これはどこで買った本か覚えていないのですが、ひょっとしたら「読書のすすめ」さんへ行った時、購入したのかもしれません。Facebookで、喜多川さんの本で小説でないのがあると聞いて、それでネットで注文したのかもしれません。
著者は著名な5人の方々。「読書のすすめ」の清水克衛(しみず・かつよし)さん、西田塾の西田文郎(にしだ・ふみお)さん、学習塾「聡明舎」を運営し作家でもある喜多川泰(きたがわ・やすし)さん、「ちょっとアホ!理論」の著者の出路雅明(でみち・まさあき)さん、北海道で宇宙開発に取り組んでおられる植松努(うえまつ・つとむ)さんです。
それぞれの方が、ほんのテーマである逆境をどう乗り越えるのか、どう乗り越えてきたのか、そもそも逆境とは何か、というような内容を語っています。
この本は、「本調子U」とタイトルの前に付けられていて、「本調子」シリーズの2冊目になります。1冊目は「強運の持ち主になる読書道」というタイトルで、清水さんを始め、これまた著名な方々が執筆されています。私はこのシリーズを知らなかったので、すぐにこの1冊目も買い求めました。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「彼らは皆、ユニークで変な人ばっかりです(笑)。
しかし,彼らの共通した考えは、「壁にぶち当たるのが当たり前なんだ」と早く気づいてほしいということなのです。
そうすれば「安心」という心の位置を早くつかむことができてしまうからです。」(p.2)
「まえがき」の中で清水さんは、このように言って各執筆者を紹介します。どんな話になるのか、楽しみです。
「自分に起きたピンチを他人はけっして解決してくれません。
それどころか、自分自身の中に答えは元々あったりするものです。そう信じてみてください。」(清水p.22)
自分のピンチは、自分が解決するもの。そしてその答えは自分の中にある。まずそう信じてかかることが大切なのですね。
「ですから、不安って当たり前のことだったんですね。肝心なのは、不安な気持ちを嫌わないことだと思います。
むしろ不安な気持ちは良きことなんだと思ったほうが成長が早いような気すらいたします。」(清水p.27)
釈迦が「無常」という言葉を遺したように、世の中は安定していないのが当たり前なのだと言います。問題は、その不安定な状態を嫌うかどうかなのです。
「成功者と言われる皆様は、逆境や苦しい環境に置かれても、その苦しみを苦しみと感じず、むしろそれをワクワク楽しんでしまいエネルギーに変える能力をお持ちなのです。」(西田p.66)
ここで西田さんは、エジソン氏の言葉を紹介しています。有名な「天才とは1%の・・・」ではない別の言葉です。
「ほとんどすべての人は、もうこれ以上アイディアを考えるのは不可能だという所まで行きつき、そこでやる気をなくしてしまう。いよいよこれからだというのに−−」(西田p.66 - 67)
エジソン氏がいかに逆境を楽しんでいたかがわかりますよね。
「重要なのは子供も大人も脳に成功を信じる力をつけることです。」(西田p.72)
成功を信じる力をつけるために、座禅や滝行よりも近道があると言います。
「それはズバリ「脳を肯定的に錯覚させる」問いかけを行うことです。
人間の脳はすべての問いかけに応えてくるのです。嫌だなと脳に問いかければ嫌だという応えを出し、楽しいなと問いかければ楽しいと応えてくるのです。」(西田p.72)
西田さんは、遅く帰宅した時に奥様が怒っていても、「ありがたい」というキーワードを使って、「ありがたい、私のことを心から心配してくれて」と心の中で言うのだそうです。これが否定的な状況を肯定的な錯覚に切り替える問いかけだと言います。
つらいことも苦しいことも、肯定的なキーワードで脳を錯覚させる。こうすることで、苦しいことを苦しいと気づかない「精神力=成信力」の持ち主になれると言います。
「もし、今あなたがとてつもなく苦しい環境にいたとしたら、それは本気になるチャンスであるということです。
なぜなら、甘えが許されない状態というのは「あきらめた状態」でもあるからです。
一度どん底に落ちた人間ほど強い人はいません。
どん底を経験すると、後がなく他人をあてにせず、がむしゃらに生きるしかないからです。」(西田p.79)
