岡むら浪漫の代表、岡村佳明さんの本を読みました。
この本のことを知ったのは、みやざき中央新聞の社説で紹介されていたからです。
3月2日の同紙の社説「感動は「モノ」ではなく「コト」だった」で水谷編集長は、こう言っています。
「彼の著書『看板のない居酒屋』に、「コトづくり」の話があった。現代人にとって「モノ」は当たり前になった。客の心を掴むのは「モノ」ではなく「コト」なのだ、と。」
これを読んで、私はすぐにネットでこの本を注文したのです。良い本を紹介していただけたことに、心から感謝しています。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「地球上に生きる生物の中で唯一、人間だけに神様が与えてくれた三つの力があります。それは、「言葉」「笑顔」「感謝」です。
この三つの力は、人を喜ばせるために神様が人間だけに与えてくれたものだ、と私は思うのです。
いつもニコニコ笑顔で、人を褒めて、「ありがとう」と言う。
神様が私たちに与えてくれた力を存分に発揮することができれば、きっとそれが、商売繁盛の第一歩に自然とつながっていくのだと、私は思っています。」(p.1 - 2)
看板もなく、入り口さえよくわからない居酒屋。それが行列ができるほど繁盛していると言います。
そんな居酒屋を作ってきた岡村さんの思想の原点が、この3つの力なのですね。
岡村さんは、お母さんがされていた居酒屋を手伝うことで、居酒屋に関わるようになりました。
様々な経緯があって、本気で流行る居酒屋にしようと決心し、繁盛店に通ってその秘訣を探したのだとか。
その結果、繁盛店の魅力はスタッフの魅力だと気づきます。そこから「人づくり」が生涯のテーマになったそうです。
お母さんの教えも、またそういうものでした。
「あんたが好かれる人間になったら、周りの人は寄ってきてくれるんだよ」(p.28)
「商売繁盛を考える前に、いかに自分が好かれる人間になるか、自分自身をどう繁盛させるかを考えたほうがいいんだ!」(p.29)
こうして岡村さんは、本を読むなどして、自分を磨いていったのだそうです。
「そして、本を読むうちに、気づいたことがあったんです。それは、この世の中に「当たり前」のことなど一つもない、ということでした。
ご飯が一日三度食べられること、おやじとおふくろがいること、暖かい布団で寝れること、健康な身体があること……。普段の生活や、自分にとって「当たり前」のことが、じつは「当たり前」ではなく、「有り難い」ことだと思えるようになったんです。」(p.34)
岡村さんは、斎藤一人さんの本も読み、「この世で人生の成功者になるには、ただ一点、感謝です」と書かれていたことに注目します。
そして、一人さんが示す、あらゆることに感謝できることが納得できたと言います。
また、さらにプラス思考の言葉と出合います。
「「事実はひとつ、解釈ふたつ」という言葉です。自分に起こる事実はひとつだけれど、解釈は自分次第でいかようにでもなる、という教えです。」(p.44)
「出来事はひとつですが、プラスかマイナスか、それを決めるのは自分自身です。
プラス解釈できる人は、自分にはいいことしか起こらないという考え方になります。何が起ころうと、「これは何かのメッセージだ」「きっと何かを教えてくれているんだ」と捉えるのです。」(p.45)
見方を変えること。この幸せ実践塾でも言っている考え方ですね。
「「自分繁盛」とは、自分の魅力で人を惹きつける、ということなのです。
そして、その魅力とは「人気」とは違います。「人望」です。「人望」とはすなわち、「人間力」なのです。人から、信頼や尊敬や期待を寄せられることです。」(p.50)
このように岡村さんは、自分が目指す方向性を説明しています。
「・くつを揃える
・親を大切にする
・「ありがとう」を言う
・ゴミを拾う
このような、一見”当たり前”のことを、心を込めてしっかりやる。「誰でもできること」を「誰もできないくらいやる」。この「ウラの努力」が、一流をつくるのだと思います。」(p.53)
まさに王道ですね。人として王道を歩むことが、自分繁盛につながるのでしょう。
「だから、人生をよりよくするには、まず言葉を変えればいいんです。
・マイナス言葉はやめて、プラス言葉にする
・不平不満の言葉はやめて、感謝の言葉にする
・人の悪口はやめて、人のことを褒める
私はこのことをやってみたら、本当に人生が変わりました。皆さんもぜひ、ダマされたと思って、やってみてください。」(p.56)
言葉を変えるというのは、斎藤一人さんや小林正観さんなどが言われていますね。私もこれは、効果があると思っています。
「この「返報性の法則」は仕事や商売にもあてはまります。お客さんに好かれたければ、まずは自分からお客さんを好きになることです。
・あなたに興味があります
・あなたのことをもっと知りたい
・あなたのことが大好きです
こういうサインを送れば、お客さんもきっと、同じ気持ちを返してくれるはずです。」(p.60 - 62)
これもよく知られた法則です。人は、好意を寄せられれば、好意を返したくなるんです。
「ですから、出会った人に対して、「してもらおう」「得しよう」と思っている人より、「してあげよう」「喜ばせよう」と思っている人にステキなご縁が広がるのですね。
人の成長は「自喜力(じきりょく)」より「他喜力(たきりょく)」」(p.87)
岡村さんは、人脈は重要だけれども、人脈をつくるという発想はないと言います。それは「自分のため」という意味になるから。
