2022年11月11日
アメリカの名医が教える内臓脂肪が落ちる究極の食事
これもYoutube動画で紹介されていたのを観て、面白いと思ったので買った本です。
著者はマーク・ハイマン氏。医学博士です。翻訳は金森重樹(かなもり・しげき)氏。金森氏は、不動産関係の本を出されていたと思いますが、以前に読んだことがあります。また、「ハイパワー・マーケティング」という本の翻訳もされてましたね。幅広く活躍されておられるようです。
この本を読んで知ったのですが、金森氏自身が高脂質食ダイエットを行うことで、90kgの体重が2ヶ月で58kgにまで落ちたのだとか。それもあって、本書を翻訳されているようです。
Amazonのレビューを見ると、難しいという感想がけっこうありました。
たしかに本文の詳細部分はややこしいので、それほど必要でもないように思います。それに、本書の結論にあたる内容を、冒頭に金森氏が「まえがき」としてまとめています。この部分を読むだけで、本書の要点がよくわかるように思いました。
なので、引用のほとんどは、金森氏が書いた「まえがき」からのものになります。それでもけっこうな量になりますが。
これまでの常識をくつがえすものですが、何事も理論と実践が重要だと思います。自分でやってみて、確かめてみることですね。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「高脂質食を摂ることでおなか周りに余計に脂肪がつくのではないかと考えられている方もいると思いますが、全くの誤解です。
おなか周りの脂肪は、脂肪の合成促進・分解抑制の働きを持つホルモンの一種、インスリンによって摂取されたエネルギーが体内に脂肪として蓄積されるのが原因です。」(p.1)
「血糖値依存性のインスリン反応は全体の23%にすぎません。
インスリンが出るのは、糖質摂取時だけではなく、タンパク質を摂ってもインスリンは出ます。」(p.2)
インスリンによって脂肪が溜め込まれるのですが、インスリンの分泌は、血糖値の上昇によってのみ引き起こされるわけではないのですね。
最も出やすいのは、糖質とタンパク質の組み合わせだそうですが、脂肪だけ食べてもインスリンは出るようです。要は、エネルギーが過剰になると、身体はそれを脂肪として溜め込もうとするのです。
「慢性炎症はインスリン抵抗性を通じて肥満に直結しますので、炎症対策はダイエットの最も重要なポイントのひとつです。」(p.3)
肉、卵、チーズを中心に摂取する「MEC」という食事法があるそうですが、チーズに含まれる乳化剤が肥満と炎症性腸疾患に影響を与えるため、痩せない人が出てくるのだとか。タンパク質も摂りすぎると太ると金森氏は言います。
「インスリン分泌の組み合わせの中で最もインスリンが出にくいのは純粋な脂質を摂取した場合で、これが高脂質食でおなか周りの脂肪が溜まりにくい理由のひとつです。」(p.3)
インスリンを出しにくい食事は高脂質食。身体が脂肪を溜め込みにくい食事なのですね。
「本書では「あなたが太るのは、食べる量が増えて運動不足になるからではなく、太っているために食べる量が増えて運動不足になるから」つまり、脂肪細胞が「空腹感をもたらし」、過食することになる因果の流れについて説明されています。」(p.5-6)
食べるから太ると言うより、太っているから食べたくなる。これについては、前に紹介した本でも、そのようなことが書かれていました。
「人類が農業をはじめる前、つまり旧石器時代の人間は、米や小麦などの穀物を食べていなかった。つまり糖をとらない肉中心の食生活でした。そのため、当時の人類は虫歯や歯周病に一切かかることなく、親知らずも死ぬまで残っていたそうです。また男女共にBMIも適正なレベルに収まっていました。
この傾向はイヌイットにも見てとれます。アザラシやカリブー(トナカイの一種)の肉や、アザラシの脂で漬けた鮭、落花生しか食べてない先住民族イヌイットも、歯医者要らずで知られています。」(p.11)
糖質を摂取しなければ、虫歯や歯周病とは無縁なのです。万病の元とも言われる歯周病にならないのであれば、健康でいられる確率が高まりますね。