順境によって成功するのではなく、「本気」になるかどうかが重要なのだと言います。松下幸之助氏も、健康、学歴、お金の3つがなかったことが成功の要因だと言われたそうですが、それはそのことによって本気になれたからだと西田さんは言います。逆境は本気にさせてくれるのですね。
「あなたも今日から逆境を楽しみ、逆境こそ自分の生きる道と思い、人生のハードルをクリアして下さい。
それには「この世はディズニーランドだ!」と思うことです。遊園地は、オバケ屋敷やジェットコースターという恐怖を楽しむ所です。
人生も同じです。あなたも今日からすべての不安を楽しんで、人生最大のチャンスの「逆境」を生かしましょう。」(西田p.115)
ピンチこそがチャンス。だから、ピンチを楽しめと西田さんは言います。この世は遊ぶところ。遊園地を楽しむように、人生を楽しむことが大切なのですね。
「このとき初めて、「当時の自分にとって都合が悪かった結果」が「失敗」ではなく、「成幸のためにどうしても必要な材料」だったということが分かります。
おまけに、自分で考える能力や、あきらめない姿勢、学ぶ姿勢、謙虚な態度、素直さ、仲間との協力、そして感動・感謝を学ぶ機会だって手に入るのです。
もし、初めから「成功した」と喜べる結果だったとしたら、これらすべてに関して手に入れる機会を失っていたということになります。」(喜多川p.124)
成功の反対が失敗ではないのです。成功の反対は挑戦しないこと。挑戦する限り、その結果が不都合なものであっても、自分にとって良いものが得られます。むしろ、不都合な結果が出た方が、より良いものが得られると言います。
「思うようにいかない出来事は、自分の人生をより楽しく感動的にする、退屈しのぎのための道具でしかない」(喜多川p.126)
これは喜多川さんのお父様の言葉だそうです。喜多川さんは、この言葉に、次のようなご自分の言葉を加えるようになったと言います。
「今の逆境は、将来の自分にとってどうしても必要な幸せの種だ。それは僕の人生を自分が思っている以上にドラマティックにする新たな展開のスタートの合図だ」(喜多川p.126 - 127)
逆境によって人生は感動的で幸せなものになる。逆境はそのドラマの開始を知らせてくれる合図なのです。
「ある学校のひとりの先生が生徒に言ってしまった失言に、日本全国が過剰反応する世の中は、すべての学校の先生の挑戦する勇気を奪い取ってしまいます。」(喜多川p.145)
子どもたちの成長のためには、失敗を恐れずに挑戦する勇気を持たせることが重要です。その子どもたちを指導する先生たちが、世間からのバッシングによって挑戦できなくなっている。おかしな話ですよね。
「大人は、子供たちにとって皆「先生」です。
その大人たちが、ひとりの人間の持つ可能性に目覚めたとき、それを見ている子供たちは自分にも世界を動かす力があることに気づきます。」(喜多川p.157)
子どもたちの可能性を広げるには、まずは大人であるわたしたちが、夢を持って挑戦する生き方をしなければなりません。大人たちが手本を示すのです。
「夢を持って生きる人は、必ず逆境に出会います。
そういうときこそ笑って、自分の辞書を見直してみましょう。
そしてもう一歩前に出るのです。」(喜多川p.157 - 158)
常識とは自分が決めるものだと喜多川さんは言います。「失敗」をどう定義するのか。これも自分が決めることです。世間の考え方を押し付けられる必要はないのです。その言葉に自分がどう意味づけをしているのか、本当にそれでいいのか、見直すようにと言うのです。
「たくさんの人から「ありがとう」と言ってもらえることが夢を実現するということなのです。
あなたが夢をあきらめてしまうと、この人たちは手に入れられたはずの感動や経験を手にすることができなくなります。
つまり、あなたは自分のためではなく、あなたが夢を実現することによって幸せになるたくさんの人たちのために成幸しなければならないのです。」(喜多川p.160)
私が夢を諦めれば、夢を実現したあかつきに感動し、喜んでくれるはずの人々から、その機会を奪うことになる。なんという発想なのでしょう。でも、たしかにそういうことですよね。
