ひすいこたろうさんの最新刊を読みました。今回は、居酒屋甲子園などで有名な大嶋啓介(おおしま・けいすけ)さんとの共著になります。
大嶋さんの本は、以前に「てっぺん!の朝礼」「僕たちの“夢のつかみ方”をすべて語ろう!」を紹介しています。それに関連して、「自分で考え、自分で決める」や「人生には失敗も成功もありません」という記事を書いていますので、ぜひそちらもご覧ください。ひすいさんの本は、著者別まとめの「ひすいこたろう」にあります。
今回の本は、「日本古来 最強の引き寄せ 予祝のススメ」とサブタイトルにあるように、「予祝」による「引き寄せ」を紹介するものです。「予祝」というのは「前祝い」のこと。日本では伝統的に、前祝いが行われてきました。花見や盆踊りも、秋の豊作に対する予祝だとか。まだその結果が起こる前に祝うことで、その現実を引き寄せるのです。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「予祝のポイントはなにを言うかではなく、未来に待っている喜びを想像し、先に味わうことにあります。」(p.39)
言葉(理性)よりも感情を重視するということですね。
ここでは「予祝インタビュー」という未来にそれが実現した状況にあると仮定して、気持ちや成功のポイントなどをインタビューして答えるという方法を紹介しています。そこでは、「聞かれたら、即座に出まかせで答えなければいけない」というルールがあります。ノリで適当に答えて盛り上がる。その感情が重要なのです。
「行動は大事です。でも、その前に、どんな心の状態で行動するのかが、もっと大事だったんです。」(p.66)
ここでも、どんな感情を感じているかが重要だというわけです。もし不安から駆り立てられるように行動してしまったなら、それは逆効果になるのです。
「問題が起きたことが問題ではなく、
問題をどう考えるかがほんとうの問題なのです。
問題の先に、チャンスを見いだす。それこそ喜びの先取り、予祝です。
道を阻むすべての「壁」は、ワクワクした瞬間に、
あなたを新しい時空へ導く「扉」となるのです。」(p.120)
トヨタからカーラジオの20%コストダウンという要求を突きつけられた松下通信工業(現パナソニック)は、会社存続にも影響しかねない危機的な状況に陥りました。その時、松下幸之助氏は、トヨタの立場で考えてみさせることで、会議の雰囲気を一変させます。トヨタの要求はたしかに無茶だが、それはトヨタが日本の産業の発展、ひいては日本の発展のために世界と戦っているためだから、その戦いに自分たちも協力しようと呼びかけたのです。
このことによって松下通工はコストダウンに成功し、カーラジオのトップメーカーになっていきます。ピンチをチャンスに変えたのです。
「そのなかで、りお君は難病で生まれてきた理由をこう言っているのです。
「病気で生まれてきたから、ぼくはいろいろな体験ができる。ママもいろいろな体験ができる。だからママは喜んでいいよ」
喘息になったときにはこう言ったそうです。
「ママ、僕が喘息になったのは、喘息を治すのが面白いからだよ。」」(p.133)
「自分をえらんで生まれてきたよ」にあるいんやくりお君の言葉を紹介しています。ひすいさんは、「思いどおりにならないからこそ、面白いのです。」と言います。まさにその通りですね。高杉晋作氏が辞世の句で言ったように、どう面白くするかは、自分の考え方、見方次第なのです。
「手紙を書くことで、意識をしっかり向けると、感謝があふれます。それをしっかり感じることで変容が起こります。
さらに、その思いをシェアするなかで、人は自然にその感謝の恩にむくいたくなるんです。誰かを心から喜ばせたいと思うのです。
そのとき、感謝のエネルギーが誰かを喜ばせたいという「決意」に変わるのです。」(p.195)
感謝の手紙を書くことを勧めています。特に親への感謝ですね。書いて言葉にすることが、より効果を高めます。内観(ないかん)という手法がありますが、小さいころから順に、してもらったことを思い出していくことで、自然と感謝の気持ちが湧いてくる方法です。同様の効果があるように思います。
そして、感謝の気持ちが湧いてきたら、それが他の人を喜ばせたいという情熱になり、行動につながっていくのです。この感謝のエネルギーは、創造のための大きなエネルギーになる。そのことは、「神との対話」でも語られていました。
しかしここまで、どうやって現実を変えるか、思い通りのことを引き寄せるか、ということばかりが書かれていて、少し物足りなく感じていました。所詮は引き寄せ本の1つに過ぎないのではないかと。
しかし、さすがにひすいさんです。ここからさらに深い境地に導いてくれました。
「起きてほしいことがベストではないんです。
起きたことがベストなのです。
自分は、ベストを尽くし、その結果は天の采配にお任せすればいい。
そうすれば、プロセスを思い切り楽しめます。
そのとき、あなたの心は晴れ上がり、予祝は次々に開花していくことでしょう。
苦しいとき、心から喜べないことは、当然あります。それはそれでいいんです。
でも、いつの日か、この苦しみがベストな体験に変わると、人生を信頼することはできます。
それが、人生を面白がるってことなんです。
喜びが人を大きくし、哀しみが人を強くするのです。」(p.246)
ここまで予祝によって、大会に優勝したなどの事例がたくさん紹介されています。では、相手も予祝をしてたらどうなるのでしょう?
