連続ですが、福島正伸さんの本を読んだので紹介します。
これは福島さんが書かれた小説です。文庫本は「僕に働く意味を教えてくれた29通の手紙」というタイトルですが、単行本は違います。
単行本は2010年10月に発行された「僕の人生を変えた29通の手紙」です。文庫化するとき、タイトルを変えたようです。
私は昨年、ネットで注文したので、2014年7月発行の文庫本が目に止まったんですね。
小説の概要は、まさにタイトルにある通りです。
働く意欲をなくしていた主人公の元へ、宛名も差出人も書かれておらず、切手も貼られていない白い封筒が届きます。
最初は誰宛のものかわからず、捨てるに捨てられず保管していましたが、内容にはまったくピンときません。
しかし、途中からこの内容は、自分に宛てたものだと思うようになりました。
主人公が成長するにつれて、その手紙の内容が腑に落ち、さらに成長が加速します。
そして、その手紙の差出人は・・・。その差出人が手紙を出すようになった理由は・・・。
感動のクライマックスが待っています。
とまあ、こんなストーリーなのですが、この手紙の言葉が、福島さん自身が気づかされたことのようです。
気になった部分を引用しましょう。
「自分が正しいと思うと、他人が間違っているようにしか見えないのかもしれない。
次第に僕の中で、今まで自分が当たり前と思ってきたことや、正しいと思ってきたことが、実は間違っていたのかもしれないという疑念が湧き始めていた。
もちろん、心情的にはそのことを受け入れたくなかったけれど、今のままでは何も解決できそうにないことだけは感じていた。」(p.160 - 161)
ちょうど主人公に変化が現れ始めたときの、主人公の心境です。
これまでの価値観を否定することは、とても辛いことです。だから心情的には受け入れ難い。けれども理屈では、これまでの価値観が間違っていたと言わざるを得ない。
ちょうど、地動説が唱えられ始めた時の、天動説信者の心境でしょうか。
どんなに抵抗があったとしても、「こうかもしれない」という思考が生じてしまえば、もう変わる他ないのです。
「さらに古谷課長は話を続けた。
「君はまだ本気になったことがないね。本気というのはね、結果に関係なく、一生涯やり続ける覚悟ができていることだよ。その本気に、勝るものは何もないんだよ」」(p.214)
主人公を諭す取引先の課長のセリフです。
結果によって気持ちが変わるなら、「本気」ではない。この考え方に触れた時、私は、これこそが愛だと思いました。
相手がどうするとか、どうなるとか、結果はどうでもいいのです。自分がどうするかだけが問題なのです。
たとえ相手が心変わりしようと、体型が崩れようと、性格が悪くなろうと、それでも自分は愛し続ける。それが「本気」ですし、それが本当の愛だと思います。
「人は一人ひとりみな、生まれたこと、そして生きていることに意味があります。人生に無駄なことは一つもありません。どんな過去も未来の糧となる大切な財産です。どんな出来事も、そこに意味を見出し、そこから価値を創造することができるはずです。そして、そこにこそ本当の生きがいが生まれるのだと思います。
生きていると、つらいことも苦しいこともたくさんあると思います。きっと、思い通りにいかないことばかりかもしれません。でも、思い通りにならない中でも、どのように考えて、どのような行動をするかは、思い通りにできます。そして、その選択次第で、人生をどんなふうにでも生きていくことができるはずです。」(p.283)
まさにその通りだと思います。
すべての人が素晴らしいのです。そしてどんな環境でも、どんな出来事があっても、それを活かして自分らしく生きることができます。
それは私たちの自由な選択であり、決意次第なのです。
小説なので、あまり多くを引用するとネタバレになるため、今回はこのくらいにしておきます。
主人公の心の動きは、よくあるとか、自分もそうだなあと感じられるもの。実はモデルは福島さん自身なんですね。
ご自身が苦悩しながら新たな考え方を身につけてこられたからこそ、こういう小説が書けたのだろうと思います。
読みやすく、かつ為になる小説ですので、ぜひ読んでみてくださいね。
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