2016年03月04日
長生きは「唾液」で決まる!
口腔内の清浄を保つことが免疫力の増加に関係しているという情報を目にしたことで、唾液の力に関する本をいくつか探し、その中からこの本を選びました。著者は、日本大学歯学部教授の植田耕一郎氏です。
虫歯にならないために唾液が重要だというのはわかります。しかし、唾液の力はそれだけにとどまらず、他の病気を防ぐ作用もするとのこと。期待しながら読みました。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
植田氏は、脳卒中になって咽(のど)が麻痺してしまった人の、口や咽の機能回復の手伝いをされています。リハビリ医療です。
その仕事の中で、「歯ごたえのあるものを食べる」とか「食後に歯を磨く」ことが、口の健康を保つという説に疑問をもつようになります。
それは、固いものも食べられず、歯みがきもできない患者さんを多く見てきて、その中に虫歯ができていない人が多くいたからだと言います。
もちろん中には、虫歯だらけの人とか、歯が溶けてしまったような人もいたとか。その原因を、次のように言います。
「明らかに、本質的な理由は、「固いものを食べたかどうか」や「毎日歯ブラシをかけたかどうか」以前のところにありました。
ひとことでいえば、唾液が足りなかったから、です。唾液の自浄作用が働かなかったから、です。」(p.6)
「このように、唾液はじつに多くの重要な役割を果たしているのですが、それらをまとめると、「自浄作用」ということになると思います。
口に入った食べ物を体内に取り込み、残ったカスの掃除をする一方で、虫歯や感染を防ぎ、口の中を健康に保つのです。」(p.20)
植田氏があげた唾液の機能は、「円滑作用」「溶解作用」「洗浄作用」「消化作用」「保護作用」「緩衝作用」「抗菌作用」の7つに及びます。
つまり、私たちが生きる上で、欠くことができないたくさんの作用を、唾液が行っていたというわけです。
「喫煙者は、歯周病に、非喫煙者の3〜8倍程度かかりやすい、といわれています。
また、糖尿病のような全身疾患があると、身体の防御機能が低下することから、歯周病になりやすくなります。
口の乾きも歯周病の危険を高める、と指摘されており、私はむしろこれがポイントであると考えています。」(p.26)
最近はドライアイならぬドライマウスという言葉があるのだそうです。専門用語では「口腔乾燥症」だそうです。
これが歯周病の大きな原因だと、植田氏は言っています。
「歯周病対策として「毎日歯磨きをしなさい」と勧める歯科医もいますが、私はほとんど意味がないと思っています。歯垢や歯石、食べかすが残りやすい、歯と歯肉の境目、歯の裏側、歯間部といった場所に、確実に歯ブラシをタッチさせられないのであれば、それは、歯磨きした、とすらいえないからです。」(p.35)
つまり本当に歯磨きしたと言える「歯磨き」は、一般の人には非常に難しいということです。ですから植田氏は、歯磨きは意味がないと言うのです。では、どうすればいいのか?
「唾液の分泌量が増えれば、歯周病を介して糖尿病や動脈硬化といった全身の深刻な病気になることも、防げるでしょう。
唾液で口の中が潤えば、歯周病が改善するとともに、唾液の「抗菌作用」によって、歯周病原因菌以外の病原微生物の活動をも抑えることができます。」(p.37)
唾液の分泌量を増やすことが、すべての鍵だと言います。では、どうやって唾液を増やすのか?
「唾液の分泌量を増やしたいのなら、薬の摂取を控えて、あとは、なんでも食べればいい、話せばいい、深く呼吸をすればいい、表情豊かに暮らせばいい。」(p.40)
口の機能をよく働かせることが、唾液の分泌量を増やす効果をもたらします。しかし植田氏は、一人ひとりの生活スタイルは違うので、そういうアドバイスはしたくないと言って、こう結論を言います。
「ただ、「口」ストレッチという簡単な所作を、いつもどおりの生活に取り入れることを提案したいのです。」(p.40)
「唾液たっぷりの健康な口を手に入れるには、全身を動かす必要があるのです。
なぜならば、私たちの健康にかかわりの深い血液は、私たちの身体の全体をくまなく循環しているからです。」(p.113)
「口」ストレッチの前に、まずは全身を動かすことが重要だと植田氏は言います。そこで高齢者が転びやすいねじる動きを鍛えることなどを、本書では勧めています。
「常々思うのですが、女性が男性よりも長生きなのは、
「わあ、かわいい! きれい!」
と、リアクションが大きいからではないでしょうか。
そのおおげさなくらいのリアクションが、期せずして表情筋のトレーニングとなり、生命力を引き出しているのではないか、と感じるのです。」(p.144)
このように植田氏は言って、「口」ストレッチでは、「微笑み口」「怒り口」「大泣き口」「あきれ口」などのように、感情を表情に表すようなトレーニングを勧めています。
「実は、固いものを食べる、という条件下よりも、食べたいものをおいしく食べる、という条件下において、唾液の分泌量は増えます。
食べたいものをおいしく食べるとき、唾液が増えたことに味覚が反応し、消化酵素をたっぷりと含んだ唾液分泌がうながされます。」(p.147)
つまり、健康のためにと無理して美味しくないものを食べるより、食べたいものを美味しくいただく方が、唾液の分泌のためには効果が大きいのです。
「さらにいえば、若くても頭痛薬や眠剤、安定剤に頼る人が増えている今、薬をやめる、減らすことが、唾液の分泌量を増やす最短・最善の方法だと考えます。」(p.150)
薬は副作用があり、身体の正常な反応を妨げるものです。できるだけ薬に頼らないことが、唾液の分泌のためにも効果的だと言います。
そして植田氏は、よく生きるという意味でも、食べたいものを食べることを勧めます。
「「好きだ」「おいしい」という感情が、「ゴックン」という嚥下(えんげ)を可能にするのです。
ですから、細かい栄養素のあれこれも、考えなくていいです。
たとえば、70歳から日本酒だけ摂取して生きている90代の男性がいました。
その方に向かって「野菜が足りていない」と指摘する意味はあるのでしょうか。
この世に生を受けてから90年以上生きているという、すばらしい実績があるのです。」(p.158)
これはとても説得力があります。「日本酒だけだなんて不健康だ」と決めつけるのはやめましょう。人間の体は、本当に何が必要かは自分が知っています。その人が、日本酒だけでいいと思うのなら、それでいいのですね。
私も「主食はビールだ」と公言しているだけに、勇気づけられました。
食べてもいい、食べなくてもいいというプラーナ食を勧めているのは、はせくらみゆきさんです。人の体は、本来は食べなくても生命を維持できるのかもしれない。そう考えてみると、可能性がもっと広がるように思います。
唾液という、本来備わった自然の能力を取り戻すだけで、人は健康に生きていける。重要なのは、外から取り込む栄養よりも、内側で作られる唾液だった。そういう気がしてきました。
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