アドラー心理学でおなじみの岸見一郎さんの新刊を読みました。今回は、子育てに特化したアドラー心理学です。
新書判サイズで180ページという、ボリュームがあまりない本になっています。子育てに悩む親に対し、アドラー心理学をどう応用するのかという点に特化した、ハウツー本のような感じがします。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「「あなたのためにいっている」というようなことを親はいったりしますが、多くの場合、愛情という名に隠された支配でしかありません。
受験についていえば、自分で進路を選び、その上で失敗したとしても、その失敗を通じて学べることは必ずあるはずです。もちろん、首尾よく合格するにこしたことはありませんが、親がこれくらいの覚悟をしていれば、子どもは気が楽になるでしょう。」(p.33)
「勉強についていえば何のために勉強するのかという目標について、子どもが間違った考えを持っていれば、親は子どもに自分の考えを話すことはできます。
話して子どもが受け入れてくれるかはわかりませんが、考えを押しつけなければ少なくとも話は聞いてくれるだろうと思います。」(p.34)
親が子に勉強をさせようとしたり、進路を勝手に決めたりすることは、愛情ではなく支配なのだと、岸見さんは言い切られています。ここが根本的に間違いやすいところなのですよね。
「大事なことは、親は、子どもからの援助の依頼がなければ、動くことはできないということです。
(中略)
親が勝手に動いてはならないのは、一つには、子どもの課題は基本的に子どもにしか解決できないからですが、もう一つは、親といえども、実は子どものことを本当に知っているとは限らないからです。」(p.61)
アドラー心理学では「課題の分離」と言いますが、子どもであっても他人の課題に勝手に関わることは許されないのです。そして、子どもも立派な人格があると尊重するなら、親である自分でもわからないことがあると、率直に認めるべきなのですね。
子どもの人生は親のものではなく子ども自身のものです。そんな当たり前のことを、私たちはつい忘れてしまいがちなのです。
「間違った判断をするくらいなら、子どもの言動について疑問に思うようなことがあれば、率直になずねることをお勧めします。」(p.62)
「お前はどうしてこういうことをするんだ!?」と怒る人がいますが、この言葉は疑問形ですが、実質的には否定しているだけです。そうではなく、率直に尋ねるのです。自分にはわからないから教えてほしいと。
これができるためには、前提として子どもを1人の立派な人格として尊重している必要があります。尊重することなくして、否定せずに質問することはできないからです。
「親が自分にしてきたことをおぼろげな知識をもとに自分の子どもにもしようと思っても、それはたとえてみれば、子どもの頃に手術を受けたことがある人が、大人になって、手術を受けたのだから、自分も人に手術を施すことができると思い込んでいるのと同じです。
私は悪い親がいるとは思いません。たとえ子どもを虐待することがあっても、そのような親は決して「悪い親」ではなく、「下手な親」なのです。なぜなら、子どもとどんなふうに関わればいいのかを知らないだけだからです。」(P.67)
自分が子どもの頃に育てられたのだから、自分が大人になれば同じように育てられる、と思うことが間違いなのですね。大人になったからといって、すぐに優れた親になれるわけではないのです。
ですから、「悪い親」と批判する必要はなく、ただ未熟な親だと見れば良いのです。そして未熟なら、熟練する機会を与えることです。ここでも、否定する必要はないということです。
「ほめることは、いわば能力がある人がない人に、上から下へ評価することだからです。上下の対人関係を前提として、初めてほめることができます。」(p.103)
叱ることはもちろん、褒めることもいけないと、アドラー心理学では言います。なぜ褒めてはいけないかというと、そこに上下の対人関係が生まれるからです。
子どもであっても立派な人格だと尊重するなら、そこに上下の関係はないはずです。ですから、叱ることも褒めることも不要なのです。
「率直にいって、親は子どもを信頼できていません。親が何もいわなければ、きっといつまでもゲームばかりし続けるに違いないと思っているのです。親が家でゲームをしている時に、いい加減にして早く寝なさいというようなことを子どもにいわれたら嫌だと思うのですけどね。」(p.117)
ゲームばかりして勉強しない子どもに対して、岸見さんは「親は静観すればいい」と言います。それが原因で成績が下がろうと、朝起きられなくて遅刻しようと、それは子ども自身の課題だからです。
アドラー心理学では、相手を尊重し、無条件に信頼することを勧めています。それは相手が子どもでも同じです。子どもは立派に自分の課題に取り組むはずだ。その信頼が必要なのです。
「アドラーは自分に価値があると思えたら、自分の課題に取り組もうとする勇気を持てるといっています。勉強でなくても何かで貢献し、自分に価値があると思えたら、勉強に取り組む勇気も持てるようになります。
そのためにも親は決して子どもの勇気を挫いたり、子どもを辱(はずかし)めるような言葉をいってはいけませんし、叱ってもいけません。」(p.128 - 129)
子どもが自分の課題に取り組めるよう支援することが重要で、そのためには発奮させる意味だとしても叱ってはいけないのです。そうすることは、勇気を挫くからです。
そうではなく、今のままで十分に価値があるのだと伝えることで、失敗することへの怖れを取り除いてあげることです。そして子どもが挑戦しようとしたら、励ましてあげることです。
「例えば、朝九時くらいに起きてきた子どもに、「何時だと思っているの」といわないで、「生きててよかった」というのです。実際のところ、遅く起きてきたとしても、生きていればありがたいと思えるのではありませんか。」(p.155)
出来事の悪い面に光を当てるのではなく、良い面に光を当てます。そうすることで、子どもはありのままの自分を否定されることがなくなるので、自尊心を失わずに済みます。
「次に言葉遣いについてですが、丁寧に話すことをお勧めします。いつも必ず子どもに敬語を使わなければならないということではありませんが、何かを子どもに頼む時にはせめて命令しないで、お願いしましょう。そのためには、「〜しなさい」ではなく、疑問文か、仮定文を使って、「〜してくれませんか?」とか「〜してくれると嬉しい」といってみましょう。多くの場合、子どもは、その方がはるかに気持ちよくお願いを聞いてくれるでしょう。」(p.164)
命令するということは、そこに上下関係を作り出しています。人と人は本来、対等であるべきなのです。たとえそれが子どもであっても。だから丁寧な言葉を使い、お願いをすることが重要なのです。
アドラー心理学を知っている人からすると、少々物足りない感じがするかもしれません。けれども、実際に自分の子どもや生徒に向き合う時、アドラー心理学をどう応用すれば良いのかと悩むこともあると思います。そういう時に、この本は役に立つと思いました。
この本は、特に子育て中の若いお母さんにお勧めしたいですね。まずは自分がまだ未熟な親なのだと自覚し、親として成長していこうと決めることが重要なのだと思います。

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