2022年02月20日
89歳、ひとり暮らし。
Twitterを見ていて、89歳でやってる元気なおばあちゃんがおられたので、興味深く感じてフォローしました。
すると、本を出版することになったとおっしゃるので、それならと予約して購入したものです。
著者は大崎博子(おおさき・ひろこ)さん。現在は都営住宅で一人暮らしをされていて、娘さんはロンドンで結婚して暮らされているそうです。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「苦労もしましたし、病気もいろいろ患いました。悩みごとをたくさん抱え、悶々としたまま長いトンネルから抜け出せなかった時期もあります。
でも今はこんなに幸せです。
特別なことは何一つしていません。ただただ流れに身を任せ、前向きに生きてきただけです。その結果、財産がたくさんあるわけではないけれど、愛する家族は元気でいてくれて、私の体は健康です。
子どもの頃からは想像もできないほどの便利なものにあふれた世の中にいられることに、感謝せずにはいられません。」(p.7)
戦争を体験された方ですから、今がどれだけありがたいか、身にしみて感じておられるのでしょう。
「それでも今は毎日夕飯どきにLINE(ライン)」電話が来ます。たいがい私が晩酌している時。ロンドンは朝の10時くらいでしょうか。たわいもない話をするだけですが、私にとってはかけがいのない時間です。
ときどき思うんです。このぐらい距離が離れているからこそ、親子関係がうまくいくのかもしれないと。近ければいいわけじゃない。」(p.30)
今は海外とも無料でTV電話ができる時代。私が子どもの頃、やっとダイヤル式の黒電話が家に設置された時代からすると、本当に夢のような世界です。
そして、適度な距離があるということは、本当に大切なことだと思います。私も一人暮らしを始めてから、そう思うようになりました。そして今は、タイの妻とLINE通話をする関係ですから、大崎さんがおっしゃることがよーくわかります。(笑)
「今、私は自分でも驚いてしまうくらい元気です。痛いところはどこもないし、毎日楽しいし、お酒も美味しい。
だからといってずっと健康でいたわけではありません。50代で子宮筋腫を患い、70代は胃がんで胃の3分の2を切除しました。さらに右ひざに水が溜まってしまい、治療のために注射をどれだけ打ったかわかりません。そんな状態でしたが、無理をしない程度に歩くことを続けていたら、いつの間にか痛みもなくなり、溜まっていた水もなくなり、全部解消してしまいました。」(p.54)
「実際に私は大金とは無縁ですが、毎日これ以上ないほど楽しく過ごしています。でもそれは、今のところは幸いにも健康だからというのもあります。病気はお金がかかりますし、気分も落ち込んでしまいますから。なので、歳をとったらお金よりも健康こそが、何よりの財産なのかもしれないなとよく思います。」(p.114−115)
大崎さんは、1日に8000歩あるくことを自分に課しているそうです。その散歩と太極拳の運動で、健康になれたと言われています。
たしかに、歩くことは基本ですからね。私も今は仕事によって適当な運動ができていますが、この健康を維持するには、仕事を辞めても歩く習慣を持たなければと思っています。
「急な出費の時は、貯金の出番です。必要経費は仕方ないので、えいっと下ろして使います。そのための貯金ですものね。とにかくストレスがたまらない生活を心がけていて、それはお金に関しても同じことなのです。贅沢はしませんが、無理もしません。これは私の人生において、一貫して言えることかもしれません。」(p.120)
いくら貯金をしていても、使わざるを得ない事態になると、うじうじと出し渋ってしまうことがあります。将来の不安など、恐れがあるからですね。
大崎さんは、その恐れ(不安)を捨て去って、しょうがないと割り切るようにされています。それがストレスをなくして楽しく生きることにつながるのだと。
