2013年07月09日
子どもへのまなざし
児童精神科医の佐々木正美さんが、お母さんや保育関係の方々に講演した内容をまとめた本です。
私は著者の佐々木正美さんという方を知らなかったのですが、誰かからこの本が素晴らしいと聞き、購入しました。
「子どもへのまなざし」というシリーズで、続と完を合わせて3冊になっています。
ネットで見ると、この3冊セットでも販売しているようですが、値段的には3冊の合計と同じようですね。何か保存ケースとかがつくのかもしれませんが、私はそれぞれバラで購入しました。
300ページ以上ある分厚い本で、装丁もりっぱです。これなら2,000円近い値段も高くはないでしょう。
しかし、それ以上に内容は素晴らしいもの。この値段ではもったいないと感じるほどでした。
子どもの成長期に合わせて、子育てで重要なことを話されています。
その中で乳幼児のときは、十分に愛される喜びを与えるだけで、子育ては充分だと言っています。
私がこれまで考えてきたことが裏打ちされたような気がして、とても嬉しいですね。
盲導犬の子でさえ、最初の1年はともかく甘えさせるのだそうです。そうやって人間との信頼関係を作ることが重要なのだと。
犬でさえそうなら、人間はなおさらそうでしょう。前に紹介した本吉圓子さんの本でも、そう言ってますよね。
躾(しつけ)をしないと良い大人になれないという勘違いは、いまだに根深くはびこっています。
けれども佐々木さんは、躾というのは期待することを伝えて、あとは待つことだと言うのです。
強制してやらせるのではなく、本人がその気になるのをじっと待つ。それが躾であり、子育てなのだと。
強制してやらせれば、すぐにできるようになるかもしれません。しかしそれは他律です。他者依存です。
そのまま大人になれば、私が感じていたように、「ルールを教えてくれ」と叫ぶような人間になるだけです。
自律した人に育てるには、自主性を発揮させるしかありません。
つまり、その子の自由に任せるということです。
この本を読むと、子育てには愛情しか要らないことがわかります。
子どもを強制する必要はなく、ただ愛情を持って見守るだけです。
しかし、多くの人はこの「愛情を持つ」ということができません。なぜか?
それは、その人が幸せでないからだと、佐々木さんは言います。
ですから保育関係者は、子育ての前に親育てが重要だと言うのです。
まず親が幸せであること。
親の幸せがなかったら、愛情を持った子育てはできず、自律した子どもには育たないからです。
最後に、子どもの成長段階に応じてやらなければならないことがありますが、乳幼児期の全受容が最も大切だということでした。
そして、その全受容を受けられなかった子どもでも、成長した後なるべく早い段階で全受容されることによって、自分を取り戻せると言います。
子どもに限らず、問題行動を起こす大人も、突き詰めてみれば子どものころの全受容がなかった。
つまり、絶対的な愛で愛されてこなかったのです。
そしてそれは、何歳になっても今から全受容されることで、回復するのです。
この本を子育てのバイブルにしたいという読者のコメントがありましたが、まさにそうだと思います。
子育てをしているお母さんだけでなく、すべての人に読んでもらいたい本だと思いました。
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