2017年07月08日
キミを救う言葉
ひすいこたろうさんの本を読みました。柴田エリーさんとの共著です。すでに文庫本になっています。
読み始めて、どこかで読んだことがあるなと気づきました。この本をリメイクしたのが「絶望は神さまからの贈りもの」だったのです。どおりで読んだことあるような話が続くわけです。
前の本ではエリーさんが何者かよくわからなかったのですが、こちらには書いてありました。独立したばっかりの編集者さん。エリーさんからこの本の企画があった時、ひすいさんは半分書くなら引き受ける、という条件を出したのだとか。だから共著になっているのですね。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。ただし、「絶望は・・・」で引用した部分は除外します。
「いきなりですが、ズバリ言いましょう。今日を境に、あなたの人生から、「不幸」はなくなります!
この塾では、偉人たちの人生を題材に、これでもかと、あなたにあることを叩き込みます。それは、「ピンチ」は「チャンス」であるということです。」(p.6 - 7)
冒頭でこのように高らかに宣言します。そしてその意味がわかるのは、読み終えたときです。「そんなことがあるのか?」という疑問が氷解し、「そうだよなぁ」という気持ちに変わっているのです。
「人は”ア・ハード・ディズ・ナイト”(悲しみ)の中で本気になり、
人は”ア・ハード・ディズ・ナイト”(絶望)の中で絆を結び、
人は”ア・ハード・ディズ・ナイト”(逆境)の中で進化するのです。」(p.22 - 23)
これはジョン・レノン氏のことを取り上げた章の最後に書かれています。もちろんジョン氏もひどい逆境をくぐり抜けたのですが、ポール・マッカートニー氏はもちろん、ビートルズ全体がそうだったのです。
そのことを知ってこの歌を聴くのと、知らずに聴くのとでは、受けとめ方がまったく違ってくるでしょうね。ビートルズのヒットまでにどれほど逆境があったのか、ぜひ読んでほしいと思います。
「誰かの喜びのために心をこめたとき、
「流れ」が生まれるのです!
誰かの喜びのために一心不乱に打ち込んだとき、
「夢ってかなうじゃん!」(p.43)
今や絵本界のベストセラー作家であるのぶみさんですが、そのデビューまでは山ほどの試練がありました。書いても書いても出版社から断られる日々。書いた原稿が自分の身長を超えるくらいになった時、やっと出版が叶いました。
その絵本が大ヒットして絵本作家になったものの、その後は鳴かず飛ばず。次にヒットしたのは、なんと70冊目でした。
ヒットした絵本に共通していたことは、身近な誰かを喜ばせるために、という思いだったのです。1冊目は彼女を喜ばせるために、そして70冊目は彼女との間に生まれた子どもを喜ばせるために。
「しかし、財布を見たら、マドンナの全財産はなんとたった35ドル! いまの日本円に換算すると約3000円です。19歳の女の子が親元を離れてひとりで暮らすのに所持金が3000円とは無茶にもほどがあります。
さすがにお金がなくては生活ができません。ここでマドンナはあきらめ……ま、せん!」(p.60)
子どものころから夢だったダンサーになるために、マドンナさんは奨学金を得て通っていた大学を中退します。親の大反対を押し切って。そしてニューヨークへ行くのです。
ニューヨークへ着いたマドンナは、タクシーに乗り、「この街の真ん中で降ろしてちょうだい!」と言ったとか。そして到着した時、こう宣言したのです。
「私はこの世界で神よりも有名になる!」(p.61)
何の根拠もなく、マドンナこう宣言しました。宣言することで、背水の陣を敷いたのでしょう。
しかし、レッスンに通いながらアルバイトをする生活は、食べるものにも事欠いたようです。落ちているマクドナルドの袋から、フレンチフライの食べ残しを得ることも学んだようです。
こういう背景があって、大スターのマドンナさんが存在するのですね。
「誰が空を飛ぶ夢を引き継ぐ?
「誰の手に?」
「僕らがリリエンタールのあと継ぎになろう。ふたりで空に舞い上がるんだ」
兄弟は顔を見合わせ、そう心に誓ったのです。
とはいえ、ふたりは航空に関して専門家でもなく、科学者でもない。学歴だってありません。ふたりとも高校中退です。資金だってない。政府から研究費をもらえるような立場でもない。
できない理由、夢をあきらめる理由はいくらでもありました。逆にできる理由はひとつもなかった。」(p.73)
7年間飛行の研究を続けていたオットー・リリエンタール氏がグライダーで墜落死しました。その時、兄弟は誓ったのです。いつか必ず自分たちの夢を成し遂げようと。
それから、研究の日々が始まりました。関係しそうな新聞記事を切り抜き、本を読みました。しかし、その途中でも挫折しそうになります。イギリスのグライダー研究家、パーシー・ピルチャー氏が墜落死したからです。
しかしその後、重要なことに気づきます。それは飛行中の安定がないことが問題なのだ、ということです。そしてその安定を得るためのヒントが、ライト兄弟の仕事である自転車にあることがわかったのです。
「妻と飛行機の両方は養えない」という理由で、兄弟とも独身を貫きました。そういう一途な思いがあったお陰で、現代のように自由に世界中を行き来できる飛行機社会が作られたのです。
「そして、アンネは思い直しました。つらいことばかり考えても仕方がない。つらいのはみんな同じ。
だったら、私は楽しいことを見つける達人になろう!