「BTSだって、最初は名前と顔が一致するまで1週間かかりました。カタカナがなかなか覚えられないんです。でも、こういう時は「脳トレにもなるな」と思えばいいんですよね。頭なんてボーッとしていたら衰えるばかりですから。なんでも前向きに楽しんでみる。面倒がらずに娘や孫の言うことを聞いてみて、気がついたら自分もファンになっていて、元気をもらえているなんて、いいことづくめじゃないですか。」(p.134)
最初は娘や孫に好かれたいからだったかもしれませんが、面倒がらずに頭を使うことが元気の秘訣だと大崎さんは言われます。
その際、見方を変えるのもポイントですね。ものごとの良い面を見れば、それを楽しむこともできますから。
「前にも書きましたが、とにかく手を動かすことが大好きで、だから、お水を替えたり、花瓶に生けたりといったことがまったく苦になりません。むしろ、そのお世話している時間は心のリハビリとでも言いましょうか。日の当たるお部屋で、無心になってお花に触れていると、ちょこっとイヤなことがあっても浄化されます。気持ちが整理され、スッキリするのです。」(p.146)
手作業も脳を活性化させ、ボケ防止になると言いますからね。そして、何かに没頭する時間というものが必要なのだろうと思います。
私も趣味でトイレ掃除や新聞折り(仕事の排泄介助で使用するもの)をするのですが、あれこれ考えずに作業に没頭できるので、大崎さんと同じようにスッキリすることができます。
「コロナ禍は制限も多くて本当に大変でしたが、唯一、これをきっかけに人間関係を整理することができたということだけは、良かったのかもしれません。自然と人と距離ができたので、改めて、自分にとっての快適な距離感を保てるようになった気がするのです。
自分の気持ちに誠実に。これは年令に関係なく、とても大切なことだと思っています。」(p.167)
嫌いな人からは離れる。大事なことですね。
無理してそばにいるから、ストレスを感じたり、嫌な自分になったりするのです。
斎藤一人さんも、たとえ親子兄弟でも、会うとぶつかることが多いなら離れたらよい、と言われています。
「歳をとってミスが増えても、大丈夫なようにケアはしつつ、あとはどーんと構えている、もうこれに尽きるのではないでしょうか。」(p.174)
取れる対策は取っておけばいい。それ以上のことは心配してもどうしようもないのですから、あれこれ考えない。そうなったらそうなった時と鷹揚に構えておくことですね。
「これは私の根本にずっとある部分なんだと思います。昔から何に対しても「ケ・セラ・セラ」、なるようになると思って生きてきたところがあるのです。いいか悪いかは別として、だからストレスが溜まらず、長生きできているのかもしれません。」(p.176)
大崎さんは、生まれつきの楽天家のようですね。それこそが天賦の才能で、多くの人が得たいと思ってもなかなか得られないもののようにも思います。
「そしてもう一つ、老婆心ながら申し上げますと、「全部ひっくるめて楽しむ」、これに尽きると思うのです。
私は89歳でひとり暮らしです。ひとり娘は遠く離れたロンドンにいます。この状況に対して、「さみしくないかしら」と心配される方がほとんどでしょう。でも、強がりいっさいなしで、私はこの暮らしを心から楽しんでいます。
”楽しむ”ことにお金はかかりません。人に迷惑もかけません。ただ自分の心の持ちようです。なんてお手軽なんでしょう!
「ウォーキングしなくちゃ」と嫌々家を出て、猫背でとぼとぼ歩くのと、「今日はどんな花が咲いているかしら」と浮き浮きした気分で歩くのと、1年後にはどれほどの差が出ていると思いますか?
この”楽しむ”の積み重ねこそが、若さと元気をキープする秘訣だと思うのです。」(p.185)
義務感ではなく楽しんで前向きになってやること。大崎さんは、いつもそう考えていらしたのでしょうね。
何も大崎さんのやり方だけが正しいとは思いませんし、参考になる部分を参考にすればそれでいいと思います。
けれども、楽しんで生きるということは、すべてにおいて核心的なことではないかと思います。
私も大崎さんのように、楽しんではつらつと生きる老人になりたいと思いました。
この記事へのコメント
コメントを書く
●コメントを書く前に、こちらのコメント掲載の指針をお読みください。