「糖によって「奇形」が全世界にもたらされ、この食生活の変化によって人類の身体が退化した。
これは「糖の恐怖」といっても過言ではないはずです。
糖質をとることによって、肥満だけでなく数々の身体の疾患に繋がってくるのは先に述べたとおりです。」(p.13)
金森氏は、歯科医院で論文を見て、旧石器時代の食事(狩猟採集民のような糖質制限)を体験することになったと言われています。
「現在、オンラインサロンでは多くの方が断糖高脂質食を実践しており、一番減量された方で、男性は1年4ヵ月でマイナス74.4kg、女性は1年2ヵ月でマイナス50kgです。さらに、肌荒れが治りハリがでてきた、爪が強くなった、過食嘔吐しなくなった、疲れにくくなった、イライラしなくなった等の効果に加えて身体や心の改善も毎日、続々と報告があります。」(p.15)
金森氏のオンラインサロンでは、断糖高脂質食を実践する仲間の情報交換をやっているようです。
「オンラインサロンをはじめたことで、当初は知識がなかった「質的栄養失調」の状態を知ることになりました。
これは、「栄養不足で脂質をエネルギーに上手に換えられない」という状態です。」(p.16)
ビタミンやミネラルの不足から質的栄養失調が生じているようです。品種改良や化学肥料などによる野菜の栄養不足が深刻なのだそうで、通常の食事ではビタミンやミネラルを十分に摂れないのだとか。
「問題はいままでカロリー制限ダイエットをしてしまっていたり、断食をしてしまっていたりしたことで体内で必要な補酵素、補因子が枯渇してしまって、脂肪を取り込んでエネルギーに換える、ヒトの細胞内のミトコンドリアが活性化できていないことだったのです。」(p.16-17)
これが質的栄養失調状態で起こっていることだそうです。金森氏は、ビタミンB群、鉄、Mg、ビタミンCなどのサプリを摂ることで、この状態を脱することができると言われます。
「タンパク質が充実してはじめて、サプリメントなどの効果が発揮されて質的栄養失調も解消に向かうからです。」(p.19)
体質改善のために、最初は断糖高タンパク質にする方法があるようです。いきなり断糖高脂質食にして上手くいかない時、サプリを摂取しても上手くいかない時、その期間を経て断糖高脂質食へ移行するという方法です。
「野菜を食べる胃袋のスペースがあるなら、肉をおなかに詰め込んだほうがよほどビタミンやミネラルは摂取できます。ですから、僕は野菜の摂取は推奨していませんし、僕自身、野菜は基本的には摂取しません」(p.16)
ある意味で非常に偏った食事ですが、金森氏はこれで問題がないと考えておられるようです。
「オメガバランスを整えるためには、ふたつのやり方があると思います。
穀物牛に多いオメガ6に拮抗するだけのオメガ3の魚油をサプリメントで摂取する方法。
もうひとつは、たとえば鯖缶中心生活のようにそもそもオメガ3を中心に含む食事に切り替えて肉類を食べないようにする方法です。」(p.20)
オメガバランスというのは、前に紹介した本でもあったように、オメガ3に比べてオメガ6の摂取が多過ぎるので、バランスを取ろうということですね。
このように、旧石器時代食を実践しておられる金森氏は、自身やオンライサロンに集まる人々の体験からも、本書の内容が素晴らしいと推薦しておられるのです。
では、ここからは本文からの引用となります。
「太り過ぎると、ホルモンと脳内化学物質によって空腹感と疲労感が生じるのだ。
これは、体重増加の原因についての考え方を根底から覆し、減量のために推奨されていることを何もかも否定している。ルートヴィヒ博士は、カロリーと量のことばかり考えず、体が本来の能力を発揮して空腹感・活動・代謝・体重を調節できるように、食事の質と構成(タンパク質、脂質、炭水化物の量と種類)を重視することをすすめている。意志の力に頼るのではなく、科学を用いて空腹感をなくし、エネルギーを高め、代謝をスピードアップさせよう!」(p.64-65)
食べ過ぎるから太るのではなく、太るから空腹を感じて食べすぎてしまう。その空腹を意志力で克服しようとするのではなく、つまり単純なカロリー制限をするのではなく、食事の質、構成を変えることが重要だと言うのですね。
