もう中古でしか買えないようですが、友人が勧めていたので買って読みました。
2004年が初版の斎藤一人さんの本ですが、「これが最後の描き下ろし」と帯にあります。たしかに最近の本は、講演録のような本ばかりで、一人さんが書いたという本はありません。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「不況だろうが、自分の親がどうだろうが、自分がどんな環境に置かれていようが、明るく考えるということをしなければ、人は明るくならないんです。
だから、私は自分に対して、こういい続けてきました。
「自分は、どんなときでも明るく輝く太陽なんだ。どんなときでも、生まれてきてしあわせだと、いい続けるんだ」
これが私の精神論です。」(p.16)
目の前の現実がどうであろうと関係なく、自分の心を明るく保つと決意する。これが一人さんの考えの中心なのですね。
中村天風さんも、同じようなことを言われています。それに、思考が現実を創るという「引き寄せの法則」からしても、こうでなければいけませんね。
「要するに、自分は、この世に遊びに来ているんだ、という観念でいるんです。だから、私にとっては、仕事も遊びです。人生、すべてが遊びなんです。
遊びなんだから、おもしろくて、楽しくなくてはいけないんだ、と。じゃあ、どうしたら、おもしろくて楽しくなれるのか。そういうことを、いつも考えていたんです。」(p.20)
人生はゲームだと、よく言われます。私も、その通りだと思います。人生が遊びだったら、楽しくないはずがありません。だから、楽しむことを考えればいいのですね。
「では、なぜ、私は「ツイてる人間」なのか、ということになるのですが、答えはいたって簡単です。昔から「ツイてる」というのが口グセだったからなんです。」(p.39 - 40)
「ツイてない人間って、自分のことを「ツイてない人間だ」と思っているだけなんですよ。ツイてる人間と、ツイてない人間の違いとは、たったそれだけのことなんです。」(p.40)
一人さんは、自分はツイてるだけの人間だと言います。実力(能力)ではなく、運が良かったのだと。そして、その運を良くする方法が、単に「ツイてる」と言うことだったのです。自分のことを「ツイてる」と思い込めるかどうかがポイントなのですね。
「青森へ旅をするのだとしたら、東京から青森までの道すがらが楽しいんです。
お金持ちになるのも、それと同じです。お金持ちになるのに一〇年かかるのだから、その一〇年間に自分がやるべきことを楽しみながらやり、エッチラ、ホッチラ歩いていけばいいんです。そうすれば、道すがらは楽しいし、一〇年経てば本当にお金持ちになれるんです。」(p.92)
結果が得られるまでに時間がかかります。私たちは、その過程を無駄だと考えがちです。結果を得るから意味があるのであって、結果が得られないなら徒労だと。
一人さんは、違う考え方をされます。もちろん結果が得られれば良いのですが、そうなる前の過程においても、そのことを楽しむのです。そうすると、自然と結果がついてくるという考えなのです。
結果に執着してはいけないと、多くの人が言っています。それが「引き寄せの法則」を上手に使うコツなのだと。一人さんも、同じことを語っておられるように思います。
「成功とは旅路です。
「今、ここ」を成功だと思って、歩き出した人が成功者です。成功をつかんだ人が成功者なのではありません。「成功をつかんだ」は、もう過去のことなんです。」(p.93)
成功を「求める」なら、今あるのは「求める」という状態です。成功していない現実ですね。それを思っているなら、それが現実となります。ですから、「すでに成功している」という今を続けることが重要なのです。
旅路は、帰ってくることが目的ではありません。出発してから帰着するまで、そのすべてが旅路であり、楽しみなのです。
「ただし、不完全主義だからといって、いいかげんにやるのではありません。やるからには、やはり、一〇〇%を目指す。
でも、人間がやることは最高で七八%だから、結果については、
「よかったね」
というんです。それで、できなかった二二%をチェックしておいて、次回はこれを改良する。これで人はよくなるんです。」(p.107)
最初から完璧を望まない、期待しないということですね。しかし、常に完璧を目指すのだと。
「でも、限りなく完璧を目指すけれど、完璧にはなれない。だからこそ、退屈しなくて済む。人生が楽しいんです。不完全主義って、いいでしょ。」(p.108)
常に目指せる上があるから、何度でも挑戦できる。そのことを楽しいと考える。それが、生き方のコツなのですね。
一人さんは、人が不安を持つのは当然で、むしろなくそうとしてはいけないといいます。なぜなら、それが人間だからと。
しかし、不安に悩む人は多いです。それに対して一人さんは、こう言います。
「ですが、これは諦めるしかない。
