福島正伸(ふくしま・まさのぶ)さんの本を読みました。
コンサルタントであり、人災育成、組織活性化、新規事業立ち上げの専門家である福島さんは、「夢(ドリーム)プラン・プレゼンテーション(略称:ドリプラ)」の創設者でもあります。10分間で人々に共感されるプレゼンを競うこの大会は、今や海外にも広がっています。
この共感されるプレゼンのノウハウが、この本には書かれています。これからは他人の助けを借りながら大きなことをしていく時代ですから、共感してもらえることが重要になってきます。そのポイントを知りたくて、この本を読みました。
まあそれもありますが、久しぶりに何か福島さんの本を読みたくなったんですよね。ネットで探したところ、これくらいしか見当たらなかったので、これを選んだというこでもあります。
※福島さんの本などの一覧は、こちら「福島正伸」のページをご覧ください。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「つまり、プレゼンテーションの成功とは、相手が共感して一緒に行動するようになることです。それは人の心を動かすことです。プレゼンテーションの目的は、人の心を動かすことによって、自分に足りないものを集めることにあるのです。」(p.5)
重要なのは、相手が共感して、自主的に応援しようという気持ちにさせることなのですね。
「人の心が動くためには、説得や説明ではなく、感動と共感が必要になります。」(p.6)
いくら論理的に理性に訴えても人は動きません。感動しなければ、人は自主的に動かないのです。そして自主的に動かない限り、何らかの見返りを求められることになるでしょう。逆に自主的に動く人は、助けるという行為だけで満足するのです。
その感動させるプレゼンの特徴は、次の3つだと言います。
「(1)プレゼンテーションの時間は10分間
(2)説明禁止、最高の価値を「物語」で伝える
(3)「あきらめない理由」がある」(p.6)
聞き手が飽きずに集中して聞いていられるのは10分程度。内容を説明するのではなく、それが実現するとどうなるのかという価値を物語で伝えることで、感動を与える。自分に能力があるかどうか、できるかどうかではなく、やりたいという情熱と、その情熱が消えることがない証拠を提示するのです。
「共感者とは、「損か、得か」、あるいは「うまくいくか、いかないか」で判断するのではなく、どんなに実現が難しい夢であったとしても、プレゼンター(発表者)とともに力を合わせて困難に挑んでいくかけがえのない存在です。
ですから、「うまくいきそうだから支援しよう」という人は、共感者ではありません。どんなにうまくいきそうにないことであったとしても、一緒にうまくいくまで苦労することができるのが共感者なのです。」(p.19)
どんなに素晴らしい夢を描いても、その夢が素晴らしいから支援しようとする人は、共感者ではないのですね。共感者でなければ、上手くいきそうにないと判断すると、支援をやめてしまうでしょう。だから重要なのは、プレゼンターと一緒にやりたいと思ってくれる共感者を得ることなのです。
「人は説得されると思った時、言われたことの欠点を探して反論するようになります。なぜなら、そもそも説得は、相手を否定することになることが多いからです。」(p.24)
たしかに、説得するとは、考え方を変えさせることですからね。誰でも変えさせられそうになると、抵抗するものです。
「危機感によって人が動くことがあります。危機感は最も人を動かす力を持っているからです。
しかし危機感で人を動かしたとしても、それが長続きすることはないでしょう。なぜなら、危機感で動かされた人々は、次第に疲れ果てていくからです。」(p.25)
脅したり、不安を煽ったりするやり方は、一時的には成功しても、長続きしないと言うのですね。同様に、同情を買うやり方も一時的だと福島さんは言います。
セールスマンは、不安を煽ったり泣き落としで物を買わせようとすることがありますが、このやり方は買い手を幸せにはしないのです。
夢の共感には最高の価値の疑似体験が重要だ、と福島さんは言います。私たちは映画やドラマ、アニメなどを観て感動しますが、それは疑似体験しているのです。さも自分がそこにいるかのように感動の物語を体験する。そのために、画像や音楽、語りで伝えるのです。
「そのためには、まず夢が実現した時の光景をはっきりイメージすることが必要になります。夢が実現した時に、社会がどのように変わるのか、誰がどのように幸せになるのかを、物語で伝えるのです。つまり、最も感動的なシーンを物語として描き切り、その場面を誰もが今自分がそこで体験しているかのように、五感に訴えて伝えるのです。」(p.29)
「そして、その世界観には必ず、どのように人が幸せになるのかという「価値」が必要です。つまり、「価値」を明確にするとは、人が幸せになる最高の物語を描ききるということです。言い換えると、プレゼンテーションで伝えたいことを伝えるということは、最も伝えたい「価値」以外をできる限り排除していくということでもあります。伝えたいことは絞り込むほど伝わるようになります。」(p.31)
そもそも10分間という短い時間ですから、あれもこれもと詰め込むと、説明だけに終わってしまいます。福島さんは1つに絞り込むのが理想と言います。
「その方法は、さもプレゼンター自身がそこにいるかのように、オリジナルの画像と音楽、そして語りで伝えるということです。つまり、ワクワクする最高の一日を過ごすシーン、商品を購入して幸せになっている象徴的なシーンなどを、誰が見ても、たとえ子どもたちが見たとしてもわかるように伝えるのです。」(p.33)
画像や音楽にオリジナルを使うというのは、著作権の関係もあります。したがって、著作権フリーのものがあれば、それも使用できます。しかし、細部にこだわれば、特に画像はオリジナルにならざるを得ないように思います。
