2022年10月15日

腎機能がみるみる強まる食べ方大全



これもYoutube動画で紹介されていた本です。
動画では、中身の濃い本だと感じたのですが、実際に読んでみると、思っていたのとは随分と違いました。
まあ、そういうこともたまにはありますね。

本のタイトルには、前に「国立大学教授・腎臓の名医が教える」「運動を頑張らなくても」という言葉が付いています。つまり、この肩書によって洗脳しようとする姿勢が明らかで、そういう本に限って中身がないのですが、この本もそのとおりでした。
著者は東北大学名誉教授の上月正博(こうづき・まさひろ)氏。他にも立派な肩書が多数並んでいましたが、腎臓の名医と呼ばれるような実績があったのかどうか、それらからはよくわかりません。ただ、あまりエビデンスを示さずに決めつけで書いているようなことが多く、しかも一般によく言われているようなことがほとんどだったので、独自の研究や実践による知見があるとは思えませんでした。

もちろん、そうは言っても、たしかにそうだと感じる部分もあり、本書の内容を完全に否定したいわけではありませんよ。
ただ、タイトル負けしているなぁと感じられるだけです。


ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。

腎臓は「寿命を決める臓器」であることをご存じでしょうか。腎臓は、血液をろ過して、体に必要なものと不要なものを選別する臓器です。必要なものは血液に戻し、不要なものは尿として排出します。そうして、体内の水分・塩分・血圧などを一定に保ってくれているのです。」(p.2)

その一方で、私が今とても心配していることがあります。それは腎臓病になる患者さんは減るどころか増えるいっぽうであることです。腎機能が低下した慢性腎臓病の患者数はすでに1330万人、成人の8人に1人、70代の3人に1人、80歳以上の2人に1人に達しています。その背景には、高齢化や運動不足などさまざまなな要因が考えられますが、最大の理由は「食べ方」の啓蒙が進んでいないということに尽きると思います。」(p.3)

腎臓は体内の解毒を担う臓器であり、生命維持の観点からは非常に重要です。その意識が足りないこと、とりわけ食が与える影響について考えていないことが、腎臓の健康を害することにつながっていると上月氏は言います。

ただ、たしかに食が与える影響が大きいだろうと想像できますが、それに対するエビデンスはまったく紹介されていません。これでは単に、そう思い込んでいるだけではないかという疑問も出てきます。


腎臓にやさしい食事のカギとなるのは、主に、❶塩分、❷カロリー(糖質・脂質などのエネルギー源)、❸アルコール飲料です。これらをとりすぎると高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まり、腎臓の負担が増すからです。」(p.14)

ここでも何ら根拠も示さず、これまでよく言われていたような結論が述べられています。
たとえば塩分においては、摂り過ぎを心配する必要はないという研究者さえいる現代において、一般的にそう言われているから、というのでは根拠が希薄でしょう。
また、糖質も脂質もいっしょくたに「カロリー」でくくってしまうのは、前時代的ではないかとさえ感じてしまいます。


腎臓を守る食事で盲点になりやすいのが「甘い飲み物」です。液体の糖質は吸収されやすく、血糖値を上げやすいからです。」(p.19)

「シンプルな食べ方」として10カ条を示していますが、その多くがこれまで常識とされている健康法、ダイエット法と言えるでしょう。
1つ目が栄養成分表示をチェックする習慣を身につけることで、2つ目が菓子パンやお菓子を控えること。そして3番目がこの甘い飲み物を控えること。要は高カロリーと高糖質を避けよということですね。

肉は良質なたんぱく質の供給源となる優れた食材です。ただ、一般に、肉には脂質が多く含まれます。1グラム当たり約4キロカロリーのエネルギーとなる糖質・たんぱく質に比べると、脂質は1グラム当たり約9キロカロリーと、2倍以上のカロリーがあるため、とりすぎると肥満につながりやすいのです。
 そこで、肉を食べるなら「脂質の多い脂身と皮は残す」と決めましょう。
」(p.30)

これも何だかなぁという気がします。要はカロリーが高いから脂肪を排除せよということでしかありません。カロリー信仰の栄養学は、すでに否定されていると思うのですがね。
それに、赤身肉が問題だという指摘もありますよね? それについては、まったく言及されていません。

ただ、食品添加物のリンは、天然の食材のリンよりも吸収されやすいのです。過剰なリンは腎臓でろ過されて排泄されますが、腎機能が低下すると十分に排出できなくなり、高リン血症になって骨がもろくなったり脳卒中や心筋梗塞を招いたりするばかりか、腎臓の石灰化を招き、腎機能がさらに低下する恐れがあります。」(p.21)

リンが腎臓に良くないという話は、最近知りました。食材に含まれるリン、つまり有機リンは吸収されづらいものが多いのですが、食品添加物に含まれる無機リンは吸収率が高いそうです。リンが不足する心配はほぼないとのことなので、ともかく摂り過ぎに注意するようにとのことでした。
本書でもリンを減らすようにと言っていますが、私が得ているほどの解説もありません。

