2018年08月15日

なでしこ歴史物語



博多の歴女、白駒妃登美(しらこま・ひとみ)さんの本を読みました。今年、白駒さんが主催する兄貴を訪ねるバリ島ツアーでお会いさせていただいたので、とても親しみを感じる著者の1人です。今回は、女性の視点から日本の歴史上の女性にフォーカスした内容です。

面白いのは、歴史(History)は彼の(His)物語(Story)だから、基本的には男性中心なのだと言われているところ。指摘されてみると、たしかにそうですね。そんな中でも、女性が表舞台に登場することはままあります。しかし白駒さんは、表舞台に登場する女性というより、女性らしい活躍をした女性に魅力を感じ、それを「なでしこ」と呼んで取り上げています。


ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。

この時、私は気づきました。人間には二種類の悩みがあることに。一つは”過去”に対する後悔。もう一つは”未来”への不安です。この二つに縛られている限り悩みは尽きず、”今”は輝きません。子規や先人たちがそうであったように。過去も未来も手放して、いつでも”今”を懸命に生きる。そうすれば、たとえ後悔するような過去でも、その過去のおかげで今があると感謝できます。未来だって、天がベストなものを用意してくれていると、安心できるはずです。”今”に生きること、そして人と自分を比べたり、人からどう思われているかを気にしたりせずに、”ここ”に集中すること。それが、命を輝かせることにつながるのです。」(p.6)

白駒さんは、子宮頸ガンが肺に転移し、医者からもさじを投げられた状態になったことがありました。その時、脊椎カリエスで苦しんだ正岡子規の姿が目に浮かび、子規のように死の瞬間まで平然と生きようと腹をくくったそうです。それによって心が落ち着き、不安なく夜も眠れるようになったとか。

仏教ではこれを「前後際断」と言います。過去がどうであれ未来がどうであれ、それは完璧なのだと信じて受け入れ、今ここに意識を集中する。そういう生き方をすれば、過去に感謝できるようになると白駒さんは言います。その過去は歴史もそうで、そういう目で歴史を見るなら、歴史が輝き出すのだと。ここで紹介する内容は、白駒さんがそういう目で見て、輝いて見えたエピソードなのですね。


幸せになりたいと願う女性の多くは「こんな相手なら」という枠を作り、条件に適った人を探し続ける傾向があります。
 でも残念ですが、それでは相手に依存しながら幸せをつかむようなもの。どんなに大恋愛の末に結ばれたカップルでも、互いの依存心が強ければ、どうしても相手のあら探しになっていくものです。
 きっとお市の方には分かっていたんですね。幸せは、自分自身が生み出すもの、もらうことより与えることのほうが尊いと。
」(p.27)

織田信長の妹、お市の方は、時代に翻弄された薄幸な女性というイメージもありますが、白駒さんは別の見方をされます。起きる出来事を受け入れ、その中で自分らしく積極的に生きようとした。そういう強さがあり、傍目とは別に幸せな人生ではなかったかと。


いったい、慶はどんな思いで彼らを庇護(ひご)したのでしょうか。彼女の心意気を示す、こんな言葉が残っています。
 「田地田畑を買いこんでも、うちの場合は人任せにしてただ寝かせておくだけでしょ。それではお金に申しわけなかと思うとよ。そんなお金があれば、うちはこれと見込んだ人たちに使うてみたか。その人たちがうちのお金で、何かうちにできん仕事ばしてくれる。それを思うと楽しかとよ。だいいち世間さまへの恩返しにもなるでっしょ」
」(p.42)

嬉野茶(うれしのちゃ)の輸出で莫大な富を手に入れた大浦慶は、その私財で幕末の志士たちを支援したそうです。しかし明治になると、詐欺にひかかって財産を失います。けれども慶は、出世したかつての志士たちに何一つ要求せず、恩に着せることもなかったとか。

不遇な最後とも言えますが、白駒さんは、慶はきっと晴れやかな気持ちではなかったかと想像します。支援した志士たちの活躍によって、明治維新が成し遂げられたのですから。


でも、成長するに伴い、この祖母の言葉には、もう一つの意味があることに気づきました。「どんな時でも、お天道様が見守ってくれている。だから安心して自分の道を歩んでいきなさい」という励ましの意味です。そのことに気づいてから、私は人知を超えた大いなる存在に、なんとなく信頼を寄せるようになりました。それからというもの、たとえ思いどおりにいかなくても、「天が導いてくれるから大丈夫」と、いつも前向きで、安心していられるようになったんですね。」(p.99)

NHK連続テレビ小説「あさが来た」のモデル、広岡浅子は七転び八起きを超える「九転十起生」を座右の銘として生き、襲いかかるピンチを乗り越えてきた人です。彼女の人生を紹介しながら白駒さんは、ご自身のお祖母様の「どんな時もお天道様が見ているからね」という言葉にまつわるエピソードを紹介されます。

白駒さんは、「大丈夫、思い通りにはいっていないけど、きっとうまくはいっているはず」と思うことの重要性を説きます。人が思う「思い通り」は、必ずしも最善ではありません。それよりも大いなるものにお任せして、最善のことが行われているのだと信じる。浅子の生き方は、そういうものだったのだろうと白駒さんは言うのです。


