以前は日テレの夜の顔だった櫻井よしこさんの本を読みました。
「今日の出来事」というニュース解説番組のキャスターとして有名になった方です。
私も、この番組はよく見ていました。そして、櫻井さんの冷静で毅然とした態度に惹かれました。
今はキャスターは辞めて、元々のフリージャーナリストとして活躍されておられるようです。
この本は、櫻井さんの魅力がどうやって培われたかを知る上で、本当に参考になると思いました。
「これは私の昔からのことでもあるのですけれど、自分の力の外のこと、自分がどれだけ気にしても何ら変化を及ぼしようのないことは、努めて気にしないようにしています。」(p.59)
こだわりのない穏やかな笑顔は、すべてを受け入れる態度から来ているのかもしれません。
「迷わない。大事な局面であればあるほど、迷わない。そして希望を持ちつづける勇気を失わない。こうしたことは母の偉大さが私に植えつけてくれた価値観です。
決断のとき、必ず道は開ける、絶対大丈夫と、心の中で信じていたような気がします。
期待値は実現するのです。
母は「意識的な」達観主義者です。天性の楽天家というより、自分で考えて、理の力で情をコントロールして楽観主義者になったと思います。」(p.159 - 160)
戦後、ベトナムから幼子を連れて帰国されたお母様も、波瀾万丈の人生を送られたようです。
それだけに、また違った人生観をお持ちだったのでしょう。
お父様は愛人を作られて、ハワイで和食の料理店を開かれたそうです。そのとき、高校生だった櫻井さんは、お母様の指示で、お父様の世話をするためにハワイへ行かれたとか。
そこでの自由な気風も、櫻井さんの人格形成に大きな影響を与えたそうです。
しかし、お父様は事業に失敗して帰国することに。そのとき櫻井さんは、自分は残ると言い張ったのだそうです。
お父様は、それなら勘当だと言われ、お金はまったく残してくれなかったとか。
「お金はくれませんでしたが、父は大きなレミントンのタイプライターと辞書を「お前に」と置いていきました。わが父親ながら、さすがだと思いました。」(p.158)
必ずしも優しくされたわけではないけれど、父親の生き様からも、櫻井さんは学ぶことがあったのでしょうね。
わずか5ドルを手元に、櫻井さんはハワイで暮らしていかなくてはなりません。
その詳細はここでは割愛しますが、そこでもお母様譲りの楽観主義が役立ったようです。
「植物という植物は、一日ごとにどんどん丈が伸びていく。熱帯の花や草木を見ていますと、その生命力に感化されて、私も頑張ろうという気持ちになります。物言わぬ自然に、大いに元気づけられました。」(p.159)
櫻井さんは今、特に中国との関係をテーマに活動されています。
歴史認識など、難しい問題が山積している日中関係です。
それをどうすればよいかについて、櫻井さんはこう語ります。
「文化や歴史が違う国の人と完全にわかり合えるとは、期待しないのがよいかもしれません。ただし、事実を伝えることはできます。」(p.114)
「大事なことは、
「agree to disagree」
なのです。
「互いの意見が違うことを認め合う」ことです。異なる文化、異なる歴史を有する人びとと関わるときの、これが基本です。
互いに異なることを認め合えれば、わかって貰えない、自分の意見が捻じ曲げられている、などと感情的になりがちな気持ちが落ち着いてきます。お互い、同意できないのが常識なのですから、同意を求める前に、事実確認をきちんどしましょうと考えるので、建設的です。」(p.115)
こういう冷静な態度で議論もできる人というのは、私はとても尊敬します。
激高して大声になったり、口汚くののしるような態度をとる人を見ると、なんだか悲しくなるのです。
他にも、情報の選び方だとか、お金の使い方など、櫻井さん流の考え方が書かれています。
おいくつになられても魅力的な女性でおられる櫻井さん。その魅力の元となっている考え方を、この本で知ることができました。
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