前回の「海と空へ」に引き続き、高橋歩(たかはし・あゆむ)さんの本を読みました。
作った会社を友人に譲り、妻や小学生の子どもたちと無期限の世界旅行へ出かけるなど、破天荒な生き方をされている高橋さんです。どういう考え方をしていると、そういう生き方ができるのか、とても興味がありました。
この本は、人生を旅になぞらえて、高橋さんの考え方を披露する内容となっています。「欲求」「職」「パートナー」「選択」「行動」「ルール」「物語」と章立てして、それにふさわしい言葉を集めたもの。自分の言葉だけでなく、多くの人の言葉も取り上げて、メッセージ集という形になっています。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「自分のやりたいことがわからない?
そんなもの、いくら深刻に考えたって、きっと、一生わからないぜ。
とにかく、おもいっきり五感を開いて、
「なんでもやってみよう!」の精神で、好奇心に身を任せて、
地球の上を動き回ってみよう。
やりたいことは、頭で考えるものではなく、ハートで感じるものだ。」(p.35)
自分探しをしている間は、何もわからないのです。でも、自分探しの旅として、これまで行ったことがない場所へ行ったり、やったことがないことをやってみるのは、それなりに意味があると思います。
私も旅(特に一人旅)や引っ越しを勧めていますが、新たな体験によって自分の枠を広げることが、自分自身を知るきっかけになると思うのです。
「まずは、やりたいことに、おもいっきり熱中してしまうことだ。
すべては、そこから始まる。
やりたくないことは、なかなか上達しないが、
やりたいことは、確実に上達する。
そして、好きなことに熱中しながら、たくさんの経験を重ねながら、自分の身につけてきた知識と技術が、他人の役に立ち始めたとき。
自然に、結果やお金がついてくるようになる。
「大人が真剣に遊び続けると、それが仕事になる」」(p.65)
「儲かるだろうか?」「生活費が稼げるだろうか?」などと、ついいくらもらえるかが仕事の目的になってしまいがちです。けれども高橋さんは、まずやりたいことをやれと言います。
やりたいことをやって、それが他の人の役に立って、他の人を喜ばせることができるようになれば、自然とお金がついてくるのだと。
だから、何がなくてもこれをやるんだと決めて、それを楽しむことなのですね。
「本当は、選択した結果に、大きな意味はないのかもしれない。
なにを選んだとしても、結果の善し悪しは誰にもわからない。
大事なことは、なにを選ぶのか、ではなく、選んだ後どう生きるか、だ。
物事を明るく受け止めて、ひたむきに頑張れる人は、なにを選んだとしても、結局、「これを選んでよかった」と笑うのだから。」(p.123)
何を選ぶかは重要ではないと、高橋さんは言い切ります。たしかに、一度に複数の生き方をやってみて、比べることはできないのですから、どっちが良いかなど誰にもわかりません。ただ後から想像してみるだけのことです。
ですから、重要なのは選択ではなく、その後の生き方だと高橋さんは言います。選んだことを後悔せず、これが最高なのだと受け入れることですね。吉川英治氏の小説「宮本武蔵」で、武蔵が「吾、事において後悔せず」と言ったのは、まさにこういう生き方ではないかと思いました。
「自分のルールがあるように、他人にもルールがある。
壊すことなく、壊されることなく、共に生きよう。」(p.173)
価値観は人それぞれですから、他人の価値観を否定する必要もないし、自分の価値観を捨てる必要もありません。それぞれを大切にすればよいのです。
私の父は、「嫁入り前の娘さんを、同じ屋根の下で寝させるわけにはいかない」と言って、当時まだ付き合っているだけだった私の妻を実家に泊めることを拒否しました。私は、実家は父の家だから、その価値観に従うと言って、帰省することをやめました。けれども私には私の価値観があります。帰省はやめましたが、東京や大阪を旅行し、妻と一緒にホテルに泊まり、姉夫婦にも会わせました。
価値観を否定し合わずに、互いを尊重すれば良いのだと思います。共に地球上に生きる仲間なのですから。
この本も、見開き2ページに1つのメッセージ、そして多くの人のメッセージ集という形になっており、写真がふんだんに使われています。そのため、1時間もあれば読み終えられるほどです。
けれども、一つひとつのメッセージには深みがあって、それを味わいながら読んでいると、なかなか一気には読めませんね。気に入った言葉を書き出して、いつも眺めているような使い方ができそうです。
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