炭水化物を多く摂ると血糖値が急上昇し、インスリンが大量に分泌され、それによって急激に血糖値が下がります。これが「血糖値スパイク」と呼ばれるもの。こういう乱高下が身体に悪影響を与えるとともに、急低下した血糖値によって、今度は空腹感が増すのです。だから、炭水化物の摂り過ぎや、炭水化物ばかり多く摂取することが問題になるのです。
「科学者も含めて多くの人が混同しているのは、私たちが食べる飽和脂肪酸が血中の飽和脂肪酸になると考えていることだが、直感とは正反対の衝撃的な事実がある。それは、食事で摂る飽和脂肪酸は血中飽和脂肪酸値を上げないということだ。肝臓が血中飽和脂肪酸を生成する原因となるのは、炭水化物と糖質(と過剰なタンパク質)である。」(p.92)
血中の飽和脂肪酸値が高くなると、心臓病のリスクが高くなると言われているようです。しかし、コレステロールの摂取制限が撤廃されたように、食べたものがそのまま血中に流れるわけではないのですね。
「結論から言うと、一価不飽和脂肪酸は健康に良い。ギリシャ人やイタリア人のように、オリーブオイルやナッツをたくさん摂る人々の心疾患率は、世界で最も低い。」(p.95)
地中海食と呼ばれるそうですが、オリーブオイルを使い、魚介類と野菜を中心にした料理を食べている人たちは、健康で長生きをするのだそうです。
そのオリーブオイルやアボカド、ラードや牛脂やナッツ類には、一価不飽和脂肪酸が多く含まれているそうです。
「この研究により、飽和脂肪酸−−その大部分はココナッツオイルのMCT、つまり中鎖脂肪酸トリグリセリド−−は、アルコール摂取を続けていても、肝臓のダメージ回復に効果があることが判明した。」(p.129)
炭水化物が多過ぎるとか食物繊維が少な過ぎる場合は、飽和脂肪酸が炎症を進行させることがあるようです。逆に飽和脂肪酸を摂取することで、肝臓のダメージ回復に役立つという研究結果もあるのですね。
「本項の要点は、飽和脂肪酸を炭水化物が少なく食物繊維が多い、オメガ3脂肪酸の豊富な食べ物と一緒に摂ると、炎症を抑制する。そして炎症を抑えることが、減量と健康増進のカギであるということだ。」(p.129)
他の書籍ですが、オリーブオイルも身体に良いものではないと書かれているそうです。しかし、オメガ3脂肪酸は良いものだとされていました。
オメガ3脂肪酸に対する評価は、これまで悪いものを聞いたことがありません。オメガ6とのバランス上、多く摂取することが健康に寄与すると言えそうです。
なお、本書では、MCTオイルで推奨できるのはココナッツオイルだけで、パーム核油はダメだと言っていました。私が買ったのはパーム核油のMCTです。そこは残念でしたが、買ったものは仕方がないので、使い切りたいと思います。
「北米ロッキー山脈東部の大平原で遊牧を行っていたネイティブアメリカンは、バッファローを主食にしていて、100歳以上の人の割合が最も高かったが、セブンスデー・アドベンチストの信者はベジタリアンでありながら、世界で最も寿命が長い人々だ。どうなっているのだろう? 肉と野菜、どちらがいいのだろうか? もしかすると、質問の仕方が間違っているのかもしれない。
考えられる答えは、私たちが気にかけるべきは肉食か菜食かではなく、肉食の人の典型的な食事や炎症を起こしやすい加工食品に含まれる、糖と精製炭水化物だということである。」(p.170-171)
「研究者たちは、健康意識の高い肉食の人とベジタリアンの双方とも、欧米風の加工食品を食べる平均的な人に比べると総死亡率が半減することを発見した。」(p.175)
肉食にも菜食にも健康長寿の人が多くいるなら、重要なのは別の視点だということですね。本書では、健康を害する原因は糖と精製炭水化物にあると指摘します。
一見するとベジタリアンの方が健康そうに見えますが、それは健康意識が高い人が多いからだと言います。だからベジタリアンでなくても、肉食でも、健康意識が高い人であれば、逆の低い人と比べれば健康で長寿なのです。
