以前に読んだマンガの「テラ・ルネッサンスT,U」が素晴らしくて、いつか鬼丸昌也さんいお会いしたいと思っていましたが、やっと念願が叶いました。
そのときのことを12月15日のメルマガで書いたので、その内容をここに紹介することにします。
さて今日は、しなやかに困難を跳ね返す力という話です。
昨夜、テラ・ルネッサンスの講演会、テラ・スタイル東京に参加してきました。
これは、NPOのテラ・ルネッサンスを支えるために、有志が毎月1回開催しているものだそうです。
「テラ・ルネッサンス」
「テラ・スタイル東京」
講演は最初、アフリカで支援をしている小川慎吾さんが、支援活動の内容などを画像を示しながら紹介されました。
その後、テラ・ルネッサンスの創設者、鬼丸昌也さんと小川さんが、支援のポイントなどを話されました。
この中で、とても印象に残ったことがあるので、それをシェアしたいと思います。
支援においては、「レジリエンス」という概念が重視されてきたのだそうです。
レジリエンスとは、しなやかに困難を跳ね返す力(能力)です。
たとえば、トラウマになるような出来事があった時、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する人がいます。
一方で、同じ出来事を体験しても、PTSDにならない人もいます。
その違いがどこから生まれるかというと、困難があっても跳ね返す力があるかどうかということが重要なのだそうです。
では、そのレジリエンスが高い人は、どういう特徴があるのでしょう?
答えは「自尊心が高い」という特徴なのだそうです。
自尊心が高い人は、少々の困難があっても潰れない。
たしかに、そうだろうなと思いました。
では、どうすれば自尊心を高められるのでしょう?
その答えは、「他者へ貢献している」という自覚なのだそうです。
テラ・ルネッサンスで支援している人は、元少年兵とか内紛でレイプされた女性たちです。
そういう人たちは、コミュニティーや家族からも拒絶される傾向があります。
彼らが手に職を持つということは、コミュニティーや家族に貢献することになるのです。
どんなひどい仕打ちを受けたとか、今、どんな困難な状況にあるとか、そういうものは関係ないのだそうです。
どんな状況であっても、今、できることに注目する。
できることをやって自立し、他者へ貢献することが重要なのです。
この考え方は、アドラー心理学でも示されていますね。
したがって大事なことは、問題をなくすことではありません。
今、問題があるかどうかは関係ありません。
それよりも、問題に対してどう立ち向かうかということが重要なのです。
鬼丸さんが、こんなことを言われていました。
「私は英語をしゃべれないし、シャイだから飛行機に乗る時、窓際に座れないんですよ。だってトイレに行きたい時、なんて言ったらいいかわからなくて、ずっと我慢しなくちゃならないから。」
そんな人が、海外の人たちの支援をどうやって始めたのでしょう?
とても興味があったので、それを質問してみました。
すると鬼丸さんは、こう答えてくれました。
「結果論ですが、ないことが良かったんです。」
英語をしゃべれなかったから、しゃべれる人に任せるしかなかった。
自分は日本語がしゃべれるのだから、自分の理念や考えを日本人に伝えることができる。
そのできることをやって、あとは他の人に任せることにした。
それによって支援の輪が広がり、優秀なスタッフが集まってきた。
すべての話がつながっていると思いました。
そしてこのメッセージが、まさに私に対してのものだと思いました。
鬼丸さんと小川さんは、最後にこういう話をしてくれました。
「理念は重要ですが、それは自らに問いかけるものです。他者を裁くために使ってはいけません。」
とても学びの多い1日でした。
以上がメルマガの内容です。
この講演会で、売られていた本を4冊買いました。そのうちの2冊は、すでに読んだマンガです。またサロン文庫に寄贈したいと思ったからです。
今日、改めてそのマンガを読んでみました。鬼丸さんの英語ができないエピソードとか、小川さんの話など、すべてこの本に載っていましたね。すっかり忘れていました。
この本の中で、とても共感する部分があったので紹介しましょう。それは、ウガンダで小型武器を禁止するための行動ネットワークが設立された後、アフリカ10ヶ国でも同様の組織が作られ、ついにはそれらの連合組織も作られたというエピソードに関してです。その組織の責任者に、人と人を結びつける秘訣を尋ねたところ、こう答えてくれたそうです。
「ネットワークをつくるために大切な鍵…まずは
それぞれの個人や団体が全く違う存在であることを理解すること。
設立の背景や目的も違うのだから価値観や考え方が違って当たり前。
そして次は、そんな価値観や考え方が違う物同士の中にも、「共通して実現したいコトがある」と信じることが大切なんだ。
それは「平和」という目的かもしれないし、武器規制という願いや目標かもしれない。具体的でなくてもいいんだよ。
みんなが何か同じものをめざしていることをイメージしていると、そのうちに、必ずはっきりとしてくる。
すると次第に他人や他団体の活動が他人事とは思えなくなってきて、他の活動の成功をまるで自分のことのように喜べるようになるんだ。
そうなるとネットワークは自然とできてくるものだよ。」(「テラ・ルネッサンスT」p.135 - 136)
また、戦闘で視力をなくした元兵士は、他の視力を失った人に教えることで、生きる希望を見出しました。
「見えるものが全てではなく、信じることが全てなんだ。
私は目が見えなくても幸せです。
現在(いま)に幸せを感じることが大切なんです。
幸せであれば何でもできます。
私の子ども達にも、学ぶことによって自分の人生を切り拓くことができると、伝えていきたいのです!」(「テラ・ルネッサンスU」p.74 - 75)
それから、鬼丸さんがNGO活動を始めるきっかけとなった、アジアのノーベル賞と呼ばれるマグサイサイ賞を受賞されたアリヤラトネ博士の言葉を紹介しましょう。
「君が何かを始めようとする時に、特別な知識や、財産はいらないんだよ。
ただ、一つだけ忘れないでほしい。それは、障がいの有無や、性別、年齢にかかわらず、どんな人にも自分と社会の未来を創造する能力があるということだ。
そして、その能力を人と比べる必要もない。
大事なのは一人ひとりに必ず能力があると信じることが。
それが人間の信頼につながり、社会を変革する勇気になる。だから、『特別』なことは何もいらないんだよ。」(「テラ・ルネッサンスU」p.82 - 83)
本を購入した時、鬼丸さんと小川さんにサインをしていただきました。
テラ・ルネッサンスは、カンボジアやラオスでも活動しています。タイはそれらの隣国ですから、またタイに来られることもあるとか。その時はぜひ、タイでも講演をしていただけたらと思っています。
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