日本での成功小説の先駆者である犬飼ターボさんの本を読みました。サブタイトルに、「愛 とは 欲求 が 満たさ れ た 喜び の 記憶」とあります。これまでのテーマとは少し違って、「愛」について正面から向き合った小説です。
※犬飼さんの本の一覧は、こちら「犬飼ターボ」のページをご覧ください。
この本は、Kindle版でしか発売されていません。「あとがき」に書かれていますが、4年間かけてやっと書き上げたもの。しかし、出版社の反応があまり良くなくて、紙媒体での出版ができなかったようです。
犬飼さんは、書籍として残したいという希望があるようで、出版してくれる会社を探しているようです。この本もまた、これまでの本と同様に、紙媒体で発行されるといいなと思います。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう・・・と思ったのですが、今回の本は、なかなか引用する箇所の選定が難しかったです。なので、あらすじを簡単に紹介しましょう。
とある国(島)、とある時代、まったくの空想の世界です。そこは、「恐ろしい霧」に包まれようとしていました。その霧は毒で、包まれると死んでしまいます。この世の終わりを彷彿とさせます。
その毒の霧から世界を守ることができるのか? そのポイントは、「愛」です。愛があれば、毒の霧を抑え込むことができる。そう信じられていました。
最初、「愛」とは奉仕する精神であり与えることだと説く教師のところに、若者と娘がやってきます。若者は教師の言葉が信じられません。なぜなら、教師はそう言いながら、物を売ろうとするからです。矛盾しているのではないか? 理屈っぽい若者は、理性で愛を理解しようとします。
一方、娘は、人のオーラを見ることができる能力を持っています。直観で愛を知ろうとします。
その世界では、ある伝説がありました。世界を滅ぼす毒の霧が現れる時、一人の英雄が愛を歌って世界を救うと。
英雄が歌ったという「愛の歌」は、子どもの頃からすべての人が聞かされ、覚え、歌っていました。しかし、毒の霧から世界を救うには、その英雄が歌う必要があるのです。
長老で占いをするオババは、毒の霧の出現を予言していました。そして、世界を救う英雄は、その若者だと言ったのです。
オババはその若者に、愛がわからないと愛の歌は歌えないと言います。そこで、まずは愛のマスターを探せと若者に指示します。
こうして、若者と娘は、愛を教わるために愛のマスターを求める旅に出発するのです。
物語はこうして、若者が少しずつ愛について理解を深めていく様子を描きます。
そうして最終的に、「愛」とは何なのかということを理解します。それが、サブタイトルに示されていた「愛とは欲求が満たされた喜びの記憶」なのです。
そのことについて、「あとがき」にこう書かれています。
「おそらく「 愛 とは 欲求 が 満たさ れ た 喜び の 記憶」 という 定義 に 反対 さ れる 方 も 多い と 思い ます。 私 も 最初 は そんな はず が ない と 何度 も 考え直し まし た が、 考察 し て いけ ば いく ほど「 愛 とは 欲求 が 満たさ れ た 喜び の 記憶」 だ という こと が 鮮明 に なっ て いき まし た。
そして、 人間 が 認知 する 仕組み、 行動 する 仕組み を当てはめ て 考え て いく と、 愛 は 暖か さ、 愛 は 光、 愛 は 思いやる こと、 愛 は 奉仕… といった いろいろ な 本 に 書か れ て いる 定義 が すべて しっくり と 収まり まし た。
この おかげ で、 愛 は 難解 で、 高尚 で、 崇高 な もの で ある という 幻想 から 解放 さ れ まし た。 そして、 誰 でも 再現 が できる よう になり まし た。」(Kindle の位置No.2106-2113)
これが犬飼さんがたどり着いた結論なのでしょうね。
これを読んだ私の感想ですが、これまでの本と違って、やはりわかりにくく、あまり感動が伝わってきませんでした。これは正直な感想です。
しかし、だからと言って、間違っているとは思いません。そうではなく、消化しきれていないという感覚なのです。
このことについて犬飼さんは、すでに予想されていたようで、「あとがき」にはこうあります。
「何度 読みかえ し ても 新しい 発見 が ある よう に、 かなり 深い 心理的 な 解説 や それ を 元 に し た さりげ ない 描写 を 入れ て おき まし た。 愛 とは 何 かが 分かっ て くる ほど、 文章 に 隠れ て いる こと に 気づく でしょ う。
一度 目 は、 愛 の 理解 を 言葉 上 は でき ても 腑 に 落ち て おら ず、 主人公 の 成長 に対して 感情的 に つい て いく のが 難しい と 感じ られる はず です。 しかし 脳 は 寝 て いる 間 も 処理 を 続け て い ます ので、 一 ヶ月 ほど し てから 読む と、 一度 目 よりも 主人公 に 感情移入 が 出 て いる こと に 気付く かも しれ ませ ん。」(Kindle の位置No.2085-2090)-2086)
なかなか読みごたえのある小説だと思います。私も、しばらくしてからまた、読み直してみようと思いました。
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