6番目は朝食を無塩にすることで1日の塩分摂取量を減らすということ、7番目はファーストフードや揚げ物、ラーメンを控えるということ、8番目が一汁三菜の魚の和定食を定番化して、ご飯を最後に食べるようにすること、9番目が緑黄色野菜、淡色野菜をできるだけ増やすということ、10番目が海藻、キノコ、こんにゃくを増やすということです。
もうこれだけで、何だかなぁという気持ちになります。それに、まったくシンプルでもありません。


腎不全から人工透析に至る最大の原因が、糖尿病を原疾患(もとになる病気)とする腎臓病「糖尿病腎症」です。ほかの原因で透析を始めた人よりも5年後の生存率が低いとされる糖尿病腎症の患者さんの死因の約15%は、糖尿病腎症の合併症といわれています。」(p.60)

つまり、血糖値が高い状態から起こる腎臓病が、もっとも注意すべき対象だから、血糖値を上げないことにもっと気を配るべきだと言うのです。

そこで高血糖対策としては、次の6つを挙げています。
1番目が、主食を減らしておかずを増やすこと、2番目は三角食べではなく、まずは野菜、次にたんぱく質や脂質の主菜、それからご飯などの主食という順番に食べること、3番目が主食をGI値の低いものに替えること、4番目が水溶性食物繊維が多い納豆やオクラなどの副菜を追加すること、5番目が酢や緑茶の糖の吸収抑制作用を活用すること、6番目がビタミンB1を多く摂って血糖をエネルギーに変えるようにすることです。

これも、低糖質ダイエットを知っている人からすれば、特に言われなくてもわかっているというような内容ですね。重要なのは、それがどの程度の効果を発揮することなのかという点だと思いますが、そういう言及はありません。
つまり、こうすると良さそうだよ、というような話を列挙しただけです。まあ、間違いはないのかもしれませんが、何だかなぁという気持ちになるのです。

例えば、酢の酸味のもとである酢酸には、唾液に含まれるでんぷん分解酵素の作用を弱め、消化を遅らせて食後の血糖値の上昇を抑える働きのあることが報告されています。酢には、高い血圧を下げる効果や内臓脂肪の減少を助ける効果も認められており、減塩にも役立つので、高血糖や高血圧、メタボを指摘されている人は積極的に活用すべきです。」(p.66)

5番目の酢を活用することに書かれているのですが、もう場当たり的としか思えない論評ですね。


高血圧による腎機能の低下を「腎硬化症」といい、腎不全から人工透析に至る原疾患(もとになる病気)のうち3番めに多い病気です。高血圧で腎臓の糸球体に過剰な圧がかかって痛めつけられると、毛細血管を覆ってフィルターの役割を果たしている「タコ足細胞」がはがれ、ろ過機能が低下します(34ページ参照)。」(p.70)

腎硬化症の予防・治療では、高い血圧を下げることが基本です。尿たんぱくが見られない場合は、最高血圧130ミリ/最低血圧80ミリ未満を目標にしましょう。」(p.70)

腎硬化症と高血圧は因果関係が証明されてますか? ほんと、いいかげんにしろよ! と言いたくなるレベルです。
相関関係と因果関係は、まったく別物ですからね。そんなことすら検証しようともせず、一般論にしたがってこんな本を提供するって、害悪でしかないんじゃないかとすら思えてきました。


減塩の目標は、1日に食塩6グラム未満、1日3食とすると1食当たり2グラム未満となり、かなり薄味に感じられるでしょう。だからといって、朝食を抜いて1日2食にしては、体内時計や自律神経(意志とは無関係に血管や内臓の働きを支配する神経)が乱れて、血圧の安定には逆効果になってしまいます。そこで考えたいのが、朝食をできるだけ「ゼロ塩」に近づけることです。」(p.74)

なぜ1日3食が最善なのでしょうか? エビデンスがありますか? もうそういう決めつけはやめていただきたい。


近年、腸と腎臓がお互いに影響を及ぼし合う関係が明らかになっています。腸内フローラのバランスが乱れて腸が不調になると腎機能が低下することがわかってきたのです。これを「腸腎関係」といいます。」(p.112-113)

これも最近よく言われてますね。だから、腸内環境を良くすることが、腎臓機能を維持するのに役立つのだと。
しかし本書で指摘されてるのは、これくらいなことです。だったらすでに知ってることでもあるんですがね。


このように、すでに健康やダイエット考えている私にとっては、この本はまったく役立たないし、むしろ害悪があるのではないかと思えるレベルです。
しかし、こういう健康法をまったく知らない人に取ってみると、腎機能の重要性を理解する上で、役立つかもしれないなぁと思った次第です。

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タグ:上月正博
posted by 幸せ実践塾・塾長の赤木 at 12:22 | Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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