そうではなく、目の前の人を大切にしようとしていれば、自然とご縁が広がっていくものなのだと。
だから、出会った人に何かをしてあげようと、常に考えているのだそうです。
「魅せてる意識を持ち、いつも人を喜ばせることばかり考え、いつも口から出るのはプラスの言葉にしたら、人はますます魅力的になるんだよ」(p.92)
他人を喜ばせることをやっていれば、自分が磨かれていく。それが自分繁盛につながるのですね。
「「残念なことに、最近褒められることがないわ……」という方も、人のいいところを見つけて褒めると、自分がやる気になって、キレイになっていくというわけなんですね。
(中略)
でも、「叱られる人」より多くのストレスホルモンを分泌している人がいます。それは「叱ってくれている人」です。言い方を変えると、「叱ってくれている人」は「叱られている人」より、イヤな思いをしてまでも、叱ってくれているということなのです。」(p.99)
褒められることは嬉しいけれど、自分から褒めればもっと効果がある。叱られることはつらいけど、もっとつらい思いをして叱ってくれる人のことを思えば、有り難いと思えてくる。
そういう考え方が重要なのですね。
「この脳のつじつま合わせを、逆に使うといいのです。
もし、周りに好きになれない人がいるとしたら、まずは言ってみるのです、「○○さん、ありがとう!」って。
すると、脳は考えるのですね。
「どうして、『ありがとう』なんだろう……」(p.104)
こうすることで、自分に都合の良い理由を見つけることができ、そうすると本当にそういう気分になるんですね。
だから福島正伸さんは、困ったことが起こったら「チャンス!」と言うことを提唱されています。
困ったことを解決すれば役立つし、チャンスだと思えば自分の出番を作ることになるからだと。
こういうことも、習慣化したいものです。
「人は、「自分は正しい」と思うと、思考が停止してしまうと言います。人は、自分を正当化しようとすると、相手を批判してしまいがちです。しかし、相手を受け入れようとすると、自分の足りないところに気づくのです。
自分の足りないところに気づく……。それが、成長につながるのです。」(p.127)
私もタイに来て、価値観の違いに苦しみました。また妻からは、しょっちゅう刺激を受けています。
常識というものが、ガラガラと音を立てて崩れるという体験は、私がどれほど自分勝手な価値観に凝り固まっていたかを教えてくれました。
そうやって自分の信念(価値観)を突き崩すことで、人は成長できるのですね。
本の中で、「たぬきと男の物語」が紹介されていました。
仕事が嫌いで楽をすることばかり考えていた男と、山から降りてきたタヌキとの会話が面白いです。
テーマは、古代ギリシャのソクラテスの言葉だと言われるイギリスのことわざだそうです。
「生きるために食べよ、食べるために生きるな(Eat to live, but do not live to eat.)」(p.160)
Youtubeで見られるようなので、ここで紹介しましょう。
「私はスタッフにいつも言います。
「夢がなくていいよ」
「目標がなくたって大丈夫だよ」
でも、その代わり、が、あります。それは「人の夢を本気で応援すること」。」(p.175)
小林正観さんは、頼まれごとを断らずにやることを勧めています。
また、自分の使命とか天職は探すものではなく、今の仕事を徹底的にやっていれば見つかるものだ、という人もいますね。
大リーガーのイチロー選手や織田信長などは、「ビジョン型」と言って、明確な目標をもって、そこに突き進む生き方をした人です。
でも多くの人は、豊臣秀吉のような「価値観型」で、明確なビジョンなどはなく、目の前のことを一所懸命やっているうちに、どんどん引き上げられていくタイプなのだと言います。
ですから、夢や目標がなくても、輝くことはできるのですね。
「米メジャーリーグのサンフランシスコ・ジャイアンツで活躍していた頃、タクシーをよく利用する新庄選手には、必ずしていたある習慣があったそうです。
それは、運転手さんに五倍のチップを払うこと。ここまでなら「そうか」と思いますよね。でも、次の一言が、必ず添えられていたのです。
「これから来る日本人をよろしくね」
まったくシビレます。私はこの話を知って鳥肌が立ちました。
新庄選手のカッコよさは、こうした「黒子力」があるからだとあらためて思います。」(p.182 - 183)
私もシビレました。自分がよく思われたいからではなく、見ず知らずの日本人のために身銭を切る。発想が違いすぎます。参りました。
でも、こういう生き方には憧れます。私もこれから、少しでも誰かのためにという発想で、何かをしたいと思いました。
この本を読んで、岡むらという居酒屋が繁盛するのは当然のことだと感じました。
岡村さん自身が、おそらく素晴らしく魅力的な方なのでしょう。そんな居酒屋へ行ったら、心地良いでしょうからね。
私が住むタイ・バンコクにも、日本の居酒屋が数多く出店しています。その中で、短期間でどんどん店を増やし続けている大阪の居酒屋があります。個人で経営していて、大手のチェーン店ではありません。
そこが繁盛しているのも、やはりスタッフの人間力なのです。親しみやすく、まるで家族のように扱ってくれる。それが心地いいんですね。
商売繁盛店の秘密は、自分繁盛だった。ぜひ、多くの人に読んでいただきたい本だと思いました。

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