2022年08月01日
神仕組み令和の日本と世界
友人から「日月神示(ひつきしんじ)」というものがあると紹介され、本を探してみて、読みやすそうなものを買ってみました。
著者は中矢伸一(なかや・しんいち)氏。英会話講師などをされながら、神道系の歴史などを独自に研究されておられるようです。
サブタイトルに「日月神示が予言する超覚醒時代」とあるように、本書は予言とされる日月神示について書かれたものです。
私は友人に聞くまでは、まったく知りませんでした。そもそも予言はノストラダムスで懲りているので、もう十分かなという思いもありましたが、友人の勧めに従ってみることにしました。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「終戦を迎える前年の昭和19年6月、天性の画家であり神道研究科だった岡本天明(てんめい)氏が、千葉県成田市台方にある麻賀多(まかた)神社に参拝した際、突然、勝手に右手が動き出し、「自動書記」という形で書記が始まりました。この啓示は最終的に昭和36年頃まで断続的に続き、全37巻、補巻1巻という形で今日に残されました。」(p.5)
これが「日月神示」と呼ばれるものになるのですが、自動書記という点では「神との対話」と同じような感じですね。
「これを素直に受け入れて実践していくことにより、個人だけでなく社会、日本だけでなく世界全体が良い方向に変わっていく。大きな難が小さな難で済む。そんな力を秘めているのが日月神示なのです。
その日月神示によれば、やがては日本の「てんし様(天皇)」を中心とし、世界が一つにまとまる時代がやって来ます。戦前に言われた八紘一宇(はっこういちう)、四海同胞(しかいどうほう)の実現であり、本当の意味での恒久平和と繁栄の時代がもうすぐやってくるというのです。
ただし、その時代を迎えるまでに、人類は、今まで積もり積もったメグリ(悪行)を清算しなければなりません。いわば通過儀礼としての”禊(みそ)ぎ祓(はら)い”です。それは、天変地異、戦争、経済の崩壊、病の蔓延(まんえん)といった様々な形で起こることになるでしょう。一気にそうした現象が出てしまうとほとんどの人は生き残れないから、一刻も早く「まこと心」に立ち戻り、今から準備して、行動に移すようにと警告しているのです。」(p.6-7)
この本で書かれていることをコンパクトにまとめると、こういうことになるようです。
これについては、私としては違和感ありありなのですが、そのことは最後に書くことにしましょう。
「「物、自分のものと思うは天の賊ぞ、皆てんし様のものざと、くどう申してあるのにまだわからんか」(『キの巻』第7帖)
「てんし様拝みてくれよ。てんし様は神と申して知らしてあろがな、まだわからんか」(『水の巻』(第1帖)」(p.20)
すべてこの世は神が所有しているのであって、私たちが何かを所有できる、所有しているという概念が間違っているのですね。そしてその神が具体的なお姿として現れているのが天皇だと中矢氏は言います。したがって、天皇を神と信じて、自分を空しくすることを求めているのです。
「村山先生によれば、このたびの文明交代期は、2000年から2100年の100年間かけて起きるということになりますが、1600年前の交代期が西暦400年から500年にあたるところ、実際には西暦375年のフン族の大移動に端を発していることから、今回の交代期は1975年から2075年までに起こるだろう、としています。」(p.62)
これは日月神示とは関係ないのですが、歴史を見ると800年周期、1600年周期というものがあるという説を、村山節(みさお)氏が説いているそうです。
この説によれば、文明の大転換が1600年周期で起こっていて、その発端は民族の大移動にあるのだとか。だから今また大きな大転換期に差し掛かっているが、民族の大移動による世界的な大混乱が起こると予想されているのですね。
「人類の歴史は周期的な興亡をずっと繰り返してきていますが、次は日本が世界の主役になるということは、もう間違いないのです。
それは、800年とか1600年に一度のスケールで来る波ではなく、今、シュメール文明から始まる人類6000年の歴史が、終わりを告げようとしているということです。