「諦める」というのは、自暴自棄になれということではありません。ここでいう「諦める」は、「明らかに眺める」ということです。
一体、何を明らかに眺めるかというと、人間は不安な動物で、生きているうちに不安はなくならないんだ、と。不安をもっている自分は正常なんだ、今日も生きているんだ、ということです。
人間というものは本当に不思議なもので、不安があるのが普通だと思うと、意外と不安がなくなるものなんです。」(p.121)
つまり、沸き起こる感情を、否定せずに受け入れるということですね。そうして始めて、その感情を乗り越えることができるのです。
「不安を抱いてはいけない」と、理性的に対処しようとすると、感情を抑圧することになります。これは自己否定と同じですから、上手くいかないのです。
「嫌だと思っているだけでは何も生まれないけれど、
「この不安があるなかで、自分は何ができるだろう」
と考えだしたとき、人は動き出す。現実が変わるんです。」(p.121)
拒否して、逃げているうちは、現実を変えることができません。受け入れて、そこからスタートすると決めることで、やっと変えることができるようになるのです。
「誤解しないでくださいね。私は、結婚はしないほうがいいと、いっているわけではありません。結婚は、したほうがいいんです。
なぜかというと、結婚式をしているときがしあわせで、別れたときは倍しあわせ。そのうえ、夫婦でいる間に修行になるんですから。
何の修行かというと、人は人を変えられない、という人間関係の修行です。そのことを学ぶために、相性の悪い人間同士が一緒に合宿生活するんです。」(p.129)
一人さん独特の結婚観ですね。前半のは茶化している感じもしますが、ある意味でそうだなと思います。
後半のは、まさに結婚の良いところだと思います。人間関係があるからこそ、人は成長することができます。自分にはないものを見せてくれるからです。「神との対話」でも、アドラー心理学でも、人間関係が重要だと言っています。
「こんなふうに、”いいこと”と悪いことはセットなんですが、だからといって、私は”いいこと”が起きたときにビクビクすることはありません。
躊躇も遠慮もなく、つかむんです。
なぜかというと、”いいこと”だけつかもうと思っていたら、何もつかまらないから。」(p.134)
心屋仁之助さんも、同じようなことを言われてました。ものごとはすべてコインの裏表。良い面があれば、悪い面もある。だから、良い面だけを得ようとしても、悪い面がセットでついてくるのです。その悪い面を恐れて手を伸ばさなければ、何もつかめないのです。
「今がしあわせだと、過去の不幸がしあわせなことに思えてしまう。過去の嫌な出来事が、今の自分の宝なんだと思えてしまうものなんです。
たとえば、自分は幼い頃に大病して、「つらい思いをした」という人がいるとします。けれど、あのとき大病したからこそ、今、人に思いやりをかけてあげられる人間になったんだ、と。いい体験してよかった、そう思う日が、やがてくることもあるんです。
こんなふうに、過去のどんな出来事も「しあわせ」と思える人は、今も「しあわせ」です。今が「しあわせ」だからこそ、未来がしあわせになるんです。」(p.140 - 141)
一人さんは、過去は変えられると言います。これは、「神との対話」でも言われていることですね。今が幸せなら、過去の不幸な出来事さえ、良い出来事に思えるのです。出来事は変えられなくても、その解釈が変わります。解釈が変わるとは、体験が変わることなのです。
そして一人さんは、未来は変えられないけれど、今を幸せで生きるなら、未来が変わってくるとも言います。つまり、今の思考が現実を創造するのです。
「隠しているから周囲の人は、その人の弱みが見えない。だから、補ってあげられない。
これが、失敗なのです。そして、これが、ふしあわせな世の中なのです。
そうなりたくないと思ったら、相手の欠点を責めなければいいんです。
お互いが弱い部分を欠点と見るのではなくて、
「自分があの人の役に立てる部分はここなんだ」
という捕らえ方をしていけばいいんです。」(p.166)
完璧な人はいないのに、人は他人の欠点を責めがちです。また、自分の欠点を直そうとします。しかし一人さんは、これを補い合えるチャンスだと捉えるのですね。
現状をすべて肯定するところからスタートする一人さんの考えは、とてもシンプルで理に適っています。また、スピリチュアル的にも合致するもので、一人さんがどうやってこういう考え方を得たのが、本当に不思議に思います。
この本は新書版で、CD付きとなっています。私は中古で買ったため、残念ながらCDが付いていませんでした。まあでも、一人さんが書かれた本ということだけで、十分に価値はあると思います。
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