どんなに予祝をしたって、思い通りにならないことはあるはずなのです。
「思い通り」がベストだと考えているから、思い通りにすることにこだわってしまうでしょう。しかし、本当にベストなのは何か、自分にはわからないのです。人生は、もっと素晴らしいことを用意してくれているかもしれないのですから。
だから、人生を信頼することが重要なのですね。人生を信頼すれば、起こったことがベストだと思うことができます。そう考えていれば、結果に執着することなく、プロセスを楽しめるのです。
「結果がすべてなのではなく、そこを目指すことで、どんな人になれたのか、そこが一番大事なのです。
ほんとうの結果とは勝ち負けではないんです。
あなたの愛が深まることがほんとうの結果です。
ほんとうの奇跡とは、外側で起きるものではなく、
あなたの内側(心のなか)で起きるものなのです。
進化とは、目に見える、すごい結果を出すことではなく、すごい誰かになることでもなく、愛が深まり、君が君らしくなることなんです。」(p.249)
結果は単に結果です。それよりも、その結果を目指す過程(プロセス)を通じて、自分が進化すること、より自分らしい自分になること、愛が深まることが、もっと素晴らしいことなのですね。
「このとき、すねてしまったアマテラスは、なにをやっても出て来てくれない。
そこで、困った神様たちがやったことはなにか?
なんと、岩戸の前で楽しく踊り、お祭りをしたのです。
すると、その楽しそうな、笑い声につられて、絶対に出て来なかったアマテラスが岩戸から顔を出したのです。
その瞬間、皆の顔(面)がいっせいに光で白くなりました。それが「面白い」という言葉の語源になり、そのとき、神々は手(た)を伸ばして(のし)、喜びを表現しました。
それが「たのしい」の語源になったのだとか。
光が閉ざされ世界が闇夜になったときに、日本人は、踊り、楽しみ、喜びのなかで、この世界に光を取り戻したのです。
日本の夜明けは、闇に包まれた世界を、
面白がり、盛り上がり、喜ぶことから始まったのです。」(p.267 - 268)
古事記にある岩戸神話です。宴会の真ん中で踊り狂ったのは天鈿女命(あまのうずめのみこと)。あまりに踊り狂ったために服ははだけ、半裸状態になったとか。その姿を見て、神々はさらに盛り上がり、やんややんやの喝采を贈ったそうです。
私の田舎では石見神楽(いわみかぐら)というのがあって、その演目の1つに岩戸(いわと)があります。こちらの記事で、そのストーリーと神楽のダイジェスト版動画を紹介していますので、ご覧になってください。
「面白い」と「たのしい」という言葉の語源がこの通りなのかどうかはわかりませんが、日本の神話はとても重要なことを教えてくれます。ピンチの時には深刻になるのではなく、楽しんで、面白がって、切り抜けたらいいのだと。
「この本を読み終えたいま、あなたがいますぐやるべきことは、
いま、一番したいことをすることです。
わかる範囲でOK。
できないことはしなくていいし、
無理なくできることのなかで、いま、一番したいことをすればいいんです。」(p.290 - 291)
おまけの実話だそうです。ひすいさんの知人のカウンセラー、ケルマディックさんが、いつか本当にやりたいことをやりたいと願いつつも何もできていないというクライアントに、「4つのルール」を伝えて、その通りにやってもらったという話です。
その「4つのルール」とは、「いま、一番したいことをしてください」「わからないことは、しなくて良いです」「できないことは、しなくて良いです」「無理はしなくて良いです!」の4つです。思いついたやりたいことが、ルール2〜4で否定されるならやらずに、その次に「一番したいこと」を探していきます。
このクライアントさんは、15番目に「美味しいコーヒーが飲みたい」という欲求にたどり着きました。そしてすぐにそれをやり、「いま、一番したいことをしている」という感慨に浸ったのです。そんなことを続けているうちに、いろいろな縁があって、最初に言った「一番やりたいこと」をやっている自分になれたのだとか。
重要なのは、否定する気持ちが湧いてくるものはとりあえず脇に置いて、できることの中で「一番やりたいこと」をさっさとやることなのです。その時、「一番やりたいことをやっている」という思いに浸ることなのです。これなら簡単で、誰でもできますよね?
バシャールもそう言っています。今、ワクワクすることをやりなさいと。重要度とか関係ないのです。ともかく、「今」、「やりたい」と感じたことをやる。それだけでいいのです。
この他に、「まなゆい」「未来レター」「予祝マンダラ」など、様々な手法が紹介してあります。それらは、今の状態が必ずしも「悪い」ことではなく、ピンチはチャンスに転換されるのだということを、実践的に試してみることができる手法だと思います。詳細はぜひ、本を読んでみてくださいね。
私は、上記に書いたように、単に「思い通りにする」ということではなく、「思い通り」以上の素晴らしいことが、この人生ではすでに起こりつつあるのだという視点に共感します。だから、安心していていいんです。どんなピンチであっても。
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