2015年12月04日

健康で文化的な最低限度の生活



久しぶりにコミックマンガを読みました。柏木ハルコさんの作品です。現在第2巻まで販売されており、2冊一緒に買いました。

主人公は、区役所で働くことになった義経えみるという女性。配属先は福祉事務所の生活課です。ここで、生活保護に関する仕事をすることになります。この作品は、この主人公の奮闘を通じて、生活保護の問題をわかりやすく教えてくれています。


漫画なので、引用はあまりできません。概要をかいつまんで説明します。

まず、憲法第25条にこうあります。

「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」
」(第1話 p.13)

この理念に基づいて、最後の砦となるのが生活保護という制度なのです。

しかし、生活保護費は3兆円も使われており、「国や自治体の財政を圧迫している」のが現実です。「働ける人には働いてもらう!!」という考えも一方にあって、バランスが重要になります。


主人公は、配属されてすぐに、110世帯分のケースファイルを渡され、前任者から引き継ぐことになります。

前任者は言います。

この一冊一冊にそれぞれの事情−−…それぞれの人生があります。」(第1話 p.17)

覚せい剤の後遺症に苦しむ人、夫から受けた暴力(DV)が原因で精神的に病んでいる人、生きる希望をなくした人、…。さまざまな人生があります。


人の住まいを見るということは、人の暮らしを見る…ということです。」(第1話 p.23)

家庭訪問を通じて、その人にとってどうすることが最も良い助けになるのかを探り、保護を受けている人の幸せな生活を考えてあげる仕事です。


ある日、担当している1人から、「これから死にます。」という電話がかかります。

終業時間になっていました。主人公はとまどいながらも、近所の親戚に電話で伝えます。

よくあることと言われて安心したものの、やはり何かひかかり、本人に電話をしますが留守番電話です。主人公は、メッセージを残して、帰宅したのです。

確かにコレ…一ケース一ケース全力でやってたら身がもたないかも……」(第1話 p.35)

しかし翌日、電話をかけてきた人が、本当に自殺したことを聞かされます。本当にあれで良かったのか?

一ケース減って良かったじゃん。」(第1話.p.40)

そう言ってなぐさめてくれる同僚の言葉に、主人公はあれでよかったのだと思おうとします。

しかし、後始末のために自殺した人の部屋へ入ってみると、懸命に生きようとした跡が見えてきます。

110ケースあろうが……国民の血税だろうが……ダメだ。それ…言っちゃあ、何か大切なものを失う……気がする…」(第1話 p.47 - 48)


このようにして主人公は、生活保護の受給者と真剣に向き合うようになります。

しかし、なかなか思い通りにならないのが現実です。

就労支援をしようとしても、本人は働く気があると言うのに、なかなか仕事に就けない人が多数います。

何が問題なのか、どこがひかかっているのか?主人公たちの悪戦苦闘が続きます。


どんな温厚な人でも尊厳を侵されれば怒ります。」(第10話 p.3)

仕事を失う、病気になる、お金がなくなる、そういったことで人の人生の選択肢はどんどん少なくなります。でもどんなに選択肢が少なくなっても、時には全く選択肢がないような状況でも、その人の生き方を最終的に決めるのは本人です。」(第10話 p.3 - 4)

本人の意志を無視して、こちらの都合で無理矢理動かそうとすれば、人は当然怒ります。どんな人にもその人なりの「都合」があります。人は自分の「都合」でしか動きません。その「都合」を知るには、まず相手にしゃべってもらわないと…そのためにはこっちにも「聞く準備がある」と示す必要がありますね。」(第10話 p.4)

ここは、憲法の規定を考える上で、特に重要なことを示唆していると感じたので、長くなりましたが引用しました。

ただ生かされればそれでよい、というわけではないのです。「健康で文化的な最低限度の生活」とは、その人が自分の尊厳を持って生きること。それを保障することなのです。


あるとき、家族4人で暮らす家庭の高校生の子どもが、無断でアルバイトをしていたことが発覚します。不正受給です。

本来なら生活保護の基準額からこの収入の額を引き、残りを保護費として支給するわけです。」(第12話 p.9)

不正受給は返還させなければなりません。

ギターを始めたことで、非行に走りかけていたのが改まったと喜んでいたのに、また非行に戻ってしまうかも…。

オレは…そんな悪いことをしたんですか……?バイト代全額没収されなきゃなんないほど…」(第15話 p.19)

生活保護費は国民の税金から出ています。だから、「本来は受けるべきではない」と思われています。

その考えが前提にあるから、収入があれば、それと同じ額の生活保護費が差し引かれることになります。

しかし、このことが生活保護から抜け出せない原因にもなっています。だって、少しくらい働いたのでは、苦労するだけで生活が向上しないからです。


前に紹介した「ベーシック・インカム」を併せて読んでいただくと、このへんのことがよくわかると思います。

ベーシック・インカム(BI)の良いところは、受給するのに抵抗がないところです。だって、国民というだけで全員がもらえるのですから。

生活保護のように、それをもらう罪悪感がありません。また、働けば働くだけ収入は増えるので、就労に対するネガティブなインセンティブも働きません。

さらに上記のような、不正受給の概念がないので調査も不要だし、発覚したときの気まずさもありません。


漫画はまだ続くようですが、これを読むと、生活保護制度がいかに多くの問題を抱えているかがわかります。支給する側も受給する側も、非常に多くの負担を背負っています。

よく調査して、しっかりと描かれた漫画だと思います。ぜひ、読んでみてください。そして、私たちにとって憲法が規定する「健康で文化的な最低限度の生活」とはどういうことか、そのためにはどんなセーフティーネットが良いのか、考えてみてください。

健康で文化的な最低限度の生活
 
posted by 幸せ実践塾・塾長の赤木 at 16:18 | Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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