「みやざき中央新聞」で紹介していた本を読みました。2709号(2017年9月4日)の社説(魂の編集長・水谷謹人さん)で、「今週もわくわく感に心躍らせよう」というタイトルです。
社説は、最近どんなことにわくわくしたかと問いかけて、この本の紹介に入ります。作者はヴィカス・スワラップ氏、翻訳は子安亜弥さんです。
ではさっそく、一部を引用しながら・・・と言いたいところですが、今回は概略を紹介するだけにしておきます。
舞台はインド、主人公のトーマスはウエイターです。物語は、いきなりトーマスが逮捕された場面から始まります。トーマスは、クイズ・ミリオネアのようなクイズ番組に出場して13問全問正解し、十億ルピーの賞金を手にするはずでした。しかし番組側は、トーマスに賞金を渡したくないために、彼が不正をしたことにしたかったのです。
絶体絶命のピンチのとき、突然、女性弁護士が現れてトーマスを救います。弁護士はまず、すべてを正直に話してほしいと言います。どうしてトーマスが、13問をすべて正解することができたのか? 本当に不正を働いていないのか? それを知らなければ弁護ができないからと。
しかし、弁護士など雇えないほど貧乏なトーマスを、どうしてこの弁護士は助けようとしたのか? ひょっとしたら敵のスパイで、トーマスを安心させて洗いざらい白状させる戦術なのでは? トーマスは迷います。
トーマスは、ポケットの1ルピーコインを取り出して放り上げます。表が出たら正直にすべてを話す。幸運の1ルピーに運命を預けたのです。
こうしてトーマスは、女性弁護士にすべてを話すことにしました。しかし、それは長い長い物語でした。トーマスは、すべての問の答を人生経験を通じて知っていたからなのです。トーマスの人生にどんなことが起きたのか、それをすべて話しながら、どうして問題に答えられたかを、1問ずつ明らかにしていったのです。
トーマスが語るこれまでの経験の中に、インドの抱える問題、いえ、人が抱える様々な問題が現れます。裏切り、暴行、憎しみ、悲しみ、殺人、レイプ、愛情・・・。トーマスに共感したり、起こる問題を自分の人生と重ねたりしながら、物語にぐいぐいと引き込まれていきます。
社説では、こう言っています。「と、ここまで読んで約3分。皆さんの中にはわくわくしてきた人もいるのではないだろうか。何歳になってもその「わくわく感」が大切だ。」わくわくする時、脳内物質が出てきて幸福感を感じるようになっているそうです。
そして、このわくわく感が美容にも影響すると言います。「えらく老けた二十代もいれば、驚くほど若々しいお年寄りもいる。その違いはその「わくわく感」ではないだろうか。」
この社説を読んで、思わずこの小説を買いました。すでに絶版で中古しか無かったのですが、1円で売り出していました。送料の方が高かったのですけどね。
しかし、その後で問題が発生しました。みんなが注文しようとしたために、アマゾンの販売価格が急騰し、数千円の値段になってしまったのです。そのため、そんな高い本を勧めるのかと苦情が出てきたのだとか。
まあ、それだけ「みやざき中央新聞」の媒体としての効果、記事の人に行動を起こさせる力が高いという証明でもありますけどね。
これを読み終えて、たしかにワクワクする冒険小説的な内容で、十分に満足できました。なかなか手に入らないかもしれませんが、もし機会があれば読んでみてください。
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