福島正伸さんの本を読みました。この本を買ったのは、どこかに福島さんの考え方を知るにはこの本が最適というような紹介があったからだと記憶しています。
ちなみにこれまでに読んだ本は、「まわりの人を幸せにする55の物語」、「どん底から最高の仕事を手に入れるたった1つの習慣」、「夢が現実に変わる言葉」、「どんな仕事も楽しくなる3つの物語」、「僕に働く意味を教えてくれた29通の手紙」、「理想の会社」、「夢を叶える」などがあります。
読んでみると、たしかに福島さんの考え方がよくまとめっています。
最初、言葉の意味がよくわからなかったのですが、「メンタリング・マネジメント」(長いので、以下「MM」と略します。)というのは、「メンター方式のマネジメント」というような意味だそうです。
メンターという言葉は最近よく使われますが、「支援者」と福島さんは言います。一般的には「指導者」とか、「その道の先生」というような感じでしょうか。
この「MM」を理解するには、対称的な「管理型マネジメント」と比較してみると良いようです。
「管理型マネジメント」とは、これまで普通に行われているように、上司が部下をコントロールして、思いどおりに動かそうとする手法です。
なんだか会社経営の本のように感じるかもしれませんが、私はそうではないと思います。メンターという生き方に焦点を当てた本だと思うのです。
そしてメンターという生き方こそ、私たちが愛として生きる方法ではないかと。
前置きが長くなりましが、ここからは一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「その原則とは、「他人を変えたければ、自分を変えれば良い」ということです。つまり人材育成のポイントは、相手がどうかではなく、すべて自分自身がどのような考え方で、どのような行動をするかなのです。この原則に基づけば、どうすれば人材が育成できるかという問題は、いとも簡単に解決できる問題であることに気づいていただけるのではないでしょうか。」(p.9)
これが「MM」の原則だと言います。つまり、何か問題が起こったら、その解決のためには自分を変えること。これはまるでスピリチュアル系で言うところの、「周りは自分の鏡」理論と同じです。
福島さんは、この原則に基づく「見本」「信頼」「支援」という3つの行動基準があると言います。それが、他人をやる気にさせるメンターのノウハウなのだと。
これまでの人材育成プログラムが、大した成果があげられていない理由を、福島さんはこう分析します。
「その理由は、人材育成の前提条件に問題があったのです。その前提条件とは、先生と生徒、あるいは上司と部下という関係において、「先生は人間的に成熟しているが、生徒は人間的に未熟である」、あるいは、「上司は正しいが、部下は間違っている」ということです。」(p.22 - 23)
これは強烈なパンチですね。たしかに、こういう前提を多くの人が持っています。そして、それを疑うことすらしていません。
特に学校の教育では、大人である先生が、子どもである生徒に対して、ほとんどの場合にこのような考え方をしているでしょう。
それでも福島さんは、この前提が間違っていると言うのです。
「相手は自分の鏡です。相手の反応を見れば、自分のレベルがわかります。そもそも、自分を成長させることでしか、相手を成長させることはできないものなのです。
(中略)
つまり、人材の育成のためには、自分が見本になればいいのです。」(p.24)
生徒が成長しようとしないのは、自分が成長しようとしていないから。相手は鏡として、それを自分に見せているだけです。
そう気づくなら、自分がまず見本となって、成長するよう努力すれば良いのですね。
「つまり、大きな壁があって前に進めないという人のために、壁を小さくするのではなく、その大きな壁を自分の力で乗り越えていけるような人材に育てることが必要なのです。
支援者が考えなければならないのは、目の前の問題を解決することではなく、自分の力で解決できるような人材を育成するための支援のあり方です。」(p.28)
よく、魚釣りの例が使われます。緊急避難的に、自分が釣った魚を与えるのは仕方ないでしょう。でも、いつまでもそれをやっていたら、相手は自分を頼るだけです。ですから、釣り方を教えることが重要なのです。
「夢や目標を達成するために、自ら考え、行動することができる人材を、「自立型人材」と言います。つまり、人を育てるということは、いかに自立型人材を育成するかということに尽きると言えるのです。」(p.34)
福島さんは、この「自立型人材」と、その逆の「依存型人材」の2つのパターンがあると言っています。いうなれば、「MM」は「自立型人材」を育て、「管理型マネジメント」は「依存型人材」を生むことになるのです。
では、「自立型人材」にはどんな要素があるかというと、まずは「プラス受信」すると言います。
「「すべての出来事は、前向きに考えればチャンスとなり、後ろ向きに考えればピンチとなる。問題が起きたことが問題ではなく、どう考えたかが本当の問題である」
このように物事を前向きに受け止めることを、プラス受信と言います。
さらに、プラス受信には、「客観的」「好意的」「機会的」という三つの原則があります。」(p.39 - 40)
