嶋津良智(しまず・よしのり)さんの3冊目の本を読みました。
嶋津さんの本はこれまでに、「子どもが変わる怒らない子育て」や「不安をなくす技術」を紹介しています。
この本は、ベストセラーになった「怒らない技術」の続編になるのですが、あえてこちらを買ってみました。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「イライラや怒りへの対応方法には二つあります。
一つは体質改善です。そもそも怒らない地頭をつくります。これは風邪をひかない体をつくるために、日頃から食事に気をつけたり、運動することに似ています。
もう一つは対処療法です。怒りの感情が生まれたとき、どう対処するかです。」(p.5)
このように2つの観点から、怒りをコントロールする方法を説明しています。
「体質改善のときの有力な武器となるのが、「アンガーログ」(怒りの記録)です。いつ、どこで、どんなときに、どのくらい怒ったかを記録していくと、自分の怒りの傾向がわかり、イライラや怒りを少なくしていくことができます。」(p.6)
嶋津さんの手法の中で、この「記録する」ということは必ず出てきます。人はなかなか自分を客観視できないもの。だからこそ、こうして「記録する」ことが役に立つのだと思います。
「すべての根源は、そのときの気分からはじまっているのです。
気分がいいと、起きた出来事をプラスに受けとります。
その状態でプラスの意思決定をして、プラスの行動を起こすことで、プラスの成果につながります。」(p.32)
出来事が問題なのではなく、そのときの気分が重要なのだと言うのです。これは「神との対話」で、まず幸せになり、次にその幸せを原因として行動する、ということが書かれていますが、それと同じだと思います。
自分が幸せな気分でいたら、誰かから批判されても怒ったりせず、ゆとりをもって受け止められますからね。
「イライラや怒りは、他人が自分に与えているものと思いがちですが、原因は自分のなかにあります。
目の前に起きた出来事には、じつは何の意味もない。
その出来事に対して、あなたが意味づけし、「イライラする」「イライラしない」「怒る」「怒らない」を決めているのです。」(p.40 - 41)
これも「神との対話」に書かれていることと同様で、自分の感情は出来事や事実で決まるのではなく、そこに自分がどのような意味を与えたかで決まるのです。
「イライラの原因は、あなたがかけている「価値観のメガネ」にあります。」(p.52)
常識にとらわれている人や、マナーを重視する人などは、自分が持っている価値観を絶対だと信じているため、それに反する行為を許せないと感じてしまいがちです。
けれども、その行為が怒りを与えたのではなく、自分の価値観を通してその行為を判断することで、怒りが生じただけなのです。
「このように相手のよい点に常に焦点を合わせておくと、怒らないばかりか、大きな学びが得られるので、自分の成長につながります。」(p.60)
常に「この人はどこが優れているのか?」と自問するクセをつけることで、相手のよい点を探すことができると言います。そうすることが、怒らないだけでなく、自分の学びにもなるのですね。
「なかでもよく使うのが「これはちょうどいい!」という言葉です。「これは参った」と思ったときでも、「これはちょうどいい!」とわざと声にすると不思議なことに、脳は自動的に「ちょうどいい理由」を考えはじめます。」(p.74 - 75)
これは前の本にも出てきましたが、「コーピングマントラ(魔法の呪文)」というスキルだそうです。
どんなときでもポジティブになれるよう、こういう呪文を決めておいて、口ぐせにするといいですね。
「他人を変えるのはとても難しいのですが、自分が変わることで未来は変えられます。
つまり大切なのは目の前にある状況に対し、自分にできることを行い、よりよい未来をつくるという考え方です。」(p.78)
よく言われるように、他人と過去は変えられないものです。変えられないものは、そのまま受け入れるしかありません。
そんな変えられないものを変えようと無駄な努力をするより、変えられる今の自分を変えていけば良いのです。こんな当たり前のことですが、なかなかできない人が多いようです。
「問題が発生したときに不平不満を言うだけでは問題は何一つ解決しません。責任を他人に求めるのは簡単です。ですが他者に責任を求めても、問題は解決しないのです。
私は何かあったら、「ちょっと待てよ。相手が悪いのではなく、自分にできることはなかったかな」という呪文を投げかけます。」(p.92)
不平不満、愚痴、批判、非難など、他者に責任を押し付けることは、問題解決には役立ちません。
「怒るか怒らないかを決めるのはあなた自身です。」(p.102)
まず、自分が決めているのだと、しっかり受け入れることが重要なのですね。
「ですが、こうしたネガティブな一般化をしていると問題を解決しようがなくなります。若者すべてを「宇宙人」と「自由人」の一言で片づけてしまったら、何も解決しないでしょう。思い込みは、物事を考え、問題を解決しようという芽を摘むことになります。
別の言い方をすれば、「若者はわからん」という価値観のメガネで見ているのです。」(p.177)
レッテル貼りとも言います。こうしてレッテルを貼ることで、その見方しかできなくなります。ですから思考停止するのです。
「はじめは時間もかかるし正直面倒くさいと思うこともあります。しかし、続けていくうちに、部下である相手も「私が何を伝えたか自分の言葉で言ってみて」「そのことを君に伝えたのはなぜだと思う?」と最後に聞かれることがわかってきます。すると、話を聞く時の「聞き耳」が変わってくるので、コミュニケーションの質とスピードがどんどん上がります。」(p.186)
これは嶋津さんのコミュニケーションに対する考え方の基本的な部分です。
まずは、「伝わらないものだ」という前提を持つことが重要だと言います。その伝わらないものを伝えるようにするためのテクニックとして、この「「何(What)」と「なぜ(Why)」のコミュニケーション」が必要なのだと。
このことはセミナーでも、「アウトプットを前提としてインプットをする」という話をされていました。あとでアウトプットをすることがわかっていれば、それを前提としてインプットするため、インプットの質(個々で言う「聞き耳」)が良くなるのです。
「最終的にどういう結論を出したかというと、期待することは悪いことではない。でも期待を裏切られたからといって、自分勝手にイライラしたり怒ったりするのはやめよう、ということです。」(p.195)
期待しなければ楽だけど、それでは愛のない生き方だし、寂しいと嶋津さんは言います。だからこのように、期待するけど、裏切られても怒らない、と決めたのですね。
これについては、若干ニュアンスが違ってきますが、「神との対話」でも同様なことを言っています。
「神との対話」では、まず「期待」という言葉は使いたくないと言っています。それは厳密には、期待は愛ではないからです。たとえば子どもが大学に受かるように「期待」することは、プレッシャーを与えることにもなりますよね。本当は、受からなくても子どもは素晴らしい存在なのです。
したがって「愛」であれば、そうなればいいなとは思っても、そうならなくても素晴らしいのだと受け止められます。嶋津さんはそれを「怒るのはやめると決める」と表現されています。
この本で嶋津さんは、最初にあった体質改善と対処療法の2つの観点から、さまざまな方法を示されています。
怒ることで生きることが辛いと感じているのでしたら、ぜひ読んで実践してみてはいかがでしょうか。
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