これも「読書のすすめ」で買ってきた本です。ぽつんと置いてあったマンガなのですが、とても気になったもので。原案は南たかゆき氏、漫画はみやたけし氏となっています。
最後のページにみや氏は、こう書いていました。
「静岡の藤枝を基点に活躍する、岡村くんと居酒屋甲子園に多大な協力を頂いたことを、ここにお礼いたします。
漫画の仕事が上手くいかなかった時…おかむらで酒の美味しさ、人の優しさ、うわべじゃない暖かさを教えられ、そして元気をもらいました。」(P.218)
これを読んで思い当たりました。これは以前に紹介した「看板のない居酒屋」にあった居酒屋「岡むら」をモチーフにしたマンガのようです。
週刊漫画TIMESに7ページの読み切りとして連載された作品の中から、選りすぐったものをまとめたのがこの本になるのだと思います。全26話あって、それぞれの間には居酒屋のような写真が挿入されています。おそらくそれは、「岡むら」の写真ではないかと思われます。
どの話も、読むと心がほっこりするような内容です。あり得ないようなドラマもありますが、それはマンガの世界ですからご愛嬌。こんな小料理屋が本当にあったら、通いたいなぁと感じます。
重いテーマはそれほどなく、また特定の価値観を押し付けるような話もありません。「こんなことがありましたが、あなたはどう思いますか?」そう問いかけてくるような感じです。
1つだけ引用しましょう。第9話「ブロッコリーヒット」からです。草野球チームに所属する雨森(アマモリ)は、みんなからバカにされていました。2試合続けて雨で中止となった時、おまえが雨男だからというわけです。
雨森も抵抗しません。自分はブロッコリーと同じで、いつも脇役なのだからと。野球をやっていても主力ではないし、何か行事があって雨が降れば自分のせいにされる。自分は脇役だから、仕方ないんだとあきらめているのです。
小料理屋の女将みな子は、雨森に言います。ブロッコリーは脇役じゃないと。主役にもなれる食材なのだと言って、彼にブロッコリーの料理を食べてもらいます。すると、それまでのイメージとはまったく違うブロッコリーの美味しさを感じて、雨森は驚くのです。
みな子は、その様子を見てこう言います。
「はい…
ヨーロッパ原産で
向こうでは
”木立花やさい”
”子持ち花やさい”と
いわれていて
華のある
主役の野菜
なんです…
自分の物語の中では
誰でも自分が主役
−−−−なんです!」(p.72)
脇役だけのどうでもよい人間なんて、存在しないのですね。その人の人生においては、いつもその人が主役です。自分のことを自分であきらめたら、自分様がかわいそうです。
ほのぼのとした人の温かさが伝わってくるようなマンガです。時にはこういうマンガを読んで、ほっこりするのもいいかもしれません。

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