もうスピリチュアル系の本を読んでいるような錯覚を覚えます。出来事は中立(ニュートラル)で意味がなく、その意味は私たちの自由意志で与えている。そう言いますからね。
そして、上記の三つの原則について、以下のように説明しています。
「@客観的−−その場の感情に流されず、客観的、冷静に考える」(p.40)
「A好意的−−相手の発言、行動などについて好意的に受け止める」(p.41)
「B機会的−−起きた出来事をチャンスとして考える」(p.42)
この説明だけで、だいたいわかると思います。これがプラス受信のための考え方なのです。
特に問題をチャンスとして考えるというのは、どんなマイナスと思えるような出来事に対しても可能だと言います。
これも他でよく言われるように、失敗は何かを学ぶチャンスと言えるわけですから、プラスに考えることが可能なのですね。
そして、「自立型人材」は「自己依存」すると言います。つまり他人のせいにせず、自分に原因があると考えるのです。そうすれば、他人に期待することなく、自分に期待することができますからね。
「不満をなくすためには、他人に期待せず、自分自身に期待すればいいのです。他人や会社が自分に何をしてくれるかではなく、自分が他人や会社に何ができるかを考える。そして、自分が今できることからあきらめずに取り組んでいけば、不満と感じるものはなくなっていくはずです。不満を感じたら、それは自分の出番なのです。」(p.43)
すべて自分に原因があるなら、問題が起これば自分の出番が生まれたことになります。不平不満や愚痴をこぼす人は、その逆に自分の出番がないと決めつけ、どうにもならない状況に自分を追い込んでいるのです。
そして次に、「自己管理」が重要だと言います。何もしなければ、やる気がないのが普通だからだそうです。
「やる気になるためには、夢を確認することが必要です。どうしても達成したい夢、考えるだけでワクワクする夢を持ち、それを確認することでやる気になることができます。
(中略)
それは夢を確認する習慣です。私たちは、いつでも夢を確認する習慣を身につけることで、やる気を維持することができるようになります。」(p.45)
夢を確認する習慣をつけることが重要なのですね。そのための方法として、「飲み会では、夢を語り合う」など様々なものが紹介されていますが、ここでは割愛します。
この他、「自立型人材」には、「自己責任」「自己評価」という要素があると説明しています。
それに続けて、逆の「依存型人材」についても説明していますが、それは「自立型人材」の各要素を、完全にひっくり返した要素を持っています。
このように分析した後、人には「充実感を求める欲求」と「安楽を求める欲求」の二大欲求があり、それぞれ「自立型人材」と「依存型人材」の欲求だと説明しています。
では、どうして「自立型人材」と「依存型人材」に分かれてしまうのでしょう?生まれ持った才能でしょうか?それを福島さんは、こう説明します。
「人は生まれながらにして、依存型人材もいなければ、自立型人材もいません。そのどちらかに育てられているだけなのです。そして、依存型人材を育てるのが管理者(コントローラー)であり、自立型人材を育てるのがメンターです。」(p.66)
「相手が依存型人材になってしまうという問題の本質は、管理者自身が依存型人材であるということです。依存型人材を育成できるのは依存型人材だけであり、依存型の上司が自立型の部下を育成することは、そもそも不可能なことなのです。」(p.70)
つまり、「自立型人材」も「依存型人材」も、教育(育成)によって遺伝していくということです。これはちょうど、虐待を受けた子が親になって、自分の子を虐待してしまうのと同じです。
したがって、「自立型人材」を育てるメンターになりたければ、自分が「自立型人材」になる必要がある、ということになります。
では、その教育においては、何が重要でしょうか?福島さんは、教えたとおりにやらせるのではなく、やる気になってやるように仕向けることが重要だと言います。それを「育成」と呼ぶと定義しています。
「育成を一言で表現すれば、「やる気にさせること」です。それは、どんな困難に対しても、勇気を持ってチャレンジしていく自立型姿勢を身につけさせることに他なりません。
そのためには、まずこちらが相手の見本となって、自立型姿勢を見せることが必要となります。
つまり、指導とは「教える」ことですが、育成とは「見せる」ことです。」(p.88)
メンター自身が自立型の姿勢を見せること。それが「育成」では重要なのですね。
ではメンターにとって重要な要素は、他に何があるでしょうか?それが「尊敬によって人を動かす」ということだと言います。
「相手に何かを伝えようとする時、何を話すかという内容よりも、相手からどう思われているかのほうが問題なのです。正しいことが、伝わるとは限りません。誰が伝えるかで、伝わるかどうかが決まるのです。」(p.92 - 93)
言ってる内容が問題なのではなく、誰が言うかが重要。聞く人からどう思われているかが重要、ということなのですね。
そもそも聞き手(指導を受ける側)から尊敬もされてなければ信頼もない状態では、何を言っても無駄なのです。
では、尊敬されるためには、何が重要でしょうか?
