先日、喜多川泰さんの講演会へ行き、書店「読書のすすめ」で行われたサイン会へも参加しました。その時、喜多川さんが松尾健史(まつお・たけし)さんの本を紹介されていました。
松尾さんのことは全く知らなかったですが、喜多川さんがそこまで勧められるならと思い、買ってみることにしました。
本の帯には、作家・喜多川泰さんの推薦文(?)として、こう書かれていました。「「突き抜けろ!に心震える、圧倒的爽快感!」
この小説の特異な点は、主人公が複数いることです。同じ時期の登場人物を、それぞれを主人公にした物語と言えばよいのでしょうか。表現方法はわかりませんが、短編のようなそれぞれの登場人物を主人公にしたような物語が、他の短編の物語と関連しています。
ですから、誰が本当の主人公なのかということはよくわからないのですが、それぞれにそれぞれの人生があり、その中でそれぞれが「突き抜ける!」ということをテーマにして、自分の人生を戦っているように感じました。
それではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。ただ、これは小説ということもあるし、まとまった文でメッセージを伝えられそうなところも少なかったので、引用はごく一部にします。
「知っていると見えるけど、知らないと見えないことっていうの、世の中にはあるじゃん。ウミガメ一つをとってもそうだよね。これから俺がウミガメを見たときにはさ、今までよりもたくさんのことを読み取ることができると思うんだ。一つの情報から、より多くより深く読み取れることを、俺は『知性』って言うと思ってるんだ。」(p.112)
ハワイの海でサーフボードに乗って波を待っていた時、ウミガメに出会って乗ってみたくなったのだそうです。でも、人間がウミガメに触れたら人間の匂いが残るので、そのウミガメは群れからはじき出されるのだとか。
そういうことを知ることが、実は人生や社会にとって、重要な判断をする上でのポイントになる。だから、どんな出来事が自分に役立つかは、何とも言えないのです。だから、何でもないがしろにすることなく、今の人生を受け入れて、そこから学ぶことが重要なのでしょうね。
「突き抜ける!(ブレイクスルー)」というのは自分の限界を超えるということです。ちょっとしたことでもかまわないけど、自分が「ここが限界だ」と勝手に決めたことを、「そうじゃないんじゃないの?」と思って超えてみる。そうやって突き抜ける経験を増やすことで、自分の変化が加速するのだろうと思います。
この小説は、それぞれの立場で課題を抱えながら、それを突き抜けようとする人々の物語と言えるでしょう。どこにでもいる普通の若者が、それぞれの人生の中で、自分の限界に挑戦する。こういう話を読むと、自分ももっと突き抜けなくちゃなぁと思うのです。

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