2016年12月04日

母さんのコロッケ



また喜多川泰さんの本を読みました。サロン文庫に寄贈したくて買った喜多川さんの小説すべての中から、まだ読んでいなかった本の1冊です。

「懸命に命をつなぐ、ひとつの家族の物語」というサブタイトルがあります。私たちは、命のタスキを託すことによって、連綿とこの地球で生きていました。それがどういうことなのか? 普段はあまり考えてみることもありませんが、この小説は、そういうことを考えさせてくれます。


ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。と言っても物語ですから、ネタバレしない程度のあらすじと、ポイントとなる文を紹介しますね。

主人公は松本秀平。将来を約束された大企業をやめ、個人経営の塾を始めたばかりです。なぜ塾をはじめたのか? それは、子どもの教育に対して思うことがあって、それを実行することが世のため人のためになると思っていたからです。

けれども、世間はそんなに甘くありません。どれほど高邁な理想を掲げたとしても、思うようにならないことは多いのです。

そんなとき、駅のコンビニで不思議な店員と出会います。そして、そこで買ったのど飴を舐めると、とんでもないことが起こったのです。

その出来事によって、秀平は多くのことに気付かされます。それは秀平が知らなかったことかもしれませんが、想像すればわかるようなこと。でも、それまで想像しようとしてこなかったことなのです。


本の冒頭に家系図が載っています。なぜ家系図? そう不思議に思いながら読み始めましたが、読み進めるに連れて、その意味がわかってきました。

また秀平の妻、涼子の出産が迫り、秀平の実家へ行って出産することになりました。そのとき、何でもかんでも持って行こうとする涼子に、秀平は声をかけます。その何気ない一言が、実に深い意味があったことに、あとになって気づくのです。

のど飴を舐めてからの展開は、惹き込まれるものがありました。そして、最後の1粒となったのど飴を舐めてからの出来事も、涙をボロボロ流しながら読みましたよ。


自分の人生は、自分以外のものに生かされてきた歴史だ。
 祖父の代が、命をかけてつないでくれた命を、両親がまた命をかけてつないでくれた。それは子供たちのために自分の命をかける決意をしてくれた人たちの歴史でもあった。
」(p.174)

サブタイトルにもあるように、先祖の誰1人欠けても、私たちが生まれては来なかったのです。その壮大な物語が私たちの歴史であり、その歴史の最後に登場しているのが私たちなのです。

そしてこの歴史は、これからも続きます。私たちが子どもたちにタスキを渡して、次は子どもたちが命をつないでいくのです。


すべての人間に使命があり、それを果たすために必要なものはちゃんと持って生まれている。自分が持ってこなかったものを嘆く必要などない。それは、自分の使命を果たすために必要ないと自分で判断して置いてきたものだからね」(p.203)

私たちは、この世に何のために生まれてくるのかを、自分で決めて生まれてきます。それが使命です。そして、その使命を果たすために必要な能力は、すべて備えていると言います。

自分で使命を決めて生まれてくるなら、必要なものはすべて持っているということは、当然だと思います。けれども私たちはつい、自己卑下してしまいます。それを言い訳にして、使命に生きることを諦めるのです。

では、どうすれば自分を信じて、使命に生きられるのでしょう? 何に希望を抱けば良いのでしょう?

わしがしたのは覚悟じゃ。どんなことが起ころうとも、それを受け入れて、今を精一杯生きるという覚悟じゃ。未来を不安に思おうが、どれほど絶望視しようが、わしらにできることは受け入れること。そして、永遠に続く今に集中して今この瞬間に幸せを感じる生き方をすることだけじゃった」(p.215 - 216)

希望がないとしても、今をそのままに受け入れ、そこから始めると覚悟すること。それが重要だと言います。

良いことが起こるから使命を果たせるのではなく、何が起ころうとも使命を果たすと決断するから果たせるのです。いえ、使命を果たせるかどうかさえ関係なく、果たすと決めて生きることが重要なのだと思います。


喜多川さんの小説は、どれもハズレがありません。そして、どの小説でもボロボロと泣けてきます。心の琴線に触れるからでしょうね。

まとめて買った喜多川さんの本も、残り1冊となりました。年末までには新刊が発売されるそうなので、それもすぐに買おうと思っています。

母さんのコロッケ
 
posted by 幸せ実践塾・塾長の赤木 at 15:13 | Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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