喜多川泰さんの最新作を読みました。喜多川さんの生写真がもらえて、サインもしてもらえるというので、Facebookにあった特別ルートで購入しました。そのため、発売日は今年になってからですが、サインの日付は昨年になっています。
喜多川さんの作品らしく、思いもよらない展開が繰り広げられます。この先どうなるのだろう?と、ワクワクしている中で、人生についての熱い言葉が語られます。それが、とても心を打つのです。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。と言っても、これは小説ですから、ネタバレになるようなことはしませんよ。
「俺たちは、誰かにぶら下がるために集まったわけじゃないし、必死で頑張れば一人の力で何とかなるものを、七人でよってたかって持ち上げるために集まったわけでもない。実力が伴っていないのに誰かの力で目標としている世界に入れてもらったとしても、その世界で生きていけなくなるのは目に見えてるだろ。そうなってしまったら、何のための秘密結社わからない。それぞれが不幸になるために集まったようなもんじゃないか。」(p.161)
偶然集まった7人が、秘密結社を結成します。しかしそれは、お互いに依存し合う仲間ではありません。7人のうちの誰か1人でも成功したら、そこから取り立ててもらってというような、恩恵を得たいがための集まりではないのです。もしそうだったのなら、すぐに崩壊してしまったでしょう。
「だから、まずは、それぞれが本気になって、自分の前にある扉を開こうぜ。自分の力を磨こうぜ。」(p.161)
自分の夢は自分で叶える。自分でできることは自分でやる。その上で、仲間で協力できることがある。それが秘密結社の目的だったのです。
「そう、ずるい。きっと自分のやるべきことはやらないで、つまり自分は成長のための努力はしないし、みんなの夢を助けられないけど、みんなは私の夢を助けてよねっていうスタンスのことをそう表現したんだろうね。
そして、実際に自分もメンバーの一員として他の人を助けるだけの力をつけなければならないってわかったらちょっと面倒くさくなって、そこから逃げようとしているっていうことも、ずるいって言葉に込められているんだと思う。」(p.164)
自分で自分の生き方を見直してみるとき、それを粋(いき)か野暮(やぼ)かで判断する。「ずるい」というのは、野暮だっていうこと。要は、自分らしくないってこと。粋は、自分らしいってこと。かっこいいとか、美しいってこと。自分の生き方を、粋か野暮かで考えた時、覚悟が決まるのです。
「本気になるというのは、誰から助けられなくても、自分の力でやると決断することだよ。そうやって生きている人には、自然と応援団ができる。そのことを、君もきっと、本気になって何かをやったときに経験するだろう。」(p170)
最初から誰かに助けてもらおうとするのは依存です。仮に誰も助けてくれないとしても、最後まで1人でやろうと決めて、動き始めるのが「本気になる」ということなのです。
そして本気になると、自然と誰かが助けてくれます。その助けによって、その目標を達成することができます。だから成功者は、本気で目標に立ち向かうのに、謙虚になれるのです。
「自分と交わした約束を守れる奴はほとんどいない。でも、約束を平気で破る奴は信用できない。だから、自分との約束を破る奴は、誰より自分のことが信用できなくなる。つまり『自信』がなくなっていく。だけど他人と交わした約束を守るときと同じくらいしっかりと、自分と交わした約束を守って生きれば、そいつは一角の人間になれる。きっとそれだけで、思いのままの人生を手にすることができるだろうって肇は言ってた。」(p.250)
他の人との約束は、他の人の目があるから、比較的に守りやすいものです。守らなければ、すぐに信用をなくすからです。しかし、自分が自分に対してした約束は、すぐに妥協して破ってしまいます。誰にも咎められないからです。
けれども、自分との約束を守ることが、人生においては重要なのですね。そのためには、他人の力を借りることです。自分への約束をオープンにすること。宣言すること。それによって、守りやすくするのです。
あるいは、お天道様が見ていると昔から言ったように、人知を超えた存在がいることを信じて、その視線を気にすることです。そうすれば、自分の弱さを克服できるのですね。
「目標を抱くと、やらなきゃいけないことは当然増える。その増えたやらなきゃいけないことを、我慢しながら、苦しみながら何年も続けることは、誰にとっても苦痛でしかない。でも、実際に努力を続けて、それを手にするにふさわしい人になった人にとって、それは苦痛ではなかったのかもしれない。なぜなら彼らは、自分が恋した未来に近づくためなら、やってくるどんな困難も笑顔で受け入れただろうからな。」(p.298)
人は恋すれば、その人のためにどんな困難でも乗り越えようとするものです。困難を乗り越えることを楽しめたりもします。
だからこそ、未来の自分に対して恋するのがよいと言うのです。未来の素晴らしい自分に恋し、一歩でもそこに近づこうとするそれは楽しい道のりではないかと。
秘密結社を作ることで、一人ひとりが成長していった父親と同世代の人々。そういう人たちと出会うことで、主人公は自分の生き方を見直します。
かっこいい大人たちへのあこがれが、自分もそうなりたいと思わせたのです。野暮ではなく、粋な生き方をする。失敗しようとどうしようと、正直に精一杯に生きること。主人公のように、そんな生き方をしたいなと思いました。
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