「はっきり言って私は「つらくて逆境から逃げ出した」としか思えてなりません。
それなのに多くの気づきや学びを得たし、大きく成長でき心から感謝しています。
そう考えると逆境とは乗り越えることができなくても、そのつらさを味わうことができるだけでも充分なのかもしれませんね。」(出路p.175)
部下との軋轢から退職を選んだ出路さん。ただ、すぐには辞められなくて、半年間は誠実に仕事をされたそうです。その経験から、逆境に耐えられなくて逃げてもいいと言います。ただし、そのつらさに不平不満を言い続けるのか、それとも気づきを得られたことに感謝して前向きに生きるのか、それによって違いが出てくるのだと。
「私がこのプチ逆境をいかに乗り越えたかということを一言で言うなら、自分の気持ちを「正直」に伝えた! ということになるでしょう。」(出路p.178)
自分の気持ちに対して正直であること。それが逆境を乗り越えるポイントだと言います。正直に伝えることは、時として恥ずかしかったり惨めだったりします。それでも、相手に対して誠実であろうとするとき、それを乗り越えて自分の気持ちを伝えなければならないのですね。
「ある意味、これが究極の答えになるかもしれませんが逆境の真っ只中だからって暗くなっていても何のプラスもないと思うのです。
そんなときこそ明るい笑顔でいるから逆境を乗り越えられるのではないかと思います。」(出路p.193)
開き直ることを勧めています。これも見方によれば逃げているようにも見えますが、開き直ってスッキリすれば、逆境に立ち向かう強さが得られると出路さんは言います。
「だから私はつらいときには「時間が解決してくれる」と自分に言い聞かせています。
まさにこれが「長い目で見ると!」っていう逆境を忘れちゃう作戦なんです。」(出路p.210)
逆境を乗り越えられなくても、時間が解決すると思えば気が軽くなります。今の逆境を見つめるのではなく、中長期的に考えれば、仕事の失敗も、パートナーからフラれることも、いずれ忘れてしまうようなことです。そんなに気にすることでもないなという気持ちで、今を生きることですね。
「不景気とは、価値観の変化です。市場のニーズの大幅な変化です。そこでは、変化を追い越したものだけが生き残ります。
今僕らがすべきは、維持や延命ではありません。「変化」です。」(植松p.223 - 224)
この世は常に変化しているのですから、景気も変化し続けます。不況は、価値観が変化したからだと植松さんは言います。それなのに、古い価値観を維持しようとすることが無理なのです。
しかし私たちは、不安になると、つい守りに入ってしまいます。今までの安定を手放したくなくて、しがみついてしまうのです。でもそれを変えていかなくてはなりません。
「すべての人が、自分の心の中に閉じこめられている、幼児の記憶を呼び覚まし、「どーせ無理」という言葉を使うのをやめ、「だったらこうしてみたら」と提案し続ければ、必ず社会は変わります。」(植松p.285)
私たちは失敗を怖れて挑戦することをやめてしまいます。ですから変化していくことができません。赤ちゃんにはそういう不安はなかったのに、大人たちからダメ出しされることによって、挑戦しない生き方を身に着けてしまうのです。
「いま、世界は逆境です。つらいことや悲しいことがいっぱいです。
でもそのつらさや悲しさを知り、怒ることができれば、解決すべき問題を見出せるんです。それは、新しい仕事の種なんです。だから、種だらけです。」(植松p.285 - 286)
植松さんの言う「怒り」は、この状況を何とかしなければおかないと発奮することだと思います。誰もやらないなら自分がやる。そういう決意です。
それぞれの執筆者ごとに、捉え方や表現に違いがありますが、共通していることがあります。それは、逆境は悪いことではなく、むしろ自分のためになることだという視点です。
ですから、不安になって逆境を避けようとする必要はないのです。逆境になってしまったらなってしまったで、それを淡々と受け入れ、そこからどうするかと考える。そこを出発点として生きる決意をすることなのだと思います。すべては、自分から始まるのですね。
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