2015年08月03日
ハチドリのひとしずく
全部で100ページもない小冊子のような本を読みました。アメリカの先住民に伝わるという物語が書かれたものです。
この本を知ったきっかけは、先日紹介したたまちゃん先生の「小さな一歩が世界を変える」に載っていたからです。
物語のタイトルを見て、だいたい内容は想像できました。なので買うのをやめようかとも思ったのですが、どんなものだろうという興味が勝りましたね。
では、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
前半は、その物語です。以下にあらすじを書いておきますね。
山火事が発生したとき、森の生き物たちは、我先にと逃げ出しました。
しかし、クリキンディという名のハチドリだけは、くちばしに水を汲んで、何度も往復しては水をかけ、火を消そうとします。
他の動物たちは、そんなことをしても何にもならないと笑いますが、クリキンディはやめません。
「私は、私にできることをしているだけ」(p.12)
そう言うのです。
この短い物語の後、この本の監修者の辻信一氏は、この本を作るときの話をします。
「この本の絵を描いてくれたのは、ぼくの長年の友人であるカナダの先住民族ハイダのマイケルです。彼との打ち合わせの中でこんなやりとりがありました。ぼくの最初の英訳の中に「普段大威張りの大きな動物たちが……ハチドリをバカにして……」という表現があり、彼はそれにひっかかったのです。「これではハチドリが正義で、ほかの動物たちが悪だ、という話になってしまう」と、彼は感じたというのです。先住民に伝わる元々の話にそんな善悪の区別などなかったのではないか、という彼の意見にぼくは心を開かれる思いがしました。」(p.20 - 21)
私も同感です。このマイケルさんの的確な判断に敬意を表します。
正義は人の数だけあります。どれが正しいのか、そう簡単に答えは出せません。
この物語が言いたいのは、「正しいことをやろう」ということではなく、「自分が正しいと信じたことを、自分がやろう」ということなのでしょうから。
「またマイケルはこうも言いました。「怒りや憎しみに身をまかせたり、他人を批判したりしている暇があったら、自分のできることを淡々とやっていこうよ。クリキンディはそう言っているような気がするんだ。」(p.21)
私も、マイケルさんと同じ思いです。
後半はまず、「私は、私にできることをしている。」というタイトルで、そういう人たちのことが紹介されています。
1人2ページほどなので、その人の考えていることの詳細とかは、よくわかりません。
その後は、「無理なく「引き算」 楽しく「ポトリ」」というタイトルで、地球温暖化を防ぐために私たちができる小さなことを紹介しています。
ただ、ここで紹介されているものが、本当に役立つのかどうか、私には疑問に感じることもあります。(そもそも地球温暖化が本当かという話もありますが。)
たとえば「レジ袋を受け取らない」ですが、レジ袋を使わないことが、どうして地球にやさしいのか私には理解できません。
原油が精製される過程で、レジ袋の原料も作られます。ですから、原油を使う以上、レジ袋の原料は作られ続けるのです。そうであれば、レジ袋として使ってあげることも、物を大事にすることになるのではないでしょうか?
レジ袋を作るために、不要に原油が消費されているのなら、話は別ですけどね。
それと同様なのが、割り箸を使わないということです。健全な森林を育てるには、間伐という作業が必要です。その間伐材をただ燃やすのではなく、割り箸として利用することもされています。ですから、割り箸を使ってあげることが、木材をムダにしないことにもなるのではないでしょうか?
これも同様ですが、割り箸を作るために、不要に木材が消費されているなら、話は別ですよ。
もし、そういう現実があるなら、変えるべきは割り箸を使わないことではなく、その原材料を間伐材に変えること、ではないでしょうか?
このように、この本で示された方法が、必ずしも「正しい」とは言えないと思います。
それは最初に紹介したマイケルさんの言葉にあるように、どっちが正義でどっちが悪という話ではないのです。
ただ自分が「これが正しい」と思うことを、自分がやるだけで良いのです。他人のやることへの批判は要らない、ということですね。
そういう意味では、「これも1つの方法です」というような説明があると、なお良かったと思います。
政治の問題もそうですが、環境の問題も、簡単に「これが正しい」とは言い切れないものだと思います。
そういう中で私たちは、何かを選択していかなければなりません。たとえそれが苦渋の選択であったとしても、「より良い」を選ぶしかないのです。
誰が何と言おうと関係なく、己が信じる道を淡々と歩み続ける。そういう生き方を、ハチドリの物語は示しているように思います。
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