以前に買った本ですが、やっと読み終えました。アマゾンのリンクは、なぜか単行本のものが出てこないので、Kindle版のリンクを貼っておきます。
著者は佐藤芳直(さとう・よしなお)さん。コンサルティング会社S・Yワークスの代表で、歴史観を取り入れた経営コンサルティングをされているようです。
本書は、知的障害を持たれているご子息に語りかけるような形で、伝えたい日本の歴史を解説しています。サブタイトルには「わが子へ伝えたい11の歴史」とあり、子どもたちに受け伝えたい歴史を取り上げてあります。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「二〇世紀を一言で要約すれば、日本の躍進した世紀、日本が世界を変えた一〇〇年と言ってよいでしょう。その結果、二一世紀は、「世界が日本化する世紀」と確信できます。」(p.3)
私も、世界を救うのは日本の使命だと思っています。ですから、この冒頭の一文には共感します。
「私たち大人は、先祖が築き上げてきた歴史から何を学び、どのようなかたちで次の若い世代へ語り継いでいけばいいのか。
今こそ伝えたい一一の歴史の話を通して、私たちの未来−−未来への恋文−−を心に描いていただければ幸いです。」(p.5)
今の私たちが歴史をどう認識し、どう役立てるのか。それによって、子孫に何を残すのかが決まるように私も思います。
「「親からの恩は、子に返せ」
小さい頃父さんは、君の祖父さんからよくそう言われていた。いいかい、親が死んだら、初めて親の有り難さ、恩というものが分かるんだぞ。そしてその恩はな、次の世代に返していくんだぞ。そう教えられていたんだ。
「恩送り」って字、なんて読むか分かるかい。「おんくり」って読むんだよ。受け取った祖先からの恩は、未来の子孫のためにより大きくして未来に送る。とても美しい日本語だね。」(p.23)
「恩送り」を「おんくり」と読むのは知りませんでした。けれど、受けた恩を相手に返すのではなく、子孫に送っていくという考え方は、循環という考え方にも通じます。とても素晴らしいなあと思うのです。
「先人が蒔いた福の種が、九五年の歳月を経て、二〇〇人以上の子孫の生命を助けた。それはまさに時空を超えたロマンでもある。
今を生きる私たちは、未来へと受け継がれるであろう”福の種を蒔くような生き方”ができているのだろうか。」(p.29)
これは「海難1890」でも書いた、エルトゥールル号遭難事件とイラン・テヘラン在留邦人救出事件のことを取り上げています。
今の自分の損得とかではなく、子孫の損得を考える。佐藤一斎が言志録の中でこう言っています。「当今の毀誉(きよ)は懼(おそ)るるに足らず。 後世(こうせい)の毀誉は懼る可(べ)し。 一身の得喪(とくそう)は慮(おもんばか)るに足らず。 子孫の得喪は慮る可し。」そういう生き方が、恩送りになるのだと思います。
「二〇世紀初頭、広大なユーラシア大陸で有色人種の独立国家はたった二つ、日本とタイだけで、他の広大な地域はすべて白人の植民地であり、支那大陸も英国を中心とする白人国家に植民地にされている最中だった。
そんな植民地とされていた有色人種の国は、黄色人種の小国日本が白人国家ロシアを打ち破った事に興奮し、勇気を持ったという。」(p.36)
これも歴史の一面です。たしかに第二次世界大戦まで、白人至上主義がまかり通った時代でした。白人でなければ人にあらず。そういう価値観が、白人社会にはあったのです。
その流れに一石を投じたのが日本でした。そういう一面があったことは、間違いのない事実だと思います。
「近代史最大の変化を世界にもたらした日露戦争。
なぜ日本が奇跡とも言える勝利を収めることができたのか?
それは、科学的思考を大切にし、敵にすら思いを馳せ、勇敢に戦い抜く。そんな今に続いているはずの日本人の本性がもたらした勝利ではなかろうか。
そして、信頼を重んずるという、数千年来の日本人の精神文化もまた、日本を勝利に導いた一つの力だと思える。
当時の世界中の人々の眼に映った日本人は、どの国民よりも立派だったのだ。
世界のなかの日本の信頼を一気に高め、日本を一等国、世界五大国へと導いた日露戦争。私たちが語り継がなくてはならない歴史である。」(p.58)
白人至上主義が当たり前の世界において、有色人種の国が白人の強国を戦争で破った。これが世界史のターニングポイントであることは、間違いがないと思います。
「アメリカにおける現在の日本車の優位が、先人たちのどれだけの苦労と涙の結晶であるかは想像に難くない。
ダットサン210の、これらのエピソードも大切に語り継ぐべき、私たちの歴史のひとつだといえるだろう。
当時の日本人は、日本車を単に売ろうとしたのではないとは感じないだろうか?
