これもYoutube動画で紹介されていた本です。
食品の栄養素に注目した健康&ダイエット関連の情報は多いのですが、著者の國澤純(くにさわ・じゅん)氏は、それでは不十分だと言います。酵素がなければ、栄養を消化吸収することすらできないのだから、酵素の働きに注目し、酵素を上手に働かせるという視点が重要なのだと。
酵素というのは、その言葉は知っていても、よくわからないというのが私の本音です。なので、それなら酵素について学び直してみようという思いもあって、この本を読むことにしました。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「”食事の健康効果”というのは、
食材の種類や量だけで決まるわけではありません。
じつは、食べたものが健康にいいかどうかは、
「酵素の働き」によって決まります。
私たちが食べたものは、酵素によって
”健康にいい物質”に作り変えられて、初めて役に立ちます。
酵素が働かなければ、いくら栄養のあるものを
食べてもまったく意味がありません。
つまり、
”食の効果”は
酵素が
決めているのです。」(p.6-7)
冒頭に書かれていますが、これが本書の結論ですね。
「酵素というのは何千種類もあり、それぞれ別々の働きをしています。ある食材から免疫力をアップさせる物質を作る酵素もあれば、別の食材から便秘解消に役立つ物質を作る酵素もあります。
つまり、こういう健康効果が欲しいからこの酵素に働いてもらいたい、だからこの食材を意識して食べる、というように、酵素の働きを逆算した食べ方をすることで、より健康効果が得られると考えられるのです。」(p.10)
本書で「善玉酵素」と呼ぶのは、この目的に適った働きをする酵素のことであり、その酵素を働かせるように材料や環境を整えてやることを推奨しておられます。
「結論からいえば、酵素はいくら食べても、そのまま体内で働くことはありません。むしろ、働くと危険です。」(p.20)
酵素というのはタンパク質でできている物質なので、口から取り込めば、ふつうにタンパク質として消化吸収されるだけです。なので、「酵素入り飲料」というものを飲んでも、酵素そのものを体内に取り込むことはできません。
そして、もし間違って酵素が腸に届くなんてことがあると、たとえばパイナップルに含まれるタンパク質を溶かす酵素などが体内で働くと仮定すると、胃や腸に穴が開くなんてことになりかねない。だから、危険だというわけです。
「では、酵素は食べてもまったく無意味なのかというと、じつは一部例外が。体内に吸収される前に、口や胃、腸などで働いてくれるものがあります。
「大根おろしを食べると胃もたれしない」と聞いたことがありませんか? あの大根おろしがこのケースです。大根に含まれる酵素が吸収される前に胃などで働いて、私たちの消化を助けてくれるのです。」(p.21)
大根には炭水化物を分解する酵素が含まれており、唾液に含まれる酵素のアミラーゼと同等の働きをするそうです。
「では「微生物の力」とは何かというと、それが酵素です。微生物が持っている酵素の働きによって発酵するのです。つまり、発酵させると酵素ができるのではなく、微生物の酵素があって初めて発酵が起きるわけです。」(p.23)
本来は発酵食品なのに、酵素ドリンクと銘打って販売している商品があるとか。酵素とか発酵とか、言葉はよく聞くけど、その意味を正確に理解していないことが多々あるようです。
「食べたものを私たちの生命活動にそのまま使うことはできないので、バラバラに分解したり、分解したものを必要な形に組み立てて、利用できるように変換する必要があります。そのときに働いているのが「酵素」です。
酵素は、家を建てるときの大工さんのようにイメージすると、わかりやすいかもしれません。」(p.30)
「肉に含まれるタンパク質は最終的にアミノ酸という最小単位まで酵素によって分解され、体内に吸収されます。このように、食べたものを吸収できるように細かく分解する酵素のことを「消化酵素」といいます。
