「みやちゅう」こと「みやざき中央新聞」の社説を集めた本、その第3集を読みました。著者は、魂の編集長こと水谷もりひとさんです。
水谷さんなど「みやちゅう」の本は、これまでにも紹介しています。
「たった数ページの新聞に泣きました」
「厳しい状況の時は前向きになれるものを」
「日本一心を揺るがす新聞の社説」
「いま伝えたい!子どもの心を揺るがす”すごい”人たち」
「なぜ、宮崎の小さな新聞が世界中で読まれているのか」
「日本一心を揺るがす新聞の社説2」
こういうのを1冊でも読まれると、「みやちゅう」の魅力をわかっていただけるのではないかと思います。私もこの「みやちゅう」の魅力に魅せられて、ずっと購読しています。そして、この新聞で紹介される本を購入したりしているのです。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
2013年、不登校の小中学生が12万人もいるという調査報告があったそうです。こうなるともう、問題は適応できない学生にあるのではなく、現代の学生のニーズに応えられない学校教育にあるのではないかという気がする、という議論もあったのだとか。
そこで、ジリアン・リンさんというダンサーの話を紹介しています。多動症という言葉もなかった時代に、リンさんは授業中、ちっともじっとしていられなかったそうです。ある医師が、リンさんをダンス教室に通わせるように進言しました。そのことによって、リンさんの人生が変わったのです。
「ジリアンはロイヤルバレー学校に入学し、卒業後は着実にキャリアを積み、『ジリアン・リン・ダンスカンパニー』を設立した。
その後、『オペラ座の怪人』や『キャッツ』など、歴史に残るミュージカルの振り付けを担当し、世界中の人々に感動を与える仕事をするまでになった。」(p.40)
決まった枠にはめ込まれていたら、リンさんは落ちこぼれになるしかなかったでしょう。そして、もしそうなっていたなら、人類が損失を被ったのです。社説は、次のように締めくくっています。
「「捜し物は何ですか?」と聞かれたら、「自分の才能」と返してみるのもいいかもしれない。この社会の多様性は、一人ひとりの才能によって支えられているのだ。」(p.41)
「誰かを助けたいなら、黙って聞け!」という意味不明な演題に興味を覚え、アルネスト・シローリという初老のイタリア人男性のプレゼンを、NHKのテレビ番組で見たという話を始めます。
シローリさんはNGOの一員として、アフリカのザンビアに農業を指導するために訪れたそうです。最初にトマトを作らせて、もうすぐ収穫という時、カバの大群がやってきて根こそぎ食べられてしまったのだとか。「先に言ってよ」とシローリさんが言うと、村人たちは「別に聞かれてなかったし…」と。
失敗続きだったシローリさんは、27歳のころ、ある決心をしたそうです。「これからは黙って相手の話を聞く」 自分の考えを押し付けるのではなく、まず相手から聞くことに徹するようになったのだそうです。
「困っていることを聞く。聞いて、自分にできることをする。時には、その立場が入れ替わることもある。
これを昔の日本人は「持ちつ持たれつ」と言った。」(p.57)
私たちはつい、上から目線で「かわいそうに」などと言って、そういう人を助けようとします。しかしそれは、大きなお世話になっていることが多いのです。本当の支援とは何なのか? 対等な人間として、考えてみる必要があると思いました。
「大事なことは、日頃から身の回りの些細な選択の場面で直感力を磨くことだ。磨けば磨くほど、直感力は研ぎ澄まされていく。」(p.79)
上手くいくコツは、時間をかけずに選ぶことだと、作家の有川真由美さんは言われているそうです。時間をかけないためには、理屈で考えるのではなく、直感で選ぶことが重要なのです。
歌手の橋幸夫さんと奥さんの凡子(なみこ)さん、橋さんのお母さんが認知症になった時、その介護をされてました。特に日常的にお義母さんに接する凡子さんは、苦労が多かっただろうと思います。しかし、普通の人とは発想が違ったようです。
「「ボケ老人って危険なことを除けばユーモアに満ちている。介護者の心の持ち方次第で、楽しくなるか苦しくなるか明暗を分けるんじゃないかしら」と。
そして、橋さんに言った。「お母さんって宇宙人みたいだわ」」(p.144)
普通では考えられないような発想と行動。それはもう宇宙人としか思えないと言うのです。同じ常識を持った日本人と思うから苦しくなるのであって、そもそも宇宙人だと思えば、考え方の違いを楽しめるのですね。
人生は山あり谷ありと言います。しかし、後になってみると、あの谷があったからこそ今があると、思えることも多いのです。そのことを、「おかん」というロックバンドの「人として」という曲の歌詞を引用して、水谷さんは説明します。
「「…あの日あのとき、奇跡とも言える瞬間が無ければ笑い合うことも無かったよ…/あの日生まれなかったら/あの街に住んでなかったら/あの電車に乗ってなかったら/あの日が休みじゃなかったら/あの会社じゃなかったら/あの学校に行ってなかったら/あの日晴れてなかったら/……あの時別れてなかったら/あのとき、『好き』と言ってなかったら/痛み、喜び、感じずに僕はあなたを知らないままだった」
悔しいこと、つらいこと、悲しいことも、いつかそれは「あの日」になる。
「あの日」をどう捉えても、どう生かすかは、すべて自分で決めることだ。」(p.173)
過ぎ去った日は、すべて「あの日」です。その過去をどう捉えるかは、自分が決めること。自分の決め方によって、過去を生かすことも殺すこともできるのです。
この本には、43編の社説が載っています。どの社説も、将来を悲観したくなる話ではなく、今がどうであっても頑張って生きていこうと思えるものです。
この本を読んで、1人でも多くの方が「みやちゅう」こと「みやざき中央新聞」の読者になってくれると嬉しいですね。(私は営業マンではありませんけど。)毎週送ってもらえる紙媒体の他に、WEB版でも見られるようになっています。これがあるので、私のように海外にいても楽しむことができます。
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