妻の実家は、タイ東北部にあります。通称、イサン地方です。
タイの中では、人口が最も多い地域です。メコン川を挟んで、ラオスの一部と一緒に巨大な盆地を形成しています。
イサン人は、人種や言葉の点からも、中央部や南部のタイ人より、ラオス人に近いと思います。
バンコクからは飛行機で約1時間、そこから車で約2時間かけて行きました。
赤土の道が続き、信号機もない田舎です。携帯電話は使えますが、データ通信はほとんど無理。スマホは無用の長物です。街に行けばつながりますけどね。
そんなど田舎ですから、虫はいっぱいいるし、鶏はけたたましく鳴いています。
外から見れば、穏やかなあこがれの田舎生活のように見えるかもしれませんが、実際にそこへ行ってみると、全然違いますよ。
まず虫ですが、噛み付かれるとものすごく痛い赤蟻(モッデーン)がいるし、蚊はいたるところにいます。そしてブヨのような小さな虫やハエが、しょっちゅう目への侵入を図ろうとして、顔の周りを飛び交います。
それだけでも大変ですが、夜も安心していられません。鶏がやかましいのです。
鶏って、早朝に鳴くと思ってました?
それはまったくハズレです。未明、おそらく深夜1時くらいから、断続的に鳴いています。
どこかの鶏が鳴くと、他の鶏がまるで呼びかけに応えるかのように鳴くのです。鳴き声合戦が始まるわけです。
私が寝ていた部屋の壁を挟んだとなりに、鶏が飼われていました。闘鶏用の鶏ですけどね。
これが夜中に突然、バタバタバタと羽ばたきをします。何ごとが起こったのかと、最初はびっくりして飛び起きましたよ。
続けて「コーケコッコー!」と鳴くので、鶏が羽ばたく音だったのかと気づいた次第です。
それにしても、この「コーケコッコー!」がまたうるさいんです。けたたましいにもほどがあります。
それが断続的に繰り返されるので、初日はしばらく眠れませんでした。
ところがあるとき、この鳴き声がある言葉に聞こえたんですよね。
それで、これは面白いと聞き入っていると、どの鶏もそう言って鳴いているように聞こえます。
その言葉とは・・・
「ハッピバースデイ!」
さっきまで「コーケコッコー!」と聞こえていたはずなのに、なぜか「ハッピバースデイ!」にしか聞こえなくなりました。不思議なものですね。
でも考えてみると、どの鶏にも誕生日はあります。それぞれ違っていることでしょう。
あちこちの鶏たちが、「おぉ、今日はあそこんちのだれそれが誕生日だから、祝ってやろう。」と思って、声を限りに「ハッピバースデイ!」と言っていると想像してみました。
すると、なんだか微笑ましくて、楽しい気分になったのです。
「おぉ、またお祝いを言ってるな。そうそう、もっと大きな声で言ってあげないと、あっちまで届かないよ。」
そんな応援さえしたくなりました。
鳴き声を聞いて楽しい気分になると、「うるさい」という思いもなくなります。これも不思議ですね。
お陰で、それからは安眠できるようになりました。
「本当に「ハッピバースデイ!」って聞こえるの?」と思われるかもしれませんね。
それはぜひ、ご自身の耳でお確かめください。
このあたりでは、親戚が寄り集まって暮らす小集落がいくつもあります。妻の実家も、そうなっています。その小集落の中庭に東屋(下の画像)があり、そこに座って撮った動画です。

見方を変えると、悪い感情を呼び起こす出来事をそのままに、良い感情を生み出すことができるようになります。
今回、意図せずそういうことが起きました。これを意識的に使うようにすれば、人生は楽しいことばかりになるように思います。