これまでの6000年、あるいは6400年の歴史は、”男性”原理が主体の歴史でありました。男性原理が主体の世では、ピラミッド構造をなす支配型の社会になります。強い者と弱い者の差が顕著にあらわれ、他人を蹴落としてでも這い上がろうとする競争社会が実現します。
そしてこれから始まる新しい波は、フラットな構造の、上も下もない、対等な関係の社会になります。そんな地球社会の中心には「丶」という核があり、丶を中心として皆がまとまるのです。この丶にあたるのが日本であり、天皇陛下(てんし様)ということです。
これは女性原理が強く打ち出される世の中ですが、けっして女性原理が男性原理より優位に立つというものではなく、男性原理と女性原理が融合する、バランスの取れた理想的な社会になると予測します。つまり、イザナギ(男性原理)とイザナミ(女性原理)の結びです。これが「ミロクの世」と表現されるものです。
日月神示に示されているのは、もうすぐそういう世の中に転換するから、準備するようにというアドバイスであり、警告です。」(p.92-93)
中矢氏はこのように言いますが、特に根拠は示されていません。男性原理と女性原理の分類の根拠もないし、なぜそう転換するかもわかりません。それに、男性原理から女性原理へと転換するならまだしも、どうして統合された社会になると言えるのか。まったくもって不明です。
ひょっとしたら、日月神示にはそういう記述があるのかもしれませんが、少なくともこの本にはそういうことは書かれていませんでした。あえて書かない理由はないので、おそらく書かれていないのでしょう。
中矢氏は、日月神示には、大混乱の後に「ミロクの世」と言われる平和な社会が訪れると言います。したがって、いかにこの大混乱を乗り切るかが重要であり、そのための準備をせよと警告しているのが日月神示だと言うのです。
「おそらく2020年の東京オリンピックの後には、中国経済の崩壊は顕著になってくるのではないかと思われます。
経済の崩壊と同時に来るのは共産党一党独裁体制の終焉であり、代わって台頭してくるのが軍閥です。中国は内乱状態になり、分裂するかもしれません。これが、民族移動に拍車をかけるのではないかと思われます。」(p.115)
フン族の大移動に匹敵するものは、中国人民の大移動だと予測しているのですね。それをきっかけに、世界は大混乱に陥るのだと。
しかし残念ながら、今現在、そういう兆候は現れていないようです。
「また、日月神示は「てんし様を中心に世界が一つにまとまる」世の中を理想とするもので、それは八紘一宇(はっこういちう)とか四海同胞(しかいどうほう)という戦前の思想に通じるものではありますが、もう一つ注目しなければならないこととして、日月神示はその系譜から、「大アジア主義」の流れを汲むものであるということがあります。
日月神示は本来、大本(教)に降りるはずでしたが、大本が当局により弾圧されてしまったため、仕組みが変わり、一時は大元信者であった岡本天明さんに伝達されたと言われています。
その大本ですが、戦前は右翼ともつながりの深いものがありました。右翼といっても、今のような偏狭な国粋主義者の集まりではありません。当時の右翼というのは、大アジア主義を掲げ、清朝打倒を掲げる中国の革命家たちと共闘しており、日本の軍部とは対立関係にあったのです。玄洋社の頭山満(とうやまみつる)や黒龍会の内田良平は、大本教主の出口王仁三郎(でぐちおにさぶろう)とは同じ理想のもと、しっかりと結びついていました。」(p.187-188)
「現在の中国は、中華人民共和国と中華民国(台湾)の二つに分かれていますが、いずれしても、その基礎を作ったのは孫文であり、孫文のもとでは一つになれるのです。その孫文を命がけで護り、共に闘ったのは、日本の右翼たちだったということです。」(p.189)
つまり、大アジア主義というのは、神のみ心に適うものだということなのでしょうね。
しかしそれにしても、神の計画であった大本教を、人間が弾圧して潰してしまった、という発想も面白いですね。何とひ弱な神様なのでしょうか。
「また、満州には「五族」に限らず、ユダヤ人を大量に入植させるという計画もありました。現在のイスラエルが建国される前の1930年代、ヨーロッパで迫害を受けていたユダヤ人を満州国に受け入れ、定住させようと画策したのです。」(p.191)
