自分に自信が持てずに、何をするにも不安があったのです。
すぐに傷つくので、考えることは「どうすれば傷つかずに済むか」ということばかり。
とても自分らしく生きるなどというレベルではありませんでした。
そんな私でしたが、そればかりでは飽きるのでしょうね。時には破天荒なこともやりましたよ。もちろん、当時の私にとって破天荒だというだけですけどね。
中学校の休みの日、私は自転車に乗って走っていました。
狭い田舎とは言え、行ったことがない場所はたくさんあります。
「あの山の奥に入っていく道は、いったいどこまで続いているのだろう?」
ふと、そんなことが気になったのです。
「よし、今日は時間もあるし、行けるところまで行ってみよう。ダメなら引き返せばいいだけだから。」
私はそう考えて、山道を自転車で登って行きました。
最初は1時間でどこにも行き着かなかったら、引き返そうと思っていました。
しかし1時間走ると、道はまだまだ続きそうに感じられました。なぜなら、舗装された道がずっと続いていたからです。
「山の奥で行き止まりなら、こんなに良い道ができているはずがない。よし、もう1時間だけ行ってみよう。」
帰りの時間を考えると、それが限界でした。その日はたしか、夕方に何か約束があったのです。
さらに1時間走った頃、道が下りに転じました。どうやら新たな展開がありそうです。
そしてしばらく行くと、人家が見えてきたのです。
「ここ、どこだろう?でも、あの道の向こうにこんな人里があるなんて、びっくりだなあ。」
なんとなく、何かを達成したような気分になりました。
「ねえねえ、ぼく、ここは何ていうところ?」
道端で遊んでいた子どもに、場所を尋ねました。
知らない人に話しかけるのはドキドキものなので、話しかけやすい子どもを選んだのです。
子どもは、聞いたことがある町の名前を答えます。どうやら、となり町まで来たようです。
しかし、名前を聞いたことがある程度の町なので、地理がよくわかりません。
どうやって自分の家まで帰ったら良いのでしょう?もちろん引き返せば良いのですが、もっと良い道がありそうに思えました。
しばらく行って、今度は大人の人に道を尋ねました。
どうしても家に帰らなければいけないという必要性が、勇気を出させてくれたのです。
「すみません。◯◯町まで行きたいのですが、どうやって行ったら良いのでしょう?」
その人は、来た方とは別の道を指差して、「こっちへ行ったら◯◯町の△△地区に出るよ。」と教えてくれました。
家に帰るにはちょっと遠回りですが、私は教えてもらった新たな道へ進むことにしました。
そして2時間後、無事に私の町まで戻ってきました。
夕方の約束に間に合いそうにないので、途中で有線(当時は有線電話をこう呼んでいました)を借りて、相手に遅れることを伝えました。
時間は絶対に守ることが信条の私としては、珍しい出来事です。
けれども、なんだか清々しかったのです。
大きなことをやり遂げたような、まるで世界一周の冒険から帰ってきたような、高揚感があったのです。
「なに、たったそれだけ?それが冒険なの?」
おそらく、そう思われる方もおられるでしょうね。
でも、6歳くらいの児童におつかいをさせる「初めてのおつかい」というTV番組がありましたが、その人にとっては大冒険ということはあるのです。
他の人にとってどうであろうと、それは関係がありません。
だって、冒険するのはその人ですし、それによって本人のレベルがアップするだけなのですから。
自信を持てずに苦しんでいる人がいたら、どうぞこのことを参考にしてください。
他の人と比べて、同じようにしなくて良いのです。
自分のレベルで、ちょっとだけ背伸びしてやるようなことを、思い切ってやってみましょう。
他の人からどう思われても良いのです。自分が今のレベルから、少しだけアップするだけなのですから。
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