神渡良平さんの本です。
これはそんなに厚くはありませんが、読みやすい内容になっています。
10の物語とありますが、小説ではありません。
実話を紹介しながら、人生における重要な考え方を教えてくれるものになっています。
ここに書かれた1つの話を紹介しましょう。
「おはなし3」の「私たちはみんなつながっている」というタイトルで、サブタイトルが「病気は気づきを与えるメッセンジャー」とある話の中から抜粋します。
北海道で住職の妻だった鈴木章子さんが乳ガンになり、すでに肺に転移していて手術を受けなければならないというとき、教育者でもある東井義雄住職に手紙を出されたのだそうです。
ご主人のことや子どものこともあって、まだ死ぬわけにはいかない。どうしたら良いか、という悲痛な叫びです。
それに対して、東井住職はこう答えたそうです。
「鈴木さん、ガンを宣告されてベッドに横たわり、明日をも知れない立場に追い詰められてみて、ようやく本当の心の声が聴こえるようになりましたね。
『阿弥陀経』の中には、阿弥陀如来さまがいま現在も説法されていると書かれています。ということは、阿弥陀さまはあなたのベッドの脇で、いま現在も説法されていらっしゃるということです。一人で、ベッドにいるようで、いつも二人でベッドにいることを忘れないで下さい。」(p.40)
こう言われて鈴木さんは、思い浮かぶことをノートに書き留めることにしたそうです。
そして鈴木さんは、今まで当たり前だと思っていたことが当たり前じゃなかったと、気付かされることになります。
「交通事故で突然の死を
たまわっても仕方なかったのに
ガンをたまわったおかげで
生死の大事について
尊いお育てをいただくことが
できました」(p.42)
著者の神渡さんも、脳梗塞で半身不随になられた経験があります。
そのときは「もう自分はダメだ」と思って落胆し、その不遇を嘆いたこともあったそうです。
しかし、安岡正篤氏など先人の教えの中に光を見出されて、奮起され、今は世界中を旅行できるまでに回復されました。
そのとき、自分は天によって生かされているという思いを強く持たれて、その気づきを世に広めるために本を書かれたり、講演をされています。
この本は、そんな神渡さんが共感されたエピソードをまとめたものなのです。
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