そして、それを日記に書きつづろう!
アンネは、苦しい生活の中で起こった、ほんのちょっとのうれしい出来事や明るい未来を創造しては、日記帳に記していきました。」(p.108)
「アンネの日記」で有名なアンネ・フランクさんの話です。屋根裏部屋などにずっと隠れ続ける日々を綴った日記が、世界的なベストセラーになりました。しかしアンネさんは、15歳でナチスに捕らえられ、翌年亡くなっています。自由を得ることはなかったのです。
では、彼女の人生は無駄だったのでしょうか? そんなことはありません。多くの人が彼女の日記に感動し、生きる勇気を得たのです。あのネルソン・マンデラ氏もそうでした。
「マンデラの27年間に及ぶ獄中生活を支えたひとつに、アンネ・フランクの存在があります。
「アンネ・フランクの日記は、以前にも読んだことがあったけれど、牢獄の中で読むのはまったく違う印象だった。アンネの日記を読み、自分たちのいる状況と重ね合わせ、13歳の女の子が行動できるなら、自分たちにもできるはずだと勇気つけられた」
肉体は死んでも、希望は死なない。アンネの希望は、マンデラにしっかり受け継がれていたのです。」(p.116)
この部分を読んだ時、涙がこぼれて仕方ありませんでした。想いのタスキはつながる。人はこのように、想いのタスキをつなぎながら、生きることができるのです。
「「汚い顔をしていますけど、勘弁してあげてくださいね」
すると、母親は大笑いしながらチャップリンを抱きしめてキスしたそうです。
恐ろしく伝染力が強い病気にかかっているのに、何のためらいもなくです。
キスしたあと、母親のハンナはこう言いました。
「どんなに汚くてもいいわよ。本当にかわいいお前なんだから」」(p.130)
貧民院で、母親と別れて暮らすようになったチャップリン氏の子どものころの話です。伝染病のタムシに感染し、隔離病棟にいたチャップリン氏を母親が面会に来たときのエピソードです。
たとえどんな状態であっても無条件に愛してくれる存在がある。そのことが生きる勇気と希望を与えてくれます。チャップリン氏の笑いの背後には、人々の悲しさがあります。悲しさがあるからこそ、笑えるのです。
「これでもか、これでもかと頑張って、一歩踏み込んで、それでも粘ってもうひと頑張りして、もう駄目だと思ってもズカッと踏み込んで、そうしていると突き抜けるんだ」(p.174)
映画「影武者」で名を馳せた黒澤明監督の話です。
黒澤監督の映画はお金がかかりすぎるため、一時期、映画を作れなかったのです。「影武者」のときもそうでした。
しかし、そこに助け舟が現れます。それがコッポラ監督とジョージ・ルーカス監督でした。2人の支援で20世紀フォックス社から50万ドルの資金が得られ、「影武者」の撮影が始まったのです。
「命をなめんなよ!
そう言われている気がしました。
家を失っても、仕事を失っても、そして家族を失っても、それでもなお復活できる。立ち上がれる力が命にはあるんだ。
命の力をなめんなよ!
そう言われている気がしました。」(p.222)
3.11の被害で家や仕事や家族を失った人々が大勢います。岩手県山田町でひすいさんが出会った人々は、つらそうな素振りを見せることなく、明るく振る舞っていたそうです。
しかし、その背後には間違いなく悲しさがありました。悲しんでばかりいても、落ち込んでばかりいても仕方がない。そうやって乗り越えようとしている人々がいたのです。
「あの世に持って行けるのはただひとつ。
本気で生きた思い出だけです。
本気でやり切った思い出こそ、心のダイヤモンドになります。」(p.223)
人はいつか必ず死にます。その時には、持っているすべてを手放すことになるのです。
だからこそ、今を輝かせるしかありません。それがどんな状況であろうと関係なく、今、手にある札で勝負するしかないのです。
できるかどうかなど誰にもわかりません。重要なのはやるかどうか。やってダメなら、それでいいではありませんか。倒れようと前に進もうとする。その一歩が人生を輝かせるのです。
どのエピソードも、私たちに勇気と希望を与えてくれます。最初に書かれていた言葉を覚えていますか?
「「ピンチ」は「チャンス」である」ということ。「偉人ほど逆境の連続だった」のです。
そして、どんな逆境にも負けなかった。たとえその人生で花が開かなかったとしても、その想いのバトンは、必ず後世に受け継がれます。
だから人生を諦めないで。逆境にあるなら、今こそチャンスだと思って、ほくそ笑んでほしい。そういうことを、この本を読みながら思いました。
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