2017年07月23日

督促OL 修行日記



これもどこで紹介されていたのか忘れたのですが、興味深い本を読みました。著者は榎本まみさん4コマ漫画のブログを書かれていて、そこから本の出版につながったようです。

なお、アマゾンのリンクは文庫本ですが、私が買ったのは単行本です。2012年の発売ですから、随分と前の本でしたね。


タイトルにある「督促」というのは、借金の返済などを督促する仕事のことです。榎本さんは、金融機関に就職してすぐに支払い延滞顧客への督促を行うコールセンターに配属されます。性格的にも合わない仕事で苦しみますが、その中で自分なりの方法を見つけ、それを公表してこられたのです。

それが今では年間2000億円の債権を回収するなど、指導的な立場になられたとか。自分に合っているから上達したのではなく、その逆で合っていないからこそ上達できたという、興味深い内容です。


ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。

そうか、人間先に謝られてしまうと、その上さらに怒りにくいのかもしれない。
 お客さまは、督促の電話をかけてくる私たちに、怒られたり嫌なことを言われたりするんじゃないかと警戒心を抱いている、だから怒られる前に怒鳴る。私たちを怒ることで、自分の身を守ろうとしているんだ。
」(p.99)

怒られれば惨めになったり、腹立たしくなったりするものですが、榎本さんは相手の立場に立ってこういう気づきを得ておられる。そこが素晴らしいと思います。

「攻撃は最大の防御なり」という言葉もありますが、攻撃するのは恐れているからです。だから自分を守ろうとして相手を攻撃する。そういうものです。


榎本さんは、お客様を大きく4つのタイプに分類します。感情のプラスとマイナス、論理のプラスとマイナス、この組み合わせです。それによって、対応を分ければいいのだと気づいたそうです。

感情タイプはまずガス抜き。怒っているお客さまはひたすら怒ってもらうし、泣いてしまうお客さまは相手が泣きやむのを待つ。」(p.107)

感情的になるときは、それをしっかり吐き出させてあげることが重要なのですね。そうせずに否定したりすると、かえって火に油を注ぐことになるのだとか。

論理的なタイプは、自分のプライドを守ろうとして理論武装しているのだと言います。ですから上から目線は禁物で、プライトを満たしてやることが重要なのだとか。


でもなんで相手から怒鳴られたり、罵倒されたりすると傷つくんだろうか。そんなの当たり前かな? でも世の中にはののしられて喜んじゃう趣味の人たちだっているわけだし(!?)、きっとお客さまの言葉に傷つかなくても平気になる方法があるはずだ、と私は考えた。
(中略)
 それは、人間には自尊心があるからだ。
 人間は誰でも自尊心を持っている。ぞんざいに扱われたり軽んじらられたりすると、それが傷ついてしまう。お客さまにひどいことを言われると自尊心が傷つく。お礼を言われないと自尊心が満たされない。だからこの仕事は辛いんだ。私の痛みの源になっているのは自尊心、つまりプライドだ。
」(p.139)

当たり前のことのように思えることを、「なぜ?」と考えてみるところは素晴らしいと思います。人は、そうやって成長して行くのですから。

ただ、ここで言うところの「自尊心」は、心理学で言うものは違います。本物の自尊心ではありません。

本当の自尊心がないから、他人の評価を得ようとするのです。他人から評価されないと、自分に価値があると思えないのですね。プライドが高い人というのは、他人から高く評価されたくてたまらない(=心理学的には「自尊心がない」)人なのです。


こんなふうに心や体を病む要素がいっぱいのコールセンターでは、働いているだけでサバイバルだ。自分で自分を守るしかない。

 そこで私が考え出したのが、「私は謝罪するプロだ」作戦だった。
」(p.144)

つまり、追い立てられて受け身で仕事をするのではなく、プロとしての自覚を持って、積極的に仕事に取り組むということです。謝ることでお金を稼ぐプロ。自分をそう定義することで、積極的に謝罪することができるのです。


お客さまに1回怒鳴られると1ポイントとしてカウントし、10ポイント溜まるとお菓子を買ったりジュースを買ったり、小さなご褒美を自分に与える。」(p.148)

ポイント制にすることで、お客さんからの否定的な投げかけを、逆の肯定的なものに変えるのですね。他に「悪口コレクション」というものも、榎本さんは紹介されています。お客さんから投げかけられる様々な悪口を集めて楽しむのです。こういう発想も面白いです。


私たちが相手に嫌われても、怒鳴られても、包丁を突きつけられても、督促しなければならないのは、お客さまの信用を守ることができるから。お客さまの信用を守るのはもしかしたら命を守ることにもなるかもしれないしね」(p.204 - 205)

榎本さんの先輩の言葉です。お客さんが倒れて意識を失った時、救急車を呼んでも来てくれなかったことがあったそうです。それはそのお客さんが、医療費などを踏み倒す常習者だったから。信用をなくせば、命さえも救えなくなる可能性があるのです。


お金返さなかったらどうなるのかな、という不安。ホントはお金を返さなきゃいけないんだけど返してない、という罪悪感。それを守るために、お客さまは私たちを怒鳴る。

 悪口系だめんずの彼も自分に自信がない人だったのだ。自分の自信のなさを補うために相手に悪口を言う。ああそうか、ダメなのは自分じゃないんだ、と気付いた時、パリン、と洗脳が解けた気がした。それがわかってから、私は数年ひっかかり続けたそのタイプにやっと別れを告げることができた。
」(p.216)

自分にやましいところがあって自信がないから、相手を攻撃するのです。怒るのも批判非難するのも、すべてそうです。

それを見抜けば、怒られたり悪口を言われたりしても、平気でいられます。惨めになる必要がありませんから。ダメなのは相手であって自分じゃない。そういう気付きが重要なのですね。そうやって自分が変われば、状況(出来事)も変わってきます。


古戦場のようなコールセンターで働くうちに、いつの間にか自分の体にはたくさんの言葉の刃が突き刺さっていた。でも、その一本を引き抜くと、それは自分を傷つける凶器ではなく剣になった。その剣を振り回すと、また私を突き刺そうと飛んでくるお客さまの言葉の矢を今度は跳ね返すことができた。それから、仲間を狙って振り下ろされる刃からも仲間を守ることができるようになった。そうか、武器は私の身の中に刺さっていたのだ。」(p.233)

たくさん傷ついてきたからこそ、その経験から武器を手にしたのです。その武器によって、自分を守るばかりでなく、仲間を守ることができるようになったのです。

自分に合わないから、苦手だから・・・。それはやらないことの理由にはならないのですね。やってみれば、真剣に取り組んでみれば、そこに生きる道があるのかもしれない。そんなふうに思いました。


私には、統合失調症で今も部屋から出られない状態の、ひとつ年下の弟がいます。もし、あなたが外に出られるようになって、仕事をする時に、心と体を守るために少しでもこの本が役立てばと思いました。」(p.236)

榎本さんは、この本を3人の人に贈りたいと書かれています。1人は、かつてぜんぜん督促ができなかった自分自身へ。もう1人は、今一緒に働いているオペレーターさんや同僚たち。そして3人目が弟さんなのだそうです。

自分が苦しんできたことは、無駄にはなりません。その苦しみは、他人を助け、癒す力になるのです。私もこの本が、今、苦しんでいる多くの人の力になればと思いました。

督促OL 修行日記
 
posted by 幸せ実践塾・塾長の赤木 at 12:00 | Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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