「ココナッツオイルの飽和脂肪酸である、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)は、実際に総コレステロールとHDLコレステロールの比率を下げ、体重を減らし、さらには肥満による脂肪肝を治すこともできる。MCTはユニークな飽和脂肪酸で、抗酸化作用と抗菌性があり、免疫系強化の役に立つ。MCTは体内で容易にエネルギーに変換される。したがって、MCTオイルはエネルギーとして使われてしまい、脂肪として蓄えられるMCTオイルはほとんど存在しない。このようにしてMCTは内臓脂肪を燃焼させ、体重を減少させるのである。」(p.201)
MCTがエネルギーに変換されやすく溜まりにくいことはわかるのですが、内臓脂肪を燃焼させることとどう関係するのか、この説明ではまったくわかりませんね。
ただこの後にある研究の結果が書かれていますが、それによれば、MCTを摂取した人の方が体脂肪が多く減ったとあります。
「MCTオイルがエネルギー消費と脂質の酸化、つまり燃焼を上昇させた−−言い換えると、代謝が速くなったのである。またMCT食の人は、オリーブオイル食を食べた人に比べて、それほど空腹を感じなかった。」(p.202)
「というわけで、MCTオイルには、代謝を加速し、カロリー消費を増やして内臓脂肪蓄積を減らし、さらに食欲を抑える効果がある。」(p.203)
研究の結果からは、MCTオイルを摂取すると空腹を抑えられ、脂肪の代謝が高まるということです。男性では1日あたり460kcalを余分に消費させる効果があるという研究結果も紹介されていました。
でも、今のところ私は、そこまでの実感はありません。ココナッツオイル由来のMCTではなく、パーム核油だからでしょうか。パーム核油について本書では、わずかに飽和脂肪酸が多いとだけ説明されていて、精製パームオイルと同様に粗悪で加工品に多く使用されていて避けるべきだとありました。
「あなたの脳の60%は脂質で、その大半はオメガ3脂肪酸とコレステロールでできている。あなたが低脂質の食事をとると、脳を飢えさせていることになる。
脂質は脳に不可欠だ。食事の脂質不足は、神経変性疾患、うつ病や自殺や攻撃行動などの精神障害、注意欠陥障害(ADD)や自閉症、脳卒中、さらにトラウマと関係があるとされている。
その一方で、食事をオメガ3などの良質の脂質で補うと、これらすべての条件の改善に結びつく。」(p.226)
要するに脂質は脳に良いとのことです。特にオメガ3などですね。
「最高の医師はあなた自身の体だ。その声に耳を澄まそう。よく注意しよう。何で体調が良くなるのか、あるいは悪くなるのか? 効き目のある薬を見つけよう。何度もお話ししたように、食べ物は薬であって、ただのカロリーではない。それにはあなたの遺伝子・代謝作用・免疫システム・腸内細菌を調節する情報や命令が含まれているのだ。」(p.248)
結論として、私もこれに同意します。どんなに良いことが書かれているとしても、それを実践し、自分の身体に合うかどうかを確認する必要があると思います。鵜呑みは危険ですから。
以前に読んだ「やせたければ脂肪をたくさんとりなさい」と同様に、本書は脂質を多く摂ることを勧めるものです。私も原始食という考え方に賛同するので、高糖質・炭水化物食は避けようと思い、そうしてきました。
そこでタンパク質を多くということをまず考えたのですが、タンパク質は糖質に転換されるし、またインスリンの分泌を促すことがわかってきました。筋トレで筋肉量を増やそうとしているならタンパク質が大事ですが、そこまでの筋トレもしていません。そうであれば、タンパク質の摂り過ぎによる弊害もあるのかなと思っています。
ということで、私も高脂質食に転換していこうと考えています。備蓄している炭水化物(カップ麺など)がなくなったら、ですが。そして、私の場合はやはり、無理に炭水化物をゼロにしようとは思いません。基本的には食べませんが、出されたものは食べる。ゆるやかな高脂質食にして、自分の身体の声を聞こうと思います。
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