篤姫は大奥の女性を率いて城内を掃き清め、磨き上げた状態で新政府軍に引き渡しました。「敵に明け渡すのだから、汚れた状態でもいいじゃないか」とは考えないのです。私はそこに、日本の一時代を牽引した徳川家の人間としての矜持(きょうじ)を、感じずにはいられません。
 私が歴史物語に触れるたびに思うのは、”美しい生き方”を遺した日本人がいかに多いかということ。美しい生き方を遺すことは、莫大な資産や強大な組織を遺すよりも、価値が高いと思います。
」(p.113)

私もNHK大河ドラマ「篤姫」を観て感動しました。私の名前と同じ漢字ということや、主演の宮崎あおいさんが魅力的だということもあって、このドラマは毎回欠かさず観ました。

白駒さんも紹介しているように、このドラマでは架空の養育係の老女の心に残るセリフがあります。「女の道は一本道にございます。定めに背き、引き返すは恥にございます−−」今、ここに、こういう状態でいるということは、定め(運命)なのです。それに抗うのではなく、受け入れて、その中で自分の最善を尽くす。美しく生きる。そういう生き方を遺すことは、内村鑑三氏も言うように、「後世への最大遺物」なのだと思います。


「人には、命よりも大事なものがある」というトメさんの真意を、私は「命に代えても守りたいものを持ちなさい」というメッセージと受け止めています。命に代えてでも守りたいものがあれば、人はそのために命を使うのですから、どうでもいいことには無駄死(むだじに)できなくなります。そして他の人たちに対しても、「大切なもののために命を使わせてあげたい」という思いが、自然とわき起こってくるはずです。
 つまり、命に代えてでも守りたいと思えるぐらい大切なものを持つことが、自分の命も、ひいては他者の命も慈しむことにつながるのです。
」(p.121)

特攻隊で知られる知覧で、陸軍の指定食堂「富屋食堂」を営んでいた鳥濱(とりはま)トメは、こんな言葉を遺していたそうです。「人には命よりも大事なものがある。それは徳を貫くこと−−」白駒さんはこのメッセージを、上記のように読み解かれたのです。

私も知覧へ行ったのですが、知らなくて、特攻平和会館しか見ませんでした。近くにホタル館富屋食堂があって、そちらにはトメさんに託された遺書などが展示してあるのだそうです。白駒さんは、ぜひ両方へ行くように勧めておられます。


男性は、家族や国を守る。そして女性は、子どもを生み、男性をも育む。そうした役割分担を、年齢は違えども晋作と望東尼が行い、そして互いがその役割を見事に演じきったという歴史物語に、私は感動します。」(p.181)

男女平等だからと言って、女性が男性のようにふるまうことが良いのではなく、性差があるのだと白駒さんは言います。それぞれの性にあった生き方があり、それを全うすることで補完し合えるのだと。高杉晋作を育んだ野村望東尼、望東尼を慕いその危機を救った晋作。その生き方は、理想の男女のあり方ではないかと白駒さんは感じたのです。

私も、男性と女性は違いがあると思っています。男女平等だから、同じ仕事をすべきとは思いません。ただそこに、男性はかくあるべし、女性はかくあるべしという、価値観の一方的な押しつけがあってはならないと思います。その人の生き方は、その人が自由に決める。そうする中で、ハーモニーが生まれると思うのです。


都育ちで貴族社会しか知らなかった源氏が、田舎に来て、初めて農業や漁業を営む人々に出会ったのです。源氏は親友に告げます。「貴族は天皇に仕え、彼らは自然に仕えている。仕える相手が違うだけで、職業や役割に上下貴賤はないのだ」と。」(p.211)

源氏物語の光源氏が都落ちした「須磨」の巻を紹介しながら、作者の紫式部も田舎で暮らしたのだろうと白駒さんは想像します。紫式部も、田舎で不遇な時を過ごした。そうであれば、未来に希望が持てると言います。

だって、自分にとっては不本意であったり、不遇に思えたりする境遇は、きっと未来の自分に必要だから、わざわざ来てくれたのです。後は受けて立てばいい。」(p.211)

起こる出来事はすべて完璧で最善です。たとえそれが「思い通り」でなかったとしても。ガンが肺に転移して、もう人生も終わりと感じたご自身の体験を重ねながら、白駒さんはこのように言われるのです。


これまでの歴史では、女性の方が男性に比べて自由が少なかったと思います。それでけに、理不尽なことを押し付けられたり、思い通りにならないことが、女性の方が多かったでしょう。そんな女性にスポットを当てることで、このような素敵な物語がたくさん発掘されました。そこには、ただ不遇に耐えただけでなく、希望を見出し、どうにもならないことは受け入れた上で自分を輝かせた女性がいました。

今は、それに比べたら自由度が高まりました。男性ができることで女性ができないことは、もうわずかしかない時代です。しかし、自由が広まることによって、かえって輝きを失ってしまうこともあるかもしれませんね。そんな時代だからこそ、こういう本が役立つのではないかと思います。

思い通りにならないとしても、上手く行っている。そう見定めて安心して生きる。無意味な抵抗をするのではなく、自分を輝かせる美しい生き方をする。そういう生き方の素晴らしさが、この本から伝わるのではないかと思います。

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posted by 幸せ実践塾・塾長の赤木 at 14:40 | Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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