これも日本講演新聞(旧:みやざき中央新聞)で紹介されていた本です。著者は日本画家の堀文子(ほり・ふみこ)さん。ご高齢でありながらも子どものような好奇心を持ってハツラツと生きておられる。これはエッセイですが、堀さんの若々しく生きる秘訣を知りたくて、買ってみました。
ではさっそく、本の一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「新しい感性で作品をつくるには、いつも「現在(いま)」に興奮していなければなりません。死ぬことは”初体験”ですから、死の問題に自分が何を感じて、どんな最期を迎えるのか、興味津々なのです。」(p.19)
堀さんは、歳を意識したことはないと言います。けれども、だんだんと死に対して親しみを感じてきたのだと。それは、未知の死が目前に迫りつつある臨場感の中で、恐れよりも好奇心の方が勝っているからのようです。
「年を重ねて、自由がだんだんそばまで来たような気がいたします。
何ものにあってもおどおどしなくなるには、よほどの目にあわないとわかりません。
打ちのめされて、必死で新しい道を探すたびに、今までの常識を壊し、少しずつ自由になってきたように思います。」(p.37)
新しいものと対峙するということは、これまでの常識ややり方が通用しないということです。堀さんは、自分自身を追い込むために、あえて見知らぬ場所を訪れたり、住まいを引っ越したりされてこられました。それは、自由になりたいという渇望からだったのかもしれませんね。
「わたくしにとって新しい住居や旅は、
どんな努力も及ばない、自己改造への方法です。
わたくしの中に眠る未知の因子に
火をともしてくれるような気がいたします。」(p.57)
同じところに留まっていたのでは息が詰まる。自分として成長できず、自分らしく生きられていないと感じる。だから堀さんは、あえて未知への挑戦を続けてこられたのでしょう。
喜多川泰さんの小説に「「また、必ず会おう」と誰もが言った。」(通称「またかな」)というものがあります。主人公の少年は、望んだわけではありませんが、ヒッチハイクをしながら長距離を旅して帰宅することになります。しかしその未知なる経験によって、少年は大きなものを得て、成長していくのです。
堀さんのような生き方が、誰しもできるとは思いません。人にはそれぞれ、与えられた課題があるのですから。
けれども、その生きている環境の中で、どうすることがより自分らしさを発揮することにつながるのか、ということへのヒントを与えられたように思います。
自分の限界を自分で決めないことですね。ただし、そうしなければならないのではなく、そうしたいから、そうすることが自分らしいからという理由で、何かに挑戦し続けること。たとえそれが小さなバンジーであろうと、自分を卑下することなく、その小さなバンジーを飛び続ける。そうすることで、より自分を生かせる環境へと導かれていくのではないか。
99歳の女性がやっていることです。それを知るだけでも、勇気が湧いてくるではありませんか。
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