これをFacebookページの「幸せ実践塾」でも紹介したところ、何人かの方がその投稿をシェアしてくださいました。
その中に、こういう文章をつけてシェアされてる方がいらっしゃいました。
「神渡先生著者の《孤独になる前に読んでおきたい10の物語》の 10番目に森脇文子を載せて戴いています。読む度に 天国に行った次女の康子が 生まれ代わって私の側に帰って来ます。大きな悲しみを乗り越えたり.それを経験した多くの人の経験を 本で知る事によって 更に大きな悲しみが来ても乗り越える精神力が養われます。是非 読んで下さいね(⌒▽⌒)」
私はビックリして、本を読み返しました。
たしかに118ページからの「おはなし10」に、美容室を経営されてる森脇文子さんのことが書かれています。
お子さんを亡くされたつらさを乗り越えたというお話です。
その話の内容を一部引用しながら要約します。
2人目のお子さん(康子さん)が、胎内にいる時にすでに、重い病気だとわかったのです。
ショックで押しつぶされそうな文子さんを、ご家族が支えます。
父親の茂さんは、つらい戦争体験を話して聞かせたそうです。
逃げるときに赤ちゃんが泣き出したため、敵に見つからないようにするために、ナイフで喉を切って殺したという話です。
「みんな申し訳ない、許してくれと嗚咽(おえつ)したよ。」(p.120)
何の罪もない赤ん坊を自ら殺さなければならないつらさ。それを受け入れなければならなかった母親のつらさ。
そのことを想像すると、そのときの人びとの苦悩が伝わってきます。
「お前はいま重い障害がある子を産もうとしているが、お前には守ってくれる家族がいる。働く仕事もある。最新医療を受けることも可能だ。それ以上の幸せはないぞ」(p.120)
そう茂さんは言って、文子さんを励ましたのです。
そのお子さんは、やはり重い障害を持って生まれ、生後すぐに心臓などの手術を受けなければなりませんでした。
そして8ヶ月目には、肝臓ガンも見つかり、文子さん夫妻は手術をすることに決めたそうです。
そのときまた茂さんが、文子さんに声を掛けました。
「お前たちの気持ちはよくわかるが、康子はもうカテーテルの手術を2回、心臓の手術も2回やった。小さな体をこれ以上切り刻むな。自然に任せてやってくれ。私も一緒に行く。康子を一人で寂しい墓に入れるもんか!」(p.122)
どちらが正しいということはありません。
手術をして、少しでも長生きさせたいと思うのも親心です。
また、これ以上苦しませないでくれと願うのも、愛する者の思いです。
それから4日後に、康子さんは亡くなりました。
その4ヶ月後、後を追うように茂さんも亡くなられたそうです。
続けざまに家族の死が訪れたことは、文子さんにとって大変つらいことでした。
その文子さんを、友だちが送ってくれた俳句が明るくしてくれたそうです。
「紅葉の天国散歩 孫連れて」(p.123)
おじいさんはきっと、天国でお孫さんの康子さんと一緒に、美しい紅葉を見ながら散歩しているに違いない。
そう見方を変えることで文子さんは、2人の死のつらさを乗り越えられたのです。
文子さんはそれから、積極的にボランティア活動をされるようになったそうです。
地域交流だけでなく、ミャンマーの井戸掘りなども手がけられたとか。
康子さんの死という出来事はつらいことでしたが、その死があったからこそ文子さんは、人に喜びを与えることを積極的にされるようになったのです。
この話を読んだとき、私は泣けてきました。
文子さんの我が子を失うつらさもさることながら、何もしてあげられないことを苦しまれているお父様の茂さんの思いに、私は深く共感したからです。
戦時中とは言え、赤ん坊の命を奪わなければならなかった体験は、どれほど心に傷を残したことでしょう。
ひょっとしたら、自分が赤ん坊を殺した因果によって、孫が苦しんでいるのではないかと、自分を責められたかもしれません。
その胸の内を思うと、泣けて泣けて仕方なかったのです。
文子さんは、ご友人からの俳句によって救われたわけですが、私は、茂さんの優しさも影響していると思います。
孫に寂しい思いはさせないと言われ、その約束を守るかのように亡くなられた。
その愛に気づかれたから、文子さんは前向きに生きようと思われたのではないかと。
お釈迦様は、我が子を亡くして悲嘆にくれている母親を励ますために方便として、「これまで一度も死者を出したことがない家からカマドの灰を持ってくれば、その子を生き返らせてあげる。」と言ったそうです。
そんな家などあろうはずもなく、その母親は行く先々で亡くなられた肉親への思いを聞かされるのです。
それまでは自分の悲しさやつらさにしか意識をフォーカスしていなかった母親ですが、他の人の話を聞くことで、離れたところから自分を見つめる余裕ができました。
見方を変えることによって苦しみの淵から這い上がることができたのです。
文子さんもまた、見方を変えることで悲しみを乗り越え、喜びの中に生きることができるようになりました。
どれほどこの世は幻想だと言ったところで、現実はあまりに現実的ですから、幻想と信じることは困難です。
それだけに、実際にその現実の苦しみを乗り越えた方の体験は、多くの人に勇気を与えることと思います。
辛い体験から立ち直り、喜びの中に生きておられる森脇文子さんなどの存在が、私たちにとって、とても有り難いことだと思うのです。
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