※使い方の詳細は、ここに引用しませんので本をご覧ください。
次はあきらめない理由です。
「それは、どんなにうまくいかなくても、どんなに苦しくても、夢が実現するまであきらめない自分にとって最も重要な理由です。
そのためには、プレゼンターの人生観が実現したい夢とリンクしていることが必要になります。」(p.43)
自分の人生の中で、何がなんでもこれをやり抜かずにはおかないという理由を生む体験があったはずです。そうでなければ、強い動機になりませんから。それが自分の人生観になっているはず。それを表現するのですね。
「つまり、プレゼンターの「夢」である「人を幸せにする価値」と「あきらめない理由」がつながっていて、まさしく人生を賭けていることがわかると、見ている人々は心を奪われ、無条件で応援したくなるのです。
その意味で、プレゼンターと支援者の心をつなぐのが「あきらめない理由」と言ってもいいでしょう。」(p.44)
プレゼンターと同じか、それに準じるくらい熱い想いで活動してくれる支援者は、何があってもぜったいにあきらめないというプレゼンターの姿勢、そしてそのプレゼンターの人生から生まれた人生観に共感するのです。
「また、自分の過去を語ることは、相手を信頼していることの意思表明でもあります。人間関係では、自分が相手を信頼するほど相手も自分を信頼してくれるようになります。」(p.52)
あきらめない理由を示す時に自分の過去を語ることが、信頼関係を築く上でも役に立つのですね。
「信頼を得るためには、何をやってきたか以上に、どのような考え方、生き方をしているかが重要です。そしてプレゼンテーションでは、その人の生き方が何気ない言葉や表情から勝手に伝わってしまいます。」(p.163)
付け焼き刃的にプレゼンだけ上手にやろうとしてもダメなのですね。普段のその人の生き様が大きく物を言います。
「プレゼンテーションでは、画像だけではなくプレゼンターの心の中まで見られてしまいます。「人前に立つ」ということは、自分のすべてをさらけ出すこと、といっても過言ではないでしょう。」(p.164)
自分のすべてを見せることになるし、そうしなければ共感は得られません。
福島さんは、わからないことは「わからない」と言って、他人のアドバイスを求めるようにと言います。しかし、その場合でも注意すべきことがあります。
「どれだけ的確なアドバイスをもらったとしても、他人の中に自分の答えがあるわけではありません。あくまでも、参考にするだけです。どのようなアドバイスも一度は自分に落とし込み、自分が一歩踏み出すきっかけにすればいいのです。」(p.178 - 179)
他人のアドバイスを鵜呑みにしないということですね。
「また、新しいことは、必ずと言っていいほど賛否両論になります。さらに、多くの人に相談するほど、それぞれの意見はバラバラでかえって迷ってしまうこともあるでしょう。
しかし、答えは、プレゼンター自身の中にあります。最後の判断は、プレゼンターが自分で決めるものです。」(p.179)
「他人が自分の人生を決めることはできません。自分の人生を決めることができるのは自分自身しかいないのです。」(p.179)
最後に決めるのは自分であり、自分が責任を持たなければならないということです。
「プレゼンテーションでは、正解を探すよりも自分がワクワクするものを創るようにしましょう。つまり、何かに迷ったら、自分がワクワクする方を選択すればいいのです。」(p.180)
「人生に正解はありません。自分自身の感性を信じ、それを基準に判断して選んだものが正解です。最後の選択基準は、自分自身の感性なのです。」
「どの道を進めばいいのか迷ったら、楽にできる道を選択するよりも、苦労しても行きたい道を選択しましょう。」(p.180)
「理屈で考えるよりも、感じること、感性を大切にします。うまく言葉で説明できなくてもかまいません。私利私欲を越えた純粋な感覚で判断して、これが正しいと思ったら、その直感を信じることです。正解は自分の中以外にありません。ですから、自分の中の感覚を信じることが大切です。」(p.181)
絶対的な正解というものはありませんからね。やってみなければわからないことが多いのです。
その時、理性で判断しようとすれば、安全な道を選びがちです。できるかどうかより、やりたいかどうか。そういう基準で感覚的に選択せよと福島さんは言うのです。
最後に、福島さん自身の夢を、次のように語っています。
「私は、すべての人の夢が叶う社会を創りたいと思っています。
それは競争ではなく、共存共栄の社会です。勝ち負けではなく、誰もが輝く社会です。落ちこぼれはつくらない、落ちこぼれはいりません。誰もがつながり、誰もが夢でワクワクしている社会。そんな社会ができれば、孤独死や戦争といった人間社会の多くの問題が解決できるかもしれません。
そんな社会を、まずこの日本という国から実現させたいと思います。」(p.189)
これが、ガンによる死の淵から生還した、小柄だけれどもエネルギッシュな男の夢です。
私は、福島さんのセミナーに参加して、直接お会いしたことがあります。第一印象は小柄で、目立たない感じでした。しかし、ひとたび前に立って話を始められると、ピンと伸びた背筋と胸を張った姿勢が、実際以上に福島さんの姿を大きく印象づけてくれました。そして、話される一言一言に惹き込まれていったのです。
だから、また福島さんの本を読みたくなるのです。今がどうであろうと関係なく夢を持って一歩を踏み出せ、と福島さんはいつも励ましてくれます。そんな福島さんのことが、私は大好きなのですね。
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