ネットで話題になっていた本を読みました。著者は主婦のこだまさん。同人誌即売会の「文学フリマ」に参加し、同人誌「なし水」に載せたエッセイが好評で、単行本化された小説です。
タイトルがあまりに過激だということで、ネット上で話題になっていました。何となく読んでみたくなって、取り寄せてみたのです。
ではさっそく、一部を引用しながら・・・と言いたかったのですが、この小説では特に引用したいフレーズはありません。簡単にあらすじを紹介しましょう。
主人公は北海道の田舎で育ち、大学進学のために東北地方の地方都市に出てきました。誰とも上手く交われない性格は、母親に拒否され続けてこられたから、と想像されます。その母親や、閉塞的な田舎から出たくて、一人暮らしができる進学先を見つけたのです。
住むことに決めたのは、まるで学生寮のような下宿。室内にキッチンがあるものの、トイレと風呂は共同。ちょっと珍しい形態ですね。まあ最近は、下宿のようなアパートそのものが少なくなりましたからね。
そこで、1年先輩の気さくな男性と出会います。そしていつしか男女の関係に。ところが、タイトルにもあるように、どうやっても挿入できないのだそうです。彼の息子がデカすぎるのか、それとも主人公に問題があるのか。
その後、2人は結婚することになります。しかし、ローションを使ったりしても、まともに性交できません。夫は風俗へ通って性欲を満たし、妻は出会い系のブログで知り合った不特定多数の男性と関係を持ちます。そういう相手だと、普通に性交できるのが不思議なところ。
主人公も夫も、学校の教師として働くようになります。そこでは学級崩壊という問題と出会います。様々な葛藤を抱えて、「死」すら考えるように・・・。
また、そもそも挿入できないのですから、夫婦に子どもができるはずもありません。諦めかけていたころ、ふと、妊活をしようという気持ちになります。しかしその努力は・・・。
これは主人公の波乱万丈の人生です。少しコミカルでもあり、また深刻な悩みでもあります。そして、誰もが数人の登場人物のいずれかの思いに、多かれ少なかれ共感することでしょう。
そして主人公が、悩みながらも成長していく様がよく描かれていると思います。他の人の考え方に共感できるようになっていくのです。
タイトルがセンセーショナルなだけに、逆に反感を覚えるという人もいるかもしれません。ただ、夫婦間の性の悩みを赤裸々に語るということは、これまでにあまりなかったことです。そして、多くの人が夫婦間の性の問題で悩んでいたりもするのです。
主人公が様々な経験によって傷つきながらも、新たな視点を見出していく。そういう中に、自分自身の姿を見つけられるのではないでしょうか。
「かくあるべし」という価値観の押しつけではなく、こんな人がいますと素っ裸でさらけ出した感じの小説。そういう無防備な中に、何かしら感じることがあるように思うのです。

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