアが100に近いほど、必須アミノ酸をバランスよく含む、質のよいたんぱく質であることを意味しています。
肉や魚(貝類・甲殻類は除く)、卵など動物性たんぱく質の多くはスコア100を満たしています。」(p.26)
良質なタンパク質かどうかを知る目安として、「アミノ酸スコア」と呼ばれるものがあります。これは、必須アミノ酸がどれくらい含まれているかを数値化したもの。体内で合成できないアミノ酸を必須アミノ酸と呼んで、これは食べ物から得るしかないのです。
肉や卵がスコア100なのは、ある意味で当然とも言えますね。植物性では、大豆もスコア100です。畑の肉と呼ばれる所以ですね。
驚くことに、白米もスコア93とかなりいい線をいっています。トマトが85、チンゲン菜が77というのも驚きです。そう考えると、ベジタリアンだから栄養が不足する、とも言い切れないのだとわかります。
「DITにより消費されるエネルギー量は、1食の摂取エネルギーの約10%といわれます。その割合は栄養素ごとに異なりたんぱく質は摂取したエネルギーの約30%ものエネルギーがDITによって消費されます。糖質は約6%、脂質は約4%ですから、たんぱく質摂取後の消費エネルギーがずば抜けて大きいことがわかります。つまり、たんぱく質を摂った分だけ脂肪も燃焼しやすく、痩せやすいというわけです。
またDITは筋肉が多いほど高くなることがわかっています。筋肉の量は基礎代謝量にも比例しますから、筋肉をつけるほど、ますますエネルギー代謝のよい体になれるのです。」(p.32)
DITというのは、「食事誘発性熱産生」という言葉の英語の略です。つまり、食事を摂ったことで発熱することで、たんぱく質を食べるとすぐに熱として消費されやすいということですね。
「平均睡眠時間が6時間の人は、7時間の人に比べて肥満になる確率が23%高く、さらに5時間の人は50%、4時間以下の人は73%も増加します。その理由は、睡眠不足はインスリン抵抗性を引き起こし、食後の血糖値コントロールがうまくいかなくなってしまうためです。
また、睡眠不足や睡眠の質の低下によって運動量が減少し、エネルギー消費量が下がることも考えられます。」(p.50)
睡眠時間と肥満にも、深い関係があるようです。ここには書かれていませんが、私は、起きている時間が長ければ、食べる機会が増えて摂取量が多くなることも関係するのではないかと思います。睡眠時間が長ければ、12時間断食や16時間断食も容易にできますからね。
「1日のなかで最も食事の間隔があく夕食後から朝食前までの間は、新たなたんぱく質の供給が滞ってしまう分、筋肉の分解が進んでいくことになります。そのため、朝食では十分な量のたんぱく質を意識的に摂取し、分解から合成へとスイッチを切り替える必要があるわけです。」(p.72)
概算で1日約60gのタンパク質を摂取すべきだと言われますが、それは毎食20gずつ食べるべきだと言っています。多くの人の朝食は、私のように欠食する人もいるので、全般的に摂取量が少ないそうです。
なので藤田氏は、プロテインを使ってでも摂取量を上げるようにと言います。この辺は、考え方はいろいろあるなぁと思いました。
私は、基本的にはサプリなど、自然な食事以外から栄養を摂るということは最小限にすべきだと考えています。日常的に摂取するものではなく、緊急避難的であるべきだと。
そして、人類の長い歴史から考えると、朝食を食べないという時代が長かったと思うのです。狩りをして得た獲物は、その日のうちに食べてしまうでしょうから。
そうであれば、筋肉こそがタンパク質の貯蔵庫だと思います。糖質や脂質が脂肪として蓄えられるように、タンパク質は筋肉として蓄えられているのです。そうであれば、朝食を食べないことくらいは、大した問題ではない。それよりも、筋肉の合成を促すような運動をすることの方が重要ではないかと思っています。
現実に野生動物は、何日間も獲物にありつけないなんてこともザラにあります。それなのに、すぐに筋肉量が落ちて大変なことになるなんてことはありません。
「筋トレ前にプロテインを摂取した場合と、筋トレ後に摂取した場合、それぞれの筋肉への効果を比較した実験では、明らかな違いは見られませんでした。」(p.86)
「大事なのは「運動とたんぱく質摂取はセットで行う」。これを習慣づけることです。」(p.86)
食後30分ほどで血中アミノ酸濃度は上昇すると言われます。しかし、筋肉の合成においては、目立った差がない。ということは、やはり血中アミノ酸濃度を保つために3食十分なタンパク質を食べることは、それほど重要ではない、と言えるのではないでしょうかね。
「つまり、アルコールを摂ったことでプロテインの効果が抑えられ、筋肉の合成率が30〜40%低下してしまったのです。筋肉にとってアルコールは「百害あって一利なし」とまではいいませんが、筋合成の妨げになるのは明白です。」(p.96)
タンパク質とアルコールを同時に摂取した場合と、タンパク質のみを摂取した場合とで、筋肉の合成率に大きな差があるとの研究結果があるそうです。酒飲みの私にとっては耳が痛い。
「加齢によって筋肉量が減少するのは、歳をとるほど筋肉を合成する力が衰えてくるから。若者と同じ量のたんぱく質を摂っても、高齢者は同じように筋肉をつくることができなくなります。これをたんぱく質の「同化抵抗性」といいます。」(p.100)
これはインスリンの働きとも関係しているそうです。インスリンの量が減ったり、効果が十分に出なくなると、血管の拡張機能も働かなくなってきて筋肉にアミノ酸が届きにくくなるのだとか。
このことから、年寄ほどタンパク質を多く摂取すべきだと山田氏は言います。たしか中国では昔から、老人になったら肉を食べよと言われていました。このことにも意味があるのかもしれません。
「腎機能の低下した人にはたんぱく質の摂取制限が行われますが、健康な人がたんぱく質を摂ることで腎臓が悪くなるというエビデンスもありません。」(p.106)
他で、タンパク質の摂り過ぎも健康によくないと聞いたことがありましたが、専門家の山田氏は、そんなことはないと否定します。
ただし、余分なアミノ酸が尿から排泄されるので、腎機能が低下していると、余計な負担をかけることになるとは言えるでしょうね。
もちろん、何ごとも摂り過ぎが良くないのは当然ですから、あまりに偏った食事というのは危険が伴います。決めつけて行うのではなく、自分の身体の声を聞きながら、少しずつ変えていくことが重要かと思います。
この本を読むと、やはりそれなりにタンパク質も摂らなければなぁと思います。しかし、1日に60gのタンパク質を摂ろうと思うと、肉だけだと約300g必要です。これはかなりな量です。でも、他の食材にも少しずつタンパク質は含まれているので、肉だけというような偏った食べ方をしなくてもいいのかなと思います。
私は、納豆と卵を毎日食べるようにしているので、それだけで約15gのタンパク質が摂れています。他に肉も多ければ150gくらい食べます。ご飯や野菜、ナッツ類も食べているので、60g近く行っているかと思っています。
今後は、もう少し炭水化物を減らして、肉や魚を増やそうかと考えています。脂質の多い肉や魚を選ぶつもりです。そうすることで、より脂質が多くて、タンパク質も十分な食生活をやってみようと思っているのです。
もちろん、自分の身体の声を聞きながら、いろいろ試してみようと思っています。