敗戦で失われた日本の信頼、自信、未来。
そのすべてを再度手にするための一歩を刻もうと、それぞれの立場の人間が考え、精一杯行動したと、父さんは感じる。」(p.75)
現代でこそ車と言えば日本とも言えますが、戦後はアメリカの独壇場でした。1958年にアメリカで販売されたダットサン210は、走行性能が劣り、とても売れるような車ではなかったそうです。それを日々研鑽し、技術を磨き、アメ車に負けない性能にしていったのです。
その過程では、朝エンジンがかかりにくい欠点を補うために、一晩中ロウソクの火で温めるという「早朝のエンジンスタート出張サービス」という人海戦術までやったとか。そこまでして売ったのは、儲けるためだけではなく、日本人としての誇りのようなものがあったと言うのです。
「江戸時代というのは、誠に不思議な二六五年間で、戦国時代と違って、戦のない江戸時代では、支配階層であるはずの武士は、禄高も減り節制と自制を生きる規範として、非常につつましく生きており、富は商人が蓄積し、平和の中で町人たちは文化的にも豊かになっていった。
そんな、他国ではまったく考えられない、富と支配が分離する二重構造が存在していた。
それが、江戸時代の特殊な身分制度、「士農工商」だった。」(p.81)
支配と富が分離しているというのは、本当に珍しい例だと思います。ですから日本人には、戦争で勝って収奪するという発想はなかったのだと思います。
台湾や韓国を植民地として支配したときも、教育を施し、インフラを整備し、まるで日本そのものであるかのように支配したのです。西洋諸国の植民地支配とは決定的に違っていた。その思想の元が、江戸時代の気風にあるのです。
「中毒性が極度に高く、人を廃人化させる力を持つアヘンを年間二四〇〇トン以上も輸出し、貿易収支を黒字にする。そんな、現代では考えられない国策をとる国が、一九世紀の世界にはあった。
人としての権利、自由、生命、幸福の追求が認められるのは、白人だけだった。
清国政府は、度重なる輸出の禁止要請を無視する英国に業を煮やし、英国船への臨検を断行した。
そこから始まったのがアヘン戦争だった。」(p.108)
アヘン戦争は、西洋諸国がアジアやアフリカを植民地化する過程がよくわかる例です。無理難題を押しつけ、正当な権利を主張すると難癖をつけて攻撃する。圧倒的な軍事力にものを言わせたのです。
大東亜戦争も、開戦の50年前から計画が練られていたと言います。日本を含めて有色人種は、人間として認められていなかった。それがわずか数十年前の世界だった。それが事実です。
「二一世紀になっても、どうやらその図式は変わっていないようで、他国を支配するには、まず反政府勢力に資金、武器弾薬などの軍備を提供して、内戦を起こさせている。
現在のどこの紛争地域でも同じ図式が見られ、「歴史の法則」とも呼ぶべき一つのパターンと言えるだろう。」(p.114)
明治維新の時、イギリスやフランスが軍備を提供したのも同じような意図があったからでしょう。そして現代でも、旧ソビエトの東欧やアフリカ、中東などでの内戦も、この図式が当てはまります。
「戦争に反対し、自分たちの祖先の選択を批判することは簡単だろう。
しかし、忘れてはならないのは、歴史をじっくり顧みて、過去に生きた日本人の必死さや、国の独立を守り被支配民族にならないように闘った人々の「思い」を知ることなのだ。
それは、私たちが彼らから受け取ったものの大きさを知ることにもつながる。
それを知ってこそ、私たちは、子孫に何を手渡していくべきかということに思い至るのではないだろうか。」(p.170)
日本は悪いことをしたのだから裁かれて当然だと、東京裁判史観を信じる人が少なからずいます。しかし、物事には様々な面があるのです。
この本で紹介されているパラオはもちろん、台湾など、日本の統治を喜ぶ国もあります。インドネシアやミャンマー(当時はビルマ)など、日本のお陰で独立できたと日本を称える国があることも事実です。
歴史に学ぶということは、その事実を知り、その当時の人々の様々な「思い」を知ることではないかと思います。それによって、自分の中にも日本人としてのDNAが受け継がれていることを思い、自分がどう生きるべきかを考える。そういうきっかけに、この本がなればいいなと思います。
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