これは「フグ計画」と呼ばれ、日産コンツェルンの鮎川義介(あゆかわよしすけ)が提唱したのだとか。ユダヤ系アメリカ資本の誘致を行うことが目的のようで、満州を多民族が協和した強国にしようとする計画だったようです。
その目的には、ロシアからの防波堤としての役割を満州国に担わせることでもあったようです。
こういうことを踏まえて、次に起こるであろう中国の分裂と民族大移動に備えて、中矢氏は次のようなプランを提示します。
「民族移動への対応だけでなく、新満州国を、新時代を開くモデル国家と位置付け、東アジアのみならず人類の未来を開くフラグシップとすることです。
なお、今は戦争する時代ではありませんので、アメリカやロシアをもこの一大プロジェクトに引き込み、皆で発展していけばいいのです。
本来こうした役割は新満州ではなく、日本が担うべきなのですが、自浄能力もないし自立することすらできない今の日本ではとても無理なので、日本以外のところに、こうした雛形を作るのです。」(p.202)
大アジア主義を満州の地に実現することで、大混乱機を乗り切ろうとする考えのようです。
あまりに理想論に過ぎる気がしますが、いかがなものでしょうかね。まだウクライナ戦争が起こる前に書かれたものなので、仕方ないかもしれませんが。
「『水の巻』第2帖には、
「ひふみ、よいむなや、こともちろらね、しきる、ゆゐつわぬ、そをたはくめか、うおえ、にさりへて、のますあせゑほれけ。一二三祝詞(ひふみのりと)であるぞ」
と出てきますが、私はこの「ひふみ祝詞」こそが、日月神示の根幹であると思っています。」(p.203)
これと同様のものが物部氏の史書である『先代旧事本紀』の「天神本紀」にあるそうです。「ひふみよいむなやこと」というのは、数字の「一」から「十」を読んだものです。
「私はとくに意味など考えずに奏上するべきだと言っていますが、前章でも出てきた在日朝鮮人の先生によると、「ひふみ祝詞」というのは、朝鮮語で解釈すると、日本と朝鮮、そして中国東北部を含めた「アジアの連帯、あるいは和合」の意味があるというのです。」(p.205)
読み物としては面白いと思いますが、私の正直な感想は、ノストラダムスと同じだというものです。
こういうことは、大昔から言われてきています。聖書でも黙示録のように、大惨事が起こった後に神の世が出現するとありますよね。
そして、こういう人を脅すような警告の多くに共通しているのが、具体的な対策を何も示していないということです。
本書を読みながら、具体的にどうせよと言っているのかを知ろうとしました。第5章は「私たちが目指すべき未来」とあるので、ここで日月神示に書かれている対策が披露されているのかと思いました。しかし、そういうことは何も書かれていませんでした。
東アジア共同体構想としての新満州国建設は、中矢氏の妄想であり、日月神示に書かれているものではありません。それに、仮に新満州国建設が対策だとして、いったいどうやって造るのでしょう?
日月神示にあるのは、神を信じよ、「てんし様」が神だと受け入れ崇めよ、というようなことばかりです。
一部に「型」だけでよいという記述もありましたが、その「型」が何なのかもわからないし、その解説もありませんでした。
聖書でも、神を信じよとしか言っていませんよね。その結果、ユダヤ教が始まってから4000年(一説には6000年とも)とか、キリスト教が始まってから2000年になりますが、歴史はどういう答えを出しているでしょうか?
私は、「神との対話」は絶賛していますが、それは非常に論理的に示されているからです。そして、不安(恐れ)は愛の対極であることも示されています。これも理屈として納得がいくものです。
したがって、こういう不安を煽るだけのものを、私は真実だと受け入れることはできません。もちろん、他の人が何を真実と受け入れるかは、その人の自由だと思っていますよ。
仮に本当に大混乱が起こって、人類がほとんど死に絶えるとして、だからどうなのでしょう? 魂が私たちの本質であるとするなら、いったい何が問題なのでしょうか?
不安を煽るものは、魂のことを語りながら、必ずどこかで都合よく魂を無視します。そういう一貫性がないのが特徴的ですね。
と言うことで、読み物としては面白いかもしれないので、読んでみたい方はどうぞ。
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