前回、「嫌われる勇気」で紹介したアドラー心理学ですが、その入門書を読みました。
こちらも著者は同じで、岸見一郎氏の本になります。
「嫌われる勇気」でアドラー心理学のことがかなりわかっていたので、とても読みやすかったです。
また、前回の本とは違った気づきもあり、興味深く読まさせていただきました。
アドラーは、母親との関係があまり良好ではなく、父親との関係が良好だったのだそうです。
通常はその逆のパターンが多いのですが、こういったところに、アドラー心理学が生まれた背景があることが、この本でわかりました。
そしてこのアドラー心理学は、子育てということを非常に意識したものだということもわかりました。
前回の本では、「人生の目標」として4つあることが書かれていたのですが、この本では「育児の目標」と書かれています。
たしかに、「育児の目標」と言われた方がすっきりします。前回の本では、なぜそれが「人生の目標」として出てきたのか、唐突感が拭えませんでしたから。
「まず育児の行動面の目標として、
一、自立する
二、社会と調和して暮らせる
ということ。
そしてこれを支える心理面の目標として、
一、私は能力がある
二、人々は私の仲間である
という目標を提示します。」(p.39 - 40)
つまり、子どもがこうなるように育てよう、ということですよね。
そしてカウンセリングなどでその人のライフスタイル(物事に対する見方)を変えようとするのですが、ライフスタイルを変えることは容易ではないと、一般的には思われています。
それに対して、このように言います。
「見方を変えるならば、人は不断に変わらないでおこうという決心をしているのであり、そのような決心を取り消せば、ライフスタイルを変えることは可能です。」(p.41)
つまり、ライフスタイルを自分が決めているのは当然として、それを変えないと決めているのも自分だと言うのです。
その自分の考え方を変えるなら、ライフスタイルも変えられるということなのです。
多くの場合、感情的になってしまうことが、私たちを惑わせます。それについて、こう言っています。
「感情は多くの場合相手にこちらのいうことをきかせようというふうに相手を動かすために使うのです。」(p.49)
感情に突き動かされていると思いがちですが、そうではないと言うのですね。
私たちが他人を動かそうとしていて、その目的のために感情を利用しているのだと。
子どもの行動の目的は、最初は相手の注目を引くというケースが多いです。
食べ物を口に入れても飲み込まない子どもというのは、そうやって親の注目を引こうとしているのだと。
ところがそれが高じると、権力争いに突入します。相手が困ることを、積極的にやるようになるのです。
こうした行動をとるのは、愛情飢餓のケースが多いと言います。つまり、愛されたい欲求から起こすのです。
しかし、愛情があることと、子どもに適切な対応ができることとは、別のことだと言います。
子どもが愛されていないと感じるのは、親の愛情がないからではなく、コミュニケーションのスキルが足りないだけのケースが多いと。
ですからまずは、技術を学ぶことが重要だと言います。
それと同時に、過ぎ去った過去は変えられないし、過去にこだわる必要はないと言います。
「過去は変えることはできませんが、未来なら変えることはできますし、目的は人の中にあるので、たとえ過去や外的なことの何一つ変えることができなくてもいいのです。」(p.57)
アドラー心理学では、出来事が何かの意味を持つのではなく、自分がその出来事に意味を与えている、という立場を取ります。
つまり自分の自由意志で、そこに与える意味を決めています。
自分が自由に決めているのですから、自分で変えることができます。
そこには厳しさもありますが、自由のコストとしての他人から嫌われることを受け入れる勇気があれば、自分らしく生きることができると指摘するのです。
「私たちのことをよくは思わない人がいるということは、私たちが自由に生きているということ、自分の生き方を貫いているということ、また、自分の方針に従って生きているということの証拠ですし、自由に生きるために支払わなければならない代償であると考えていいのです。」(p.151)
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