2015年05月26日
はきものをそろえる
書店「読書のすすめ」店長の清水克衛(しみず・かつよし)さんの本を読みました。
誰から紹介されたのか忘れましたが、タイトルを見て読んでみたくなったのです。
なお、サブタイトルには「世界一かんたんな成功法則」と書かれています。履物を揃えるという簡単なことで、成功できるという本のようです。
ではさっそく、一部を引用しながら本の内容を紹介しましょう。
この本の前半、第一部は「はきものをそろえる」という物語になっています。
嫌々仕事をしている敏男が、ふとしたことでタイムスリップして江戸時代へ行きます。
そこで、仕事に対する姿勢が間違っていたことに気づくというお話しです。
「子どもが無事に生まれて、無事に育つっていうのは、奇跡なんだよ。頑張って乳飲み子を育てても、流行り病でぽっくり亡くしちまうことだってある。だから、立派に育って、元気でいてくれるだけで奇跡なんだよなぁ」(p.66 - 67)
江戸でお世話になった井原屋の旦那さんのセリフです。急に熱を出した我が子が助かったことを喜ぶ親の気持ち。それを聞いた敏男は、たくさんの人のお陰で自分があるのだと気づきます。
私も少し前に帰省し、母から子どもの頃に結核になった話を聞かされました。当時の結核は死病と呼ばれていて、近所でも何人かが亡くなったそうです。
肺結核だけで収まれば治る人もいたようですが、腸結核まで進行して治ったのは母だけだったとか。
どうせ治らないのならと、偶然に見つけた民間療法の本を購入してもらい、それにしたがったことが良い結果を招いたようです。
私はその話を聞きながら、もしそのとき母が亡くなっていたら、私もこの世にいないのだと思いました。
10代遡ると千人の先祖がいます。20代で100万人、30代で10億人になります。1代約30年とすると、ほんの千年前の先祖が10億人になるのですね。
もちろんその中には、重複する人がたくさんいるでしょうけど、当時の日本人のほとんどが私の先祖と言えそうな人数です。
その中の1人でも途中で亡くなって子孫を残さなければ、私は生まれてこれないことになります。
そう考えると、生きているだけで本当に奇跡なのだと思います。
第二部第一章では、履物を揃えることで成功する理由を説きます。
まず最初に、「はきものをそろえる」という詩を紹介しています。これは、長野市の円福寺という禅寺の和尚さんが作られた詩で、禅の思想にある「脚下照顧」をわかりやすくしたものなのだそうです。
「はきものをそろえると 心もそろう
心がそろうと はきものもそろう
ぬぐときにそろえておくと
はくときに心がみだれない
だれかがみだしておいたら
だまってそろえておいてあげよう
そうすればきっと
世界中の
人の心もそろうでしょう」(p.93)
企業や学校の多くで読まれている詩だそうです。そして、履物を揃えることを実践することで、荒れた中学校が改善したなどの効果が現れたとか。
「はきものをそろえることを習慣にすると、だんだんと乱れていることが気になってくるのです。」(p.94)
「実践してみると、直観がするどくなったり、自分に必要な情報が目につくようになったり、本当に毎日、朝晩の気分がすっきりしてきます。」(p.95)
まず履物を揃えることで、何ごともきちんと行う気持ちになるのかもしれませんね。
「人間は「やる気になってからやる」よりも、やっているうちに「やる気が出てくる」生き物なのです。これは大脳生理学でも研究された人間の本質を突いている部分です。
つまり「初めの一歩」を踏み出してしまえば、後は脳がその選択の後押しをしてくれる、というわけなのです。」(p.101 - 102)
私も掃除するのが面倒なタイプですが、ちょっと気になったところをきれいにし始めると、隅々まできれいにしないと気がすまなくなるということがありました。
だからまず簡単な履物を揃えるということからやるのですね。
「もちろん風景だけじゃなくて、毎日口にする言葉にも同じ影響がありますよ。乱れた言葉を使っていれば乱れた人生になるし、きれいな言葉を使っていれば、いい方向にいきます。
だから、はきものをそろえる、という「出だし」なんです。出だしがそろっていれば、自分が乱れていることが気になるようになり、使う言葉も変わってきます。」(p.120)
普段使う言葉が人生を創っているという話は、小林正観さんなどもされています。その言葉を正すためにも、まずは「はきものをそろえる」ということなのだそうです。
「平和のために戦うぞ、と言って、攻撃的になっているのは、とても悲しいことです。「平和」と「戦う」は決して共存できないあり方だからです。人を傷つけることからは何も生まれません。傷つけ合ったら、マイナスの思いが残るだけです。
違いを認めて、あの人は、あの地域は、あの国は、ああなんだ、あれはあれて正しいんだ、と認めるところから始められれば、どれだけ争いが減るでしょうか。
違いを認めるようになれば、排他的な心も消えてゆきます。知らない人に対しても、温かな心を持てるようになるものです。」(p.125 - 126)
これは第二部第二章「小さな行動が頼もしいあなたを築いていく」に書かれています。
「成功する」というテーマからは離れているような気もしますが、清水さんが感じておられることです。私も、この部分に共感します。
成功するというのは、何も自分が他を蹴落として成り上がることではないと思います。平和な世の中を作ること、そういうことに貢献すること。それもまた成功だと思います。
この本を読んで、私もさっそく履物を揃えることを始めました。
つま先が揃うように、隣の履物と位置を合わせるように、妻が脱ぎ散らかした履物も一緒に揃えました。
ただ自分が気持ち良いからそうする。そういう思いで、履物を揃えていきたいと思っています。
この本は、中古で手に入れました。すると表の見返しに、清水さんのサインがありました。偶然手に入れた本に著者のサイン。ラッキーです。
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