2019年07月30日

気象予報士のテラさんと、ぶち猫のテル



この本を読もうと思ったきっかけは、「みやちゅう」こと「みやざき中央新聞」の「人生には「晴れ」も「雨」も「風」もある」という社説(2791号 2019年6月3日付け)を読んだからです。水谷編集長が紹介されるこの本の内容に惹かれて、すぐに注文しました。

この社説で水谷編集長は、この本を読みながら「「雨」や「晴れ」、「風」や「雪」など、天気予報には欠かせないこれらの気象用語が、人生のいろんな風景と非常によくマッチすることに気が付いた」と言います。そして、この本の第一章を紹介して、次の言葉で締めくくっています。

天気は、人間の意思では変えられないが、受け止め方は自由だ。そもそも天気には良いも悪いもないはず。「雨」や「晴れ」、「風」や「雪」などの自然現象は解釈ひとつで感じ方も見える風景も違ってくる。

 だったら「追い風」とか「恵みの雨」みたいに、全部前向きに捉えて、自分の人生の風景に取り入れてみよう。



ではさっそく、一部を引用しながら本の内容を紹介しましょう。

まずこの本ですが、作者は志賀内泰弘(しがない・やすひろ)さんです。全6章からなる短編小説集で、それぞれの最初にねこまきさんのマンガが描かれています。また気象予報士の寺尾直樹(てらお・なおき)さんが監修され、天気予報についてのうんちくを示してくださっています。

登場人物は、気象予報士のテラさんと、彼が登場する天気予報番組を楽しみにしている居酒屋「てるてる坊主」のご主人と女将さん、そしてそこに引き取られたぶち猫のテルなど。それぞれでテラさんが語ることわざや名言と出来事が、登場人物の人生に影響を与えます。


No rain, no rainbow」(p.31)

ノー・レイン・ノー・レインボー。日本語で訳すと”雨がなければ虹は見られない”です」(p.31)

これは、社説でも紹介された第1章の物語に登場する名言ことわざです。ハワイの言葉ですが、ザーッと降るスコールの後、よく虹が見られるそうです。

震災のために家族を失い、住み慣れた土地から離れ、ついには頼みの夫も亡くなる。シングルマザーとなって懸命に働く真知子が主人公です。しかし、仕事は上手く行かず、それでも契約を取らなければと雨の日にずぶ濡れになりながら居酒屋にたどり着き、この言葉を聞いたのです。

けれども、この言葉を聞いても真知子の心は晴れません。にっちもさっちもいかない現実を生きている真知子にとって、気休めに過ぎないと感じたのです。しかし、ここから物語が急展開します。(どう展開するかは、本をお読みくださいね。)

俺らは、あんたの人生まで変えてやることはできねぇ。お日様にもなれねぇ。きっと今は土砂降りの中にいるんだろう。でもな、傘の一つくれぇは差し掛けてやることはできる。どうでぇ、甘えてみないかい。」(p.39)

永遠に雨が続くわけではないのです。だから、希望を捨てずにいること。どこかで誰かが必ず、救いの手を差し伸べてくれますから。


「人間って、つくづく愚かな生き物ねぇ」

 だってそうでしょ。お店に来るどのお客さんも、後悔と取り越し苦労の話ばっかりしているんだもの。ばっかじゃないのって思う。
 だって、過ぎたことは変えられないじゃない。まだ来てもいない明日のこと考えても仕方ないじゃない。
 でも、人間ってそういう動物らしい。あたいネコで良かったって、ホントに思うわ。
」(p.82)

第3章の冒頭にあるぶち猫テルの独白です。たしかにネコからすれば、人間のやってることってバカバカしく感じるかもしれませんね。

樹静かならんと欲すれども風止まず」(p.86)

テラさんは、「詩経」の言葉を取り上げます。人はいろいろなことを後悔し、普段は忘れているようでも何かの拍子に思い出し、心が揺れ動きます。そうなると、静めようとしても静まらず、心がざわつくのです。樹木は静かにしていようとしていても、風が吹いて葉がざわめき、止めることはできないのですね。

この章では、居酒屋の主人、勝男の人生が語られます。後悔に後悔を重ねてきた人生。ふだん明るくふるまっていても、人にはそれぞれ影の部分があるのです。

テラさんは番組の中で、自分の人生も後悔の連続だったと語ります。そして、この日紹介した名言ことわざには続きがあると言います。

『樹静かならんと欲すれども風止まず』の後には続きの言葉があります。『子養はんと欲して親待たず』といいます。ことわざの、『孝行したい時分に親はなし』と同じ意味です。つまり、後悔しないように親孝行しなさいよ。という教えですね。」(p.109)

「後悔先に立たず」とも言いますが、やっておけば良かったという後悔は、ずっと心をざわつかせます。だから、今、できることを懸命にやることが大切なのです。後悔しないように。

でも、すでに起ってしまったことは、後悔し続けるしかないのでしょうか? テラさんは言います。

でも、私はこう思うのです。過ぎたことは仕方がない。犯した罪は戻らない。それに甘んじて心の苦しみを背負って生きるしかない。だからこそ、今日という日を、後悔しないように生きよう。もう明日からは、後悔のない生き方をしよう。それこそが、恩を受けた人たちに対する、恩返しなのではないかと。」(p.110)

過去を取り戻すことはできません。いくら悔やんでも変えられません。今をどう生きるかだけが、私たちにできることです。
そうであれば、いつまでも悔やみ続ける生き方と、二度の同じことはすまいと決意して前向きに生きるのと、どっちが良いのでしょうか? 恩を受けた人、迷惑をかけた人は、どっちの生き方をしてくれと望むでしょうか?


どこかほのぼのとする短編小説ですが、生き方に深く切り込む鋭さがあります。
サブタイトルには「ココロがパーッと晴れる「いい話」」とありますが、読み終えたときの爽やかさは格別ですね。

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posted by 幸せ実践塾・塾長の赤木 at 16:20 | Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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