2017年04月06日
お金のいらない国
ブログ「いばや通信」で坂爪圭吾さんが紹介されていた本を読みました。坂爪さんは「わたり文庫」と名付けて、自分がお金を払ってでも読ませたい本の循環を提唱されています。この本も、その一環として紹介されたものです。
「こちらの本は、数日前に東京の恵比寿でお会いした麗しき女性M様から「これって、愛だと思うんです」という言葉と共に託された稀有なる一冊になります。わたしも読みました。愛だ…愛た…非常に素晴らしい全人類必読の一冊だと思いました。」
坂爪さんがそこまで絶賛されるなら、読まないわけにはいきません。それで、一時帰国に合わせて購入してみたというわけです。作者は長島龍人(ながしま・りゅうじん)さん。私の友人にも龍人(りゅうじん)という名前の人がいるので、何だか親近感をいだきました。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
この本は物語になっています。主人公の普通の日本人男性が、ある日、まったく別の世界に入り込んでしまいます。そこでは、人々はとても親切で日本語が通じるのですが、1つだけでまったく違うことがありました。それは、「お金がない」ということです。
「要するに、このお金というものは、ものの価値をみんなが共通して認識するためのモノサシでしかないわけです。ですから、皆がそのまま仕事を続けていけば社会は回っていくはずなんですよ。」(p.35)
その国の住人は、主人公の男性にこう言います。つまり、私たちの社会からお金がなくなったとしても、みんなが仕事を続けるだけで社会は回っていくはずだと言うのです。
考えてみれば、その通りだろうと思います。お金に価値があるのではなく、物やサービスに価値があるのですから。それを生み出す仕事を続ける限り、お金を介さなくても困らないはずです。
それに、今の私たちの社会では、そのお金を管理するための仕事があります。銀行とか保険とか。そういう仕事は、お金がなくなれば不要になります。つまりその仕事は、社会を豊かにすることには、何も貢献していないということになります。
「今のあなたの国でも、お金に関わる仕事をしている人が全員、その仕事をやめてしまったとしても、みんな十分に暮らして行けるはずなんです。そんな、言ってみればムダなことに時間や労力を使っていたにもかかわらず、あなた方は今までやってこられたわけですから。」(p.35)
まさにそういうことになりますね。お金を管理する仕事がなくなり、そのための労力を他に使えるのだとしたら、もっと豊かになれると思います。
「仕事の目的は世の中の役に立つことです。報酬ではありません。報酬を目的にしていると、必ずどこかにゆがみが生じてきます。自分の行った仕事以上の報酬を得ようとしたり、必要のない仕事を無理に作って、自分の利益だけは確保しようとする動きが出てくるでしょう。そうなると、完全な競争社会になります。」(p.37)
まさにそれが、私たちの社会だと言えます。仕事の目的に「報酬を得ること」がある限り、ゆがみが生じるのですね。
わずか60ページほどの短い小説です。ですから、その気になれば10分やそこらで読めてしまうでしょう。けれども、この物語の中には深い気付きがあるように思います。
今すぐ実現しないとしても、いずれ社会はこうなっていくのではないか。そんな未来を予感させる物語だと思います。続編もあるので、また読んで紹介したいと思います。
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