「実は、尊敬されるために最も必要なことは、自分自身が一日一日の人生を大切にして、一所懸命に生きることです。自分の人生を精一杯生きていくこと、それ自体がメンターになることなのです。」(p.99)
まず自分が本気で生きていなければ、輝いて生きていなければ、メンターにはなれないのです。
そして、相手に信頼されるためのノウハウがあると言います。
「そのノウハウとは、「本気」です。相手が成功したいと思っている気持ちよりも強い気持ちを持って、相手を成功させるべく行動することです。つまり、相手よりも本気になるということです。」(p.101 - 102)
それから福島さんは、「MM」の3つの行動基準、「見本」「信頼」「支援」について詳しく説明します。まずは「見本」ですが、その中でまず、「ミラー効果」の話をします。
「つまり、職場が暗いと言う明るい上司もいなければ、反対に職場が明るいと言う暗い上司もいません。職場が暗いと言うのは暗い上司で、職場が明るいと言うのは明るい上司です。
自分のまわりの他人を見れば、自分がこれまで他人に何をしてきたのかがまるで鏡のようによくわかります。」(p.117)
まずこの周りは自分の鏡だということを、しっかりと理解することが重要だと言います。これを理解するなら、周りに問題を見つけたら、それを自分が改めれば良いからです。
暗いと感じるなら、明るい自分になればよいのです。それが「見本」なのですね。
次に「信頼」ですが、それは「相手をそのまま受け入れる」ということ、「信頼できない人を信頼すること」だと言います。
「そもそも困った人というのは、こちらの思い込みにすぎません。自分の期待していたことと違う発言や行動をした人を、困った人にしてしまっただけなのです。」(p.134)
「信頼とは、相手がこちらの思い通りにならなくとも、そのまま受け入れることです。いわば、「信頼できない人を信頼すること」が信頼なのです。」(p.135)
失敗を恐れずに、裏切られることを怖れずに、仮にそうなったとしても、その原因は自分にあると考えて「見本」を示し続ける。そうやって初めて、「信頼」が築かれるのですね。
最後の「支援」ですが、相手をやる気にさせるために支援することだと言います。
「メンターは相手をやる気にさせるために、いつでも、どんな時でも励まします。具体的な支援が何もできない時でも、励ますことだけならば、いつでもできるはずです。
そして、効果的な励まし方とは、心から本気で励ますことと、自分らしい励ましをすることです。大切なのは、言葉の内容よりも気持ちなのです。」(p.155)
テクニックよりも、気持ちが重要なのですね。そして、その支援には限度がないとも言います。
「「あの人には、いくら支援をしても、無駄になるだけだ」
と考えてしまうことは、支援者として成長することを放棄したことになります。メンターを目指すのであれば、支援をしても相手がやる気にならないのは、まだまだ自分のレベルが低いから、と考えなければなりません。」(p.158)
どこまで行っても自己責任なのですね。
メンタリングによる問題解決プロセスを、福島さんは以下のようにまとめています。
「はじめに問題をプラス受信して、その根本的な原因を自分自身に見いだします。そして、「見本」「信頼」「支援」に基づいた解決手段を、率先垂範の姿勢で実行します。」(p.193)
またそれを行っていく上での注意点として、相手を説得しようとしないことをあげておられます。
「相手を説得しようとするほど、相手は説得されまいとして頑固になっていきます。そうなると、相手は自分の考え方に固執して、何が正しいかが判断できなくなります。何が正しいかよりも、自分の考えを優先しようとするからです。説得されるということは、自己の存在価値を否定されるような気になってしまうのです。
(中略)
相手が本気になって行動するためには、相手を説得するのではなく、共感させることが必要なのです。」(p.223 - 224)
説得ではなく、共感すること。あくまでも主導権は相手に在るのですね。
そして、話し合いをする上でも注意があると言います。
「自分の意見を押し通すためではなく、相手の意見を取り入れるために話し合えば、それによって、自分一人では到底できないようなすばらしいプランができます。相手を説得するためではなく、相手に共感してもらうために話し合えば、たくさんの仲間を集めることができます。」(p.226)
ここでも、説得ではなく共感というのがポイントです。自力ではなく他力を結集すること。これは小林正観さんも言われてますね。
「仕事とは、社会に価値と感動を提供するという夢を実現するために、みんなで力を合わせて努力することを楽しむものなのです。
危機感でやる気にさせるのではなく、夢でやる気にさせる。相手をやる気にさせるために、危機感は必要ありません。」(p.228)
仕事は楽しむもの。それも自分一人ではなく、多くの人を巻き込んで楽しむ。危機感や不安を煽るのではなく、喜びを共有する。それが本当の仕事なのだと、福島さんは言います。
このように、この本は組織のマネジメント論のようでありながら、実は人としての生き方を説いた本なのだと感じています。
スピリチュアルにも、また心理学にも通じていて、また哲学的でもあります。
私は会社の経営者でもありますから、福島さんの言われることの中に、自分ができていなかった部分をたくさん見つけて、これを正そうと思いました。
そして、経営上の困難は、私自身を進化成長させるためのチャンスなのだと思っています。
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