体内に吸収されたアミノ酸は、今度は逆に、さまざまな酵素の働きによってアミノ酸からタンパク質が作られ、最終的に筋肉になります。このように、体に必要な物質に組み立て直す酵素のことを「代謝酵素」といい、私たちの体の中で働く酵素は、消化酵素と代謝酵素のふたつに分けることができます。」(p.32)
これはわかりやすい説明でした。つまり酵素は、古い家を解体して建材を作る消化酵素と、その建材から新しい家を組み立てる代謝酵素の2種類に大別できるということですね。しかも、酵素という大工さんは超専門職で、たった1つの作業だけに特化している。たとえば、釘を抜く、屋根を剥がす、壁を取り除く、柱を抜く、・・・などのように、一つひとつの作業ごとに専門の大工さん(酵素)がいて、その総合力によって、旧家の解体から新築の建造までを行っているのです。
「人では、どのタイプの酵素を多く持っているかは人によって異なることがわかっているため、”アレルギー改善効果の高い物質”を作る酵素をたくさん持っている人とあまり持っていない人では、アマニ油で得られる効果が違ってくる可能性があります。
つまり、健康にいいといわれる食材であっても、いい物質に変換する酵素を持っていなければ効果はあまり期待できないということです。」(p.45)
これが、同じ食材を摂取しても人によって現れる効果が違ってくることの理由の1つになっているそうです。アマニ油によってアレルギーが改善すると言われても、その効果に差が出るのです。
薬の効果に差があるのも、同じだと言われていますね。だから、その人にあった薬や食材が大事なのです。
「じつは、私たち自身が持っている酵素だけでなく、腸内細菌が持っている酵素も、私たちは利用することができるのです。」(p.46)
「腸活というと「善玉菌を増やそう!」と考えがちですが、それは手段のひとつでしかなく、最終的なゴールは、善玉菌が持っている「善玉酵素」に体にいいものを作りだしてもらうこと。それこそが、健康効果を得るための秘策なのです。」(p.47)
最近注目の短鎖脂肪酸は、私たちが消化できない食物繊維を腸内細菌(の酵素)が分解して作るものです。私たちは、腸内細菌の酵素で作られる物質も利用して、生命の維持に役立てているのですね。
「つまり、「善玉菌を増やすことが大事」、「善玉菌のエサを食べましょう」というこれまでの考え方だけでは腸活は不十分。「腸内細菌や発酵食品の微生物が持つ善玉酵素」と「食事成分」の組み合わせで、どんな物質が作られるかを考えることが大切だということです。」(p.52)
「「善玉菌を増やそう! 善玉菌のエサを食べよう!」というのがこれまでの腸活の考え方でしたが、じつは、その腸活のやりすぎが逆に腸の不調を招く場合があることが近年わかってきました。そのひとつが「SIBO(小腸内細菌増殖症)」です。
たとえば、よかれと思って腸内細菌のエサになる食物繊維を過剰に食べすぎたり、発酵食品や整腸剤をとりすぎたりすると、本来は大腸にいるべき腸内細菌が小腸にまで流入してくることがあります。」(p.54)
國澤氏は、自身や腸内細菌や発酵食品の微生物たちが酵素によって作り出す物質に注目した食事や環境づくりが重要だと主張されます。
そして、何ごとも過ぎたるは及ばざるが如しですから、やたらと腸内細菌を増やすような腸活は危険だと警鐘を鳴らしています。
ここから写真入りで、酵素によって作り出される物質に注目した献立が紹介されています。
たとえば「豚ニラしょうが炒め」は、しょうがのショウガオールが体を温めて酵素を働きやすくし、ニラのアリシンが豚肉に含まれるビタミンB1の吸収を10倍アップするなどの効果が期待されます。これによってミトコンドリアで働く酵素がビタミンB1の助けでエネルギーを作りだし、免疫細胞も活発に動けるようになるそうです。
しかし、これを読みながらなんだかうんざりしてきました。
それなら、タンパク質を食べれば筋肉がつきやすくなる、というのと大して変わらないじゃありませんか。それ以上に細分化する必要があり、その食材の組み合わせや献立を覚えるだけで一苦労です。
それに、働きが解明されていない酵素もたくさんあります。また、食材にはさまざまな成分が含まれているのであって、豚肉はビタミンB1だけではありません。すると、意図しない酵素を働かせることにもなるわけですよね。
そうだとしたら、そこまで細分化して食材や献立を考える必要があるのだろうか? と、思ってしまいます。
「ミトコンドリアを増やす働きは、オメガ3脂肪酸のEPAやDHA、また、MCTオイルやココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸にあるのでおすすめです。
油以外の食材だと、ブロッコリーなどに含まれるスルフォラファンという成分も、ミトコンドリアを増やすことが知られています。スルフォラファンは、植物が有害なものから自分を守るために作りだされるファイトケミカルと呼ばれる物質のひとつ。抗酸化力もあり、健康効果が期待されている成分です。」(p.88)
オメガ3は私も意識していて、クルミを含むミックスナッツをよく食べます。また最近、冷凍ブロッコリーを買って、よく食べるようにしています。その成分がどう働くかまで記憶していませんが、身体にいいんだろうなぁと思っているのです。
「糖質制限ダイエットが注目されたこともあり、白米を敵のように思ってご飯を一切食べないという人もいるようですが、意外にも、冷めたご飯は血糖値対策の強い味方になります。」(p.93)
冷めたご飯は、酵素で分解されにくい「レジスタントスターチ」と呼ばれる複雑な形のでんぷんに変化しているのだそうです。なるほど、冷めたご飯の効用ですね。
またレジスタントスターチは、腸内細菌によって短鎖脂肪酸にもなるとか。これなら遠慮せずに冷やご飯を食べられそうです。
「さらに、舞茸などのきのこ類の”よき相棒”として働いてくれるのが、かつお出汁です。血糖値は下がりすぎてしまうと、低血糖と呼ばれるエネルギー不足の状態になってしまい、とても危険です。そのため、適当なところでインクレチンの働きを止める必要がありますが、じつはそれも酵素の役割で、「DPP-4」という酵素がインクレチンを分解して、働きをストップさせます。」(p.96)
血糖値を上げる酵素、つまり糖質からブドウ糖に変換していく酵素の、働きを邪魔する酵素があります。それが舞茸などに含まれるグルコシダーゼなどの酵素です。だから糖質と一緒に舞茸を食べると、血糖値が上がりにくくなると言うのですね。
しかし一方で、あまりに上がらないのも問題だと國澤氏は言います。短鎖脂肪酸には、血糖値を下げるインスリンの分泌を促すインクレチンというホルモンを増やす力があるのですが、そのインクレチンを止めてやることが重要な場合もあるのです。
う〜ん、なんだかマッチポンプと言うか、アクセルを踏みながらブレーキを踏むと言うか・・・。そんなことをいちいち考えて、コントロールしながら何をどれくらい食べるか決めるのでしょうか? どっちの働きがどれだけ勝るとか、食べる時点でわかるのでしょうか? 精密にコントロールできるのでしょうか?
酵素の働きはよくわかったし、酵素が重要だということもよくわかりました。しかし、本書にあるような献立を利用して食事をしていこうという気にはまったくなりませんでした。
なぜなら、まず面倒くさいし、それほど意味があるように感じられないからです。それよりも、身体に良さそうな食材を選んで、なるべくまんべんなく食べるのが良いかと思っています。
私たちが意識しなくても、身体は健康を保とうとがんばってくれている。その働きを信頼して、任せておくのが一番だと思うのです。もちろん、その身体の働きを阻害するようなことは、なるべくやらないよう気をつけますがね。
本書の意図には共感しませんが、酵素というものを見直すきっかけにはなるかと思います。もちろん、これを自分の健康のために役立てようと思われる方は、どうぞ